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勇者:????(仮)  作者: ちきん
第二章
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【番外編】 嵐の王様ゲーム1

二周年記念。


「――そうだ、王様ゲームをしよう!」


俺の家の食堂で個々が本を読んだり、談笑したりしている中で、急にラエンがそんなことを大声で言い出す。


「……いきなりお前は何を言い出しているんだ?」


暫く周囲の空気が止まった後、ラエンに一番近い所に座ってナイフの手入れをしていた俺が、皆を代表して訊ねる。


「そんなこと王様ゲームが急激にしたくなったからに決まってるだろ?」


「いや、そんなさも『当然だろ?』みたいな感じで言われても困るんだが……。大体、急に言われても皆それなりにやることが……」


「はいはーい!あたしも王様ゲームやりたーい!」


うわ、余計なのが釣れたよ……。大体あんた何故ここにいるんだよ……?溜まりに溜まりきった仕事をやらされに、昨日バ・オルに強制送還されていただろうが。


「仕事ならダニエルに任せてきたから大丈夫よ」


「人の心を勝手に読むな。しかも全然解決になってないし。っていうかダニエルって誰だよ!あんたのところにそんな名前の奴いなかっただろ!」


まあ、結局はまたサボってここに逃げ込んできたんだろうが。


「はい!私もお兄様が参加するなら参加します!」


少し離れた所でティータイムと洒落込んでいたヒスイが手を挙げ、参加の意思表示をする。

………………。


「なんでお前ここにいんの!?」


思わず椅子から立ち上がり、ヒスイを指差してしまった。

師匠の時よりリアクションがオーバーなのは、師匠は割とそういったことをやっているからだ。


「私はお兄様の妹ですから」


「言っておくけどそれは答えになってないからな」


というか、何を思ってそう言ったんだ……?


「大体、俺とお前は今本編で敵対しているだろうが」


「本編は本編、番外編は番外編ですよ。逆に本編のノリを番外編に持ってこられても対応に困るだけですからやめてください」


「す、すまん……」


……あれ?なんで俺は謝っているんだ?


「――兄妹喧嘩は終わったか?まったく、ヒアスがいると話が全然進まないんだから少しは自重してくれよな」


そして何故かラエンにまで愚痴られる。話が進まないのはお前達が変なことばかり言うからだろ、と言いたくなったが、これを言うとやっぱり話が進まないだどうだと言われるのは目に見えているので黙っておく。


「じゃあ、ゲームの参加者はここにいる全員でいいか?参加したくない奴は手を挙げろ。俺が全力でへし折るから」


……ほぼ強制参加じゃねぇかそれ。

まぁ、そんなことがなんだかんだあって、食堂にいた俺、師匠、ラエン、リーネ、アクト、ヒスイ、クウの全七人が王様ゲームに参加することになった。



場所は移動して和室(極東にある島の一般的な部屋を模した作りの客室。議長さんが好んで使う部屋だ)。流石に食堂でするわけにもいかないと思って移動した。


「――じゃ、王様ゲームの簡単なルール説明をするぜ。まず、全員がこの…クジを引く」


ラエンが割り箸で作られたクジを取り出す。

そんなものいつ作ったんだよ……。


「クジには1から6までの数字と王と書かれたものがある。それで、王と書かれたクジを引いた者がその回の王となり、好きな命令を下すことができる。ただし、その命令にはいくつかのルールを設けさせてもらう。具体的には、その場でできること、他人に何か命令する時は番号指定、番号指定できるのは二人まで、それと命令の変更は無効とするなどだ。あとはその都度その都度でいいだろう」


割と普通のルールだな。ラエンのことだからもっと奇想天外のものが飛んでくるかと身構えていたが、それは杞憂だったようだ。


「じゃ、早速始めようぜ!」


ラエンがクジを筒に入れ、適当に混ぜた後、全員が取りやすいように中央におく。その後、皆がそれぞれクジを引く。

俺が引いたのは……3番か。


「じゃ、せーのっ」

『王様だ~れだっ!』


全員で掛け声を言う。そして、一回目の王になったのは――


「あっ、私です!」


――リーネのようだ。初回はリーネか。まあ妥当なところだろうな。リーネなら無茶振りが飛んでくることもないだろう。


「王様、ご命令をどうぞ」


隣に座っていた俺が、絵に描いたような家来風に王様(リーネ)に向かってそう告げる。


「そうですね……2番が腕立て伏せを50回する!というのはどうでしょう……?」


最初は身体を動かす方に転んだか。まっ、リーネが王様になった時点でエロ方面に行かないことは分かっていたが。


「2番は俺だ。じゃ、パパッと終わらせて次に行こうぜ」


そう言うや否や、腕立て伏せを物凄い勢いで行うラエン。というか速過ぎで本当に腕立て伏せになっているかどうか怪しい。

しかしまあ随分と嬉しそうに腕立て伏せをするなあいつは。意外とMっ気あるのか?


「――よしっ!腕立て伏せ50回終了したぜ!」


その言葉と共に伸ばしていた足で床を蹴り、逆立ちの体勢になった後、今度は両腕を屈伸させて宙へと舞い上がり、空中で身体を捻らせて綺麗に着地する。……無駄にいい無駄な動きだなぁおい。


「じゃあ、二回戦と行きましょう」


師匠が、ラエンが腕立て伏せをしている間に回収していたクジを差し出す。

このまま平和に終わってくれるといいんだが、メンバーがこいつらだと絶対にただでは終わらないよなぁ……。


「――全員引いたな?じゃ、王様、だーーーーーーーーーーーれだっ!」


「なげぇよ」


それと、無駄に声がでかい。というかその掛け声は全員でやるんじゃなかったのか。


「私よ」


王と書かれた割り箸をこれ見よがしに見せつけるクウ。……まだマシな方か。


「それじゃ、早速ご命令をどうぞ」


「そうね、じゃあ5番が私の椅子になりなさい」


こいつはまた人間関係に亀裂が走りそうなことを……。まあ、今回は大目に見ようか。


「5番は俺だ」


「フン、5番はあんたなのね。まあ悪くないわ」


何処まで行ってもお前は上から目線だな。

……ん?師匠が手招きをしている。

いまだにあーだこーだ誇らしげに何か言っているクウを尻目に、師匠に顔を近付ける。

ふんふんなるほど。そいつは面白そうだな。…よしっ!今回は師匠のその案に乗ってみるか。


「よしクウ、座っていいぞ」


「……ってあんた、それで私がどう座ればいいのよ」


クウが言っているそれとは、間違いなく俺が胡坐をかいていることだろう。


「どうって、そりゃ俺の膝の上に決まってんだろ」


さも当たり前のように膝をポンポンと叩きながらそう口にする。


「な、なな、あんた何言ってんのよ!」


俺の言葉を受けた瞬間に顔を赤くしてアタフタとするクウ。分かりやす過ぎる反応だ……。


「何って、お前の命令に従っているだけだけど……」


まあ、師匠の入れ知恵があるまで四つん這いになって背中を差し出そうとしていたけど。恐らく、クウもそれを想定して言ったんだろうな。


「いいからさっさと座れよ。いつまで経っても先に進まないだろうが」


いまだに顔を逸らして視線をこちらに合わせようとしないクウの手を取って半ば無理矢理座らせる。その際、女性特有の甘い香りが鼻孔を擽るが、あまり気にしないように意識を逸らす。


「ちょっ!?ちょっと!?いきなり何するの……」


尻すぼみに声が小さくなっていくクウ。それに伴ってか、動きも借りてきた猫のように大人しくなる。

……うん、相変わらず攻めに弱い、というかちょっとチョロすぎないか?いつか悪い男に騙されるぞ。俺も人のことは言えないが。


「はい!もう終わりです!次に行きましょう!」


突如俺の膝の上に乗っているクウを突き飛ばす勢いで押しのけるヒスイ。おいそれ下手したら怪我するからやめろ。

その後、ヒスイとクウで一悶着あったが、語ると長くなるのでばっさりカット!


「――第三回目の王は僕だね」


王と書かれた割り箸を皆に見えるようにして言うアクト。何気に今話での初セリフ。本を読みながらの参加だから仕方ないのか……?


