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勇者:????(仮)  作者: ちきん
第二章
33/40

鏡写し・前篇+オマケ

また二か月間ほどよろしくお願いします。

今回は物語の展開上どうしても話数を変えたかったため短めです。

「――ここが、ゼヘイニバ洞窟……」


ミキナさんを加えて歩き出してから数刻が経過し、漸く目的地であるゼヘイニバ洞窟に到着しました。

洞窟の入り口からは、風が絶え間なく吹き出していて、私達三人の髪の毛を撫ぜます。しかし、それはうっとおしく感じられるものではなく、むしろ優しく撫でられているような心地よいものです。


「流石古代語で『風の生まれし所』という名をつけられただけのことはあるわね。風属性の魔素でも大量にあるのかしら……?」


サーシャさんがそんなことを呟きます。

風の生まれし所……昔の人達はここから吹く風が世界中を廻ると考えていたのでしょうか?…だとしたら少しロマンチックです。


「いまだに風が吹く原理は完全には解明されていませんけれど~、なんでも洞窟の壁に空いている大小様々な大きさの穴が空気の流れに偏りを生じさせているらしいですよ~」


ミキナさんが、風が吹く謎について簡単な説明をしてくれます。

壁に穴ですか……。一体どのようにしてできたのでしょうか?大自然の神秘です……。


「一部風が強い所や地面がぬめっている所があるらしいので、気を付けて進みましょう~」


一足先にと、ミキナさんが洞窟内部へと足を踏み入れていきます。


「私達も行きましょう」


「はい」


私達二人も、ミキナさんの後を追って、洞窟内部へ。

洞窟内部は思っていた以上に明るくて、松明などの明かりは必要なさそうです。


「へぇ、結構明るいのね。ヒカリゴケでも生えているのかしら?」


辺りをキョロキョロと見渡して、サーシャさんがそんなことを呟きます。どうやらサーシャさんも私と同じことを思っていたようです。今まで自分より年上の立派な大人の女性と思っていた人が、自分と似通ったことを考えていたことに些細な親近感が湧いてきます。こんな勝手に親近感を持っていては、サーシャさんに怒られてしまうかもしれませんけれど。


「どうでしょう~?私も詳しいことは知らないんです~。でも、昔はここで光晶石が採れたらしいので、それの採り残しが今こうして光を放っているのではないでしょうか~?」


「へぇ~、光晶石なんて割と珍しいものが採れたのね。流石は魔術帝国、魔術に関する資源は豊富ね」


光晶石。魔鉱石の一種で、光属性の魔素を大量に含んでいて常時発光をしているというのが特徴です。放つ光の色は、鉱石に含まれる他の属性の魔素の割合で決まりますが、大体のものは白色光を放ちます。光強度はあまり強くなく、少し長時間でなければ直視し続けていても問題はないようです。また、綺麗な色を放つものも少なくはないので、宝石としての価値も多少はありますが、内部の光属性の魔素を放出し終えるのに練磨後のものは5、6年程度しかかからないので、他の宝石と見比べると価値は劣ります。むしろ、今現在では室内の照明などに使われることが多いようです。高級品なのには変わりありませんが。


「この洞窟はツゥバイヤ鉱山帯の外れにありますから~。他の魔鉱石を含有しているものもあるそうですよ~。ただ純度が低くて使い物にならないものがほとんどらしいですけど~」


ミキナさんが更に説明を続けてくれます。

ツゥバイヤ鉱山帯とはカゼノス大陸の北西部一帯を占める大規模な鉱山帯で、今現在でも大量の魔鉱石の採掘が行われています。また近年、純度が高すぎて今まで採掘できなかった鉱石も採掘技術の向上によって採掘できるようになってきたみたいです。


「勉強になりますね」


「そうね。…まぁ、あたしがそんな知識を今更身につけたところで役に立つとは到底思えないんだけど。はぁ…歳は取りたくないものね……」


そう溜息をつくサーシャさん。しかもその溜息はいつもの冗談混じりといったような感じではありませんでした。

こう言ってはなんですけれど、やっぱり年齢のことを気にしているんでしょうか?


「あー……よし!いつまでもこんな所に突っ立っていたってしょうがないし、さっさと目的のものを探しましょうか!」


自らの発言によって微妙な空気になってしまったのに素早く気が付いたサーシャさんは、両手で自分の頬を叩き表情を引き締めて、洞窟の奥の方へ歩みを進めます。


「……私達も行きましょうか~」


「そうですね」


二人で顔を見合わせた後、サーシャさんの背中を追いかけます。



「――きゃっ!」


「おっと!……大丈夫?リーネちゃん」


前からの吹き飛ばされかねない突風に、思わずバランスを崩してしまいました。サーシャさんが受け止めてくれなかったら、今頃地面に頭をぶつけてしまっていたでしょう。


「す、すみません。ありがとうございます」


「いいのよ、気にしないで。でも、次からは気を付けるようにね?」


温和な表情を浮かべて、優しく注意をしてくれます。


「……おかしいですね~。ここは洞窟内で比較的風が弱い場所の筈ですが~……」


ミキナさんがキョロキョロと周囲を見渡しながらそう呟きます。確かに、今までのように強風が吹く場所にあった強風に対する注意を促している看板は見当たりません。その看板は、強風が吹いても吹き飛ばされないように魔術的な防風加工が施されていましたし、ここに立ててあった看板が吹き飛ばされたとは考えにくいです。


