タイトル未定2026/07/20 20:36
マスターと流花が、久しぶりに夜の繁華街を歩いていた日、「お疲れ様でした!」と、速水渚は元気よく職場の設計事務所から出て行った。
渚は大学の時から付き合っている佐野と、同棲をしていた。
渚は買い物をする為に、繁華街にある量販店に向かった。
歩いている途中、携帯が鳴った。
携帯に出ると、同棲相手の佐野の声が聞こえた。
佐野は、渚とは違う設計事務所に務めていた。
「なぎちゃん、仕事終わった?」
「うん。佐野君は?」
「俺も終わった」
「珍しく、早く終わったね。今から買い物に行くところ」
「いつもの店?」
「うん」
「じゃあ、今からそっちに行くよ」
「オッケー」
量販店で渚と佐野はおちあい、買い物を始めた。
店内は買い物客で賑わっていた。
大きなカートを押す佐野に、渚は聞いた。
「ご飯、何にする?」
「う〜ん……肉!」
「肉って、なにそれ」
佐野の言葉に渚は笑い、佐野が突然言い出した。
「あっ、唐揚げが食べたい!」
「唐揚げかぁ……」
「ダメ?」
「今から、作るのは……じゃあ、こうしよう。唐揚げは明日。今夜は、野菜たっぷりの肉野菜炒め」
「唐揚げ、明日かぁ……今夜の野菜炒め、肉たっぷり入れてくれよ」
「たっぷり入れるのは、野菜」
「肉もたっぷり」
佐野は、カートを押した。
カートを押しながら、野菜コーナーに向かった。
「野菜は、何を入れようかな」
渚の言葉に、佐野が言った。
「玉ねぎとキャベツだけで良いよ」
「後、もう一品入れたいな。そうだ、人参を入れよう」
「えぇ〜人参〜」
「炒めて味付けしちゃえば、人参の味なんてわかんないよ」
嫌そうな顔をする佐野に、渚は容赦なく人参をカゴの中に入れた。
「そうだ、もやしを入れよう」
「もやし?」
「かさ増しだよ。佐野君、たくさん食べるでしょ」
それを言われたら、佐野は何も言えない。
野菜コーナーから肉コーナーに移動すると、佐野が肉を見せて渚に聞いてきた。
「野菜炒めに入れる肉、これで良いか?」
佐野は渚に、豚のバラ肉を見せた。
「バラ肉かぁ……脂肪が多いからなぁ。細切れにしようよ。ついでに、唐揚げ用の肉も買おう」
渚は、豚の細切れと鶏の胸肉をカゴの中に入れた。
肉コーナーを後にした渚と佐野は、店内をゆっくり歩き必要な物をカゴの中に入れた。
佐野はお菓子コーナーに行き、声を上げた。
「おっ新商品のチョコがある!しかも、期間限定!」
「期間限定って、言葉に弱いよね」
「期間限定を逃したら、会えないもんなぁ。それにこのチョコ、うまそう」
「ホントだ。美味しそう!佐野君って、お菓子好きだよね」
「なぎちゃんもだろ」
「それで太らないんだから、ズルいよね」
「体質だから、しょうがねぇだろ。
佐野は期間限定の新商品のチョコを、カゴの中に入れた。
カゴの中にチョコを入れた佐野を見ながら、渚は言った。
「就職してから、流花ちゃんに会っていないなぁ。佐野君、田中君に会ってる?」
「俺も、田中に会っていないなぁ」
「田中君って、流花ちゃんと同じ設計事務所で仕事をしているんだよね」
「そうそう。聞いたときは、びっくりした」
「田中君流花ちゃんのこと、今でも好きなのかなぁ」
「田中のことだから、流花ちゃんを追い続けているよ」
「流花ちゃん、彼氏がいるのに……」
渚は田中に、流花を諦めるように説得をしたことがあった。
しかし渚の言葉は、田中に届かなかった。
「流花ちゃんの彼氏って、barのマスターだったよな。大学の時一度見かけたけど、大人の彼氏だった」
「そう、そう。あの流花ちゃんが、甘えてるんだよ」
ふと佐野が、話題を変えた。
「大学の卒業式の時、飲みに行ったじゃん。あれ以来流花ちゃんと田中に会っていないよな」
「うん。また四人で、飲みに行きたいね」
「行こうぜ。俺、田中にラインする」
「私、流花ちゃんにラインするね」
渚と田中は、レジに向かった。
水田菓子メーカー営業部の社員、友光ちはるは量販店の入り口の大きな扉の前で、同じ営業部で一年上の馬場が来るのを待っていた。
ちはるが量販店の菓子コーナーを歩いていた時、馬場からラインが送られてきた。
『今、何処にいる?近くにいるなら、一緒に会社に戻ろう』と言う、ラインだった。
ちはるがいる量販店の前で、ちはるは馬場と落ち合うことになった。
ちはるが量販店の前で馬場を待っていると、待つこともなく馬場がやって来た。
お互いに「お疲れ〜」と言い合い、肩を並べて歩いた。
「今日はこの店で、営業か?」
馬場の言葉に、ちはるは答えた。
「たまたま通りかかったから、菓子コーナーを視察していた」
「おっ、仕事熱心だな。感心感心」
「茶化さないでよ!新商品が出たでしょ。気になって」
「で、どうだった?」
「新商品に、食いついていた客がいたわ」
「おっ!早速、買われたか!」
「その客……」
「なんだ、どうした?」
「シロの大学の時の、友達だった」
「シロちゃんの?よく、そんなことがわかったな」
「その客は男女二人の客で、話し声が聞こえたのよ『流花ちゃん』って言っていたし、『流花ちゃんの彼は、barのマスター』って言っていた」
「じゃあ本当に、シロちゃんの友達なんだ」
「でさぁ、その共通の友達に『田中君』って子がいて、その子シロのことが好きなんだって。しかも、同じ会社で仕事をしているんだって!」
「友光……影でこそこそ聞いているんじゃねぇよ」
「失礼ね!常に、アンテナを張っているんだから。これは、直接シロに聞かなくちゃ」
「じゃあ近いうち、マスターの店に行くか。そうだ、スイちゃんも誘うか」
「馬場が、一番楽しんでいるんじゃないの」
ちはるは呆れて言い、馬場とちはるは会社に向かった。