「じゃあ、ここは王様ゲームのテンプレともいえるポッキーゲームをしようか。やる人は、そうだね……2番と4番にしようか」


げっ、また俺かよ……。まあ、相手がラエン以外なら事故っても俺へのダメージは少ないからいいか……。


「2番はあたしね」


師匠が2と書かれた割り箸を掲げる。

相手は師匠か。このメンバーの中では一番いい相手かな。事故っても後腐れないし。


「4番は俺だよ」


遅れて俺も宣言する。しかしまあ連続で当たるってどれぐらいの確率なんだろうか?


「くぅ…なんで私じゃないんですか!」

「これが主人公補正か。流石だな」

「でもヒアスのようなハーレム系主人公って、こういう場面では意外と男が相手の場合って多いよね。そういう意味では良かったんじゃない?」

「まぁな」


俺が相手だと分かった瞬間に外野が騒ぎ出す。誰がハーレム系主人公だ。


「さっさと終わらせて先に進めようぜ」


そう言って取り出したポッキーを口に咥える。まあ、始まって少し進んだらこちらから折ってしまえばいいしな。


「あっ、言い忘れていたけど、長さは1cm残しでね。終了した時点で長さがそれよりも長かったらやり直し。誤差は+5mmまで許容するよ。命令の条件追加はルール違反じゃないから問題ないよね」


はあ!?1cmって、唇が触れてしまう程度の長さじゃねぇか!

というか、本を読みながらよくルール説明を聞けたな。ページを捲るスピードが全然変わらなかったからてっきり聞いていないものだと思っていた。


「りょうかーい!じゃ、いくわよヒアス」


師匠も反対側を咥える。そして即座にポッキーを食べ始める。相変わらずこういったことには抵抗ないのな。

仕方ない、俺も腹を括ろう。食べた距離が師匠より短かったら男の恥だ。


ポッキーの咀嚼音以外しない静かな中で両者の顔が徐々に近付いていく。互いに目は開けたままだから、師匠の瞳に俺の顔が映る。……少し前髪を切った方がいいかな?

そんなことを考えている内に、師匠の顔が文字通り目と鼻の先にくる。本当にこのままキスしてしまう勢いだ。いくら相手が師匠だからって、そういったことに対する照れがないわけではない。しかしながら、ここで止めてしまうと恐らくやり直しになってしまうのでもう少し続けよう。

そして、その数秒後、俺と師匠の唇が触れるか触れないかの辺りで――


「――んぅ!?」


師匠に思いきりキスされた。しかも逃げられないように両手で俺の頭をホールドしていやがる。


「んちゅ」


更に舌まで入れてきやがった。辺りに水音が響く。

口内で異物が這い回る感覚。不快感はないが、やはりどうにも慣れないなこれは。というか、さっさとやめにしないとまたヒスイが暴れまわる。あいつを宥めるの面倒くさいから、できれば我慢の限界を突破する前にしたい。

というわけで、少し乱暴だが師匠の手を掴み、ホールドを解いて離れる。そして向かい合っている相手に一言


「やり過ぎだ」


と告げる。すると相手は『やっぱり?』といった表情を浮かべる。悪びれる様子は全くもってない。

さて、周りの様子だが……両手で顔を隠しながらも隙間から覗いているのが一人、怒りで全身が震えているのが一人、いまだに呆けているのが一人、ヒューヒューと煽ってくるのが一人、本を読んで無関心を決め込んでいるのが一人、か。どうやら爆弾はまだ爆発していないようだ。それでも、限界ギリギリのようだが。


「……で、これ以上続けんのか?」


これ以上何かあったら確実に面倒なことが起こるから、できれば終わってほしいんだが。


「何言ってんだ。当たり前だろ。まだ何もしてない奴だっているんだぜ?」

「そうです!私だってお兄様といちゃこらしたいです!」

「僕はラエンの意思に従うよ」

「わ、私も続けてみたいです」


過半数が継続を希望。この時点でこの王様ゲームはまだ続くことが決定した……。

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