「そうね。考えられるとしたら……風化による洞窟の形状変化に伴って風の通り道が変わったか、あるいは――」


この奥で何かあったかのどちらかね、とサーシャさんが言葉を発します。その眼は、洞窟の奥をじっと睨んでいました。


「――考えていったってしょうがないわ。早く奥に向かいましょう。何が起こってもいいように、周囲に気を配りながらね……」


「……はい」

「分かりました~」


サーシャさんの言葉に頷き、私達は止めていた足を再び動かして、奥地へと歩みを進めるのでした。



「――どうやら、ここがこの洞窟の最奥地のようですね~」


人工的に削られた石の壁と、頑丈そうな扉が私達の目に飛び込んできます。

この先に風の鏡があるのでしょうか……?


「…この扉、最近開けた形跡があるわね……。二人共、いつでも戦えるように準備しといて」


サーシャさんの放った一言に、思わず唾液を呑み込みます。

私たち以外にここを訪れた人物……。クウさんでしょうか……?


「……開けるわよ」


小さく放った言葉と共に、ズズ…と扉の開く重たい音が拡がります。

そして、その先に私達を待ち受けていたのは――


「――あら、思っていたよりもお早いご到着のようですね……」


――私でした。






~オマケ~

各キャラのバレンタインチョコの渡し方?


リーネ

「あの、チョコレートを作ってみたんです。作ったとは言っても、市販の物を溶かして、再度固めてトッピングを乗せただけなんですけど……。よろしかったら食べてみてください」



サーシャ

「この歳になってまでバレンタインにチョコを渡すとは思いもしなかったんだけどね。…まぁ、折角持ってきたんだし、ありがたく受け取りなさいな。あ、お礼は三倍返しでよろしく……なんて冗談よ冗談」



クレア

「…そ、その、小腹は空いていないか……?…そ、そうか!だったらこれを食べるといい!……い、いや、これはただ作り過ぎただけ!決して朝5時から頑張って作ったとかラッピングを綺麗に仕上げるのに2時間以上かかったとかそういうんじゃないんだから!」



アリア

「はい、君の分のチョコレート。……え?市販の板チョコを渡されても嬉しくない?じゃあこっちの僕が原材料から色々と細工をして作り上げたチョコレートをあげるよ。……やっぱり市販の物でいい?……チッ」



クウ

「は、はいこれ!あなたにあげる!ふ、深い意味なんてないわよ!今日はバレンタインだし!あ、あなたが一つももらえなくて悲しんでるのがかわいそうだから心優しい私が恵んでやっているのよ!当然義理よ義理!……え?他の娘からも貰った……?そ、そう!良かったわね!私以外にもそんな人がいて!……私から貰ったものが一番?…な、な、なにきもいこといってるのよこのばか!」



ナナリー

「……これ………。……今日はバレンタイン………。……だから…このチョコレート……あなたにあげる………。……ちなみに…私の手作り………」



ユーリア

「どうぞ、バレンタインのチョコレートですわ。わたくしの本命はラエンですので義理しかあげられませんが、一応手作りですので味わって食べてください。わたくしは今からこのガラナチョコなるものをラエンに渡してきますので!」



ミキナ

「今日はバレンタインなのでこれをどうぞ~。……はい~、私の手作りですよ~。少しばかり失敗して台所を半分くらい吹き飛ばしてしまいましたが~、今回はよくできた方なのでよく味わってくださいね~」



ジーナ

「え?バレンタインチョコ?あたいがそんなもの用意しているように見えるかい?……だろうね。だから、いくらあたいにねだってもあんたの欲しいものは出て来ないよ。ご愁傷様。……今朝枕元に置いてあったチョコ?…さぁね、あたいは生憎そんなもの知らないよ。……顔が赤い?うっさい!」



ユナ

「はいどうぞ♪ユナ特製のチョコレートケーキです♪本当はユナ自身にチョコレートを塗ってお出ししたかったのですが、思った以上にチョコレートが熱くて断念せざるを得ませんでした。ということで、ユナ自身はこのあとベッドの方で……」



ソフィ

「そういえば今日はバレンタインデーであったな。すまない、すっかり失念していた。本来ならばチョコレートを渡すべきであるのだろうが、今の時間帯では用意するのも一苦労だ。仕方あるまい、今宵は私が貴様の言うことをなんでも一つだけ聞いてやろう。なに、貴様も子供ではないのだから無茶な願いはしないだろう?」



ロベリア

「あっつい!溶かしたチョコレート超あっつい!は、早く全身についたチョコレートを舐めとって!そのいやらしい舌遣いで私の肉体を滅茶苦茶にって何処行くの!?ちょっと今は放置プレイとか言ってる場合じゃ――」

次回で第二章の前半は終わりになると思います。

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