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終幕 最後のピースは埋まらない

 放課後、静けさだけが残る体育館裏で。長身で金髪の男と、イマイチパッとしない男が二人。


「んで、御削(みそぐ)。こんな所にまで呼び出して、一体なんの用だー?」

「『なんの用だー?』じゃねえ! お前、やってくれたな? ちゃっかり動画を撮っていたのはまだいい。いや良くはないが、それは一旦水に流すとするよ。……お前、それを拡散しやがったな? 一線を超えやがったなお前!?」


 そう。今日の朝、上鳴(うわなき)は教室で、神凪(かなぎ)へ堂々と告白した。その噂が広まっていくのは分かり切っていたことだ。パッとしない上鳴はともかく、神凪は何だかんだでこの学校じゃ色々な噂が飛び交っている、ちょっとした有名人だからだ。


 ……だが、だからといって。それをスマートフォンでこっそり撮影して、よりにもよって学年中の人が集まるメッセージアプリのグループチャットへ送りつけるという、もう人間として救いようのないレベルにまで落ちぶれてしまった、どうしようもないバカがいるらしい。その名を、天河一基(あまかわ いつき)


 クモの巣状にその動画は広まり、今や学年中がその動画を目にしているといっても過言ではない状況である。


「ごめんごめん、今度焼き肉でも奢ってやるからさ。もちろん食べ放題」

「食い物で釣られる自分がちょっぴり悔しいけど……もちろん、迷惑被ったのは俺だけじゃないんだからな。神凪さんの分もだぞ」


 余計な事をしてばかりの天河はともかく、肉に罪はない。美味しいは全てを解決してくれるのだ――というか、神凪も動画の件についてはまんざらでもなさそうで、そこまで気にしていない様子だったし、その件にはこれ以上言及するつもりもない。


 そもそも、この程度の話であれば、わざわざ人のいない体育館裏まで呼び出す必要はなかった。()()()()()()()()()()()()()()、天河はころっと話を切り替える。


「んで、御削。お前の用事ってのはそれだけじゃないんだろ? 何なら、そっちのがメインだ」

「ご明察、だな。こういう時に限って……一基らしくないよ、全く」


 ふと、昨日の夜の天河を思い出す。その時の彼もまた、上鳴の思考をすっかり見抜き、必要な助言を残していった――彼の知らない、もう一人の天河一基。住む世界によって使い分けている、裏の顔とでも表すべきか。


 そして、今の上鳴だって、用があるのはその――いつもの彼とは違う、裏側の方の天河一基だった。


 本当は昨日聞きたかったのだが、あの時は神凪の身に危険が迫っていてそれどころではなかった。この瞬間まで、ずっと気になってモヤモヤしていた()()を、天河へと投げかける。


「昨日。神凪さんの居場所だって知っていたみたいだし、それだけじゃない。《竜の血脈(ドラゴン・ブラッド)》や、神凪の『()』の事も知っていたみたいだし、他にも祭壇がどうとか、俺の知らない事を色々と知っていた。……単刀直入に聞く。一基。お前は一体、何者なんだ?」


 今回の騒動が過ぎ去って、最後に残された疑問。少なくとも彼、上鳴御削にとっては、長かったジグソーパズル、その最後のピースを埋めるかのような質問だった。


 しかし、対する天河は、さも下らないという表情ながら、少し考える間をおいてから答えた。


「何者って聞かれても……ねえ? ちょっとオカルト方面に詳しいだけの、普通の高校生だよ」

「待てよ、一基。あのタイミングで、あんなに的確なアドバイスをくれたお前が、普通の高校生だって? 普通の高校生が、祭壇だの何だのを知っている訳がないだろ。……真面目に答えてくれ」


 つまらなさそうにこの場を立ち去ろうとする天河を呼び止めつつ、上鳴は言うと――背を向けていた彼が一度振り向いた。そんな彼は、上鳴の知らない、想像さえつかない程のシリアスな表情を浮かべながら、こう告げた。


「あくまでオレはただの高校生。もし、オレが普通じゃないというのなら――御削。お前だって普通じゃない。何しろ、まだ一歩とはいえ『ファンタジー(こちらがわ)』の世界に足を踏み入れてしまったんだからな」


 勢いのままに、彼は続けて。


「気をつけておけ。『ファンタジー(こちらがわ)』の世界に来てしまった以上、決して今回の件が終わりだと思わないことだ。一歩でも足を踏み入れてしまったらもう戻れない。また別の『ファンタジー』がきっと、御削の身に降りかかってくるだろうさ」


 忠告なんだか、よく分からない言葉を好き勝手に残すと、今度こそ本当に天河はその場を立ち去っていった。


「……結局、適当にお茶を濁されて逃げられちまったか。はあ、こういう所だけは一基らしい」


 一人ぼっちになった上鳴御削は、呆れたようにそう呟いた。

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