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タイトル未定2026/07/20 20:34

 午後六時過ぎ、やっと患者が途絶えた。

 残った業務をしていると、七時を回った。

 マスターは、備品の後片付けをしていた亜美に声をかけた。

「園田さん、終われそうですか?」

「はい、もう終われます」

「ボクