タイトル未定2026/07/20 20:38
流花は午前中職場の上司安達と、会社で設計をした家を一緒に見に行っていた。
その帰り、広い公園のベンジに座って、持っていたお弁当を広げた。
「遠くまで、引きずり回して悪かったな」
安達の言葉に、流花は明るく言った。
「完成した家を見ると、私も早く設計チームに加わりたい気分になります」
「白田さんは実務経験を積んでいるから、資格さえあればすぐ入ることができるよ」
青空が広がった公園は、平日でも人々が出ていた。
レジャーシートを広げ、お弁当を食べる若い親子がいた。
小さな子供を見ていた安達は、目を細めた。
「可愛いなぁ」
「安達さんは、結婚されているんですよね。お子さんは?」
「二歳の娘がいて、妻は現在二人目を妊娠中」
「わぁ、楽しみですね」
「だからさ、子供を見ると嬉しくなる」
安達の言葉を聞いた流花は、自分も幸せな気分になった。
その時、流花の携帯のラインの着信音が鳴った。
「ライン、出なよ」
「すみません」
流花は携帯を出し、ラインを開いた。
『昨夜は、すみませんでした』
ラインは、マスターから送られたものだった。
……マスター昨夜のことを、気にしているんだ。
マスターが、どんな気持ちでこのラインを送ったのか想像すると、楽しくてせつなくて、マスターが愛しくなっていた。
『気にしているなら、今すぐ会いに来てください』
そんなラインを送ろうと思い、笑いそうになった流花は、少し考えた後文章を打ち込んでラインを送った。
「ライン、田中君?」
携帯をバックにしまう流花に、安達は言った。
「田中君……?」
「白田さんの彼氏って、田中君でしょ」
思ってもみなかった安達の言葉に、流花は声を上げた。
「違います!田中君は、大学の時の友達です」
「そうなんだ。同期で、仲が良いし。白田さんの彼は、田中君だと思ったよ」
「田中君は、彼なんかじゃありません」
「でも、白田さんには彼氏がいるんだろ?」
「……はい」
流花は、恥ずかしそうに頷いた。
「白田さんなら、彼氏がいて当然だよ。どんな彼?」
「そうですね……年は、安達さんと同じくらいかな」
「僕と?けっこう年が、離れてるじゃん」
安達の年齢は、三十なかば過ぎだった。
「白田さんらしいな。まさに、大人の関係だ」
流花は安達を、そっとみつめた。
……安達さん。なんだか、マスターに似ている。
外見こそ全く違うが、優しさがにじみ出ているところは、マスターと同じだった。
流花は、静かに微笑んだ。
職場に戻ると流花と安達は、室長から聞かされた。
「入社希望の電話があった。まだどんな人物かわからないが、近々面接に来ると思う」
流花と安達は、顔を見合わせた。
「十月に、面接に来るなんて珍しいな」
安達の言葉に、流花も同調した。
「ですね。どんな人なんだろう」
流花と安達は机の回転椅子に座り、午後の業務に取りかかった。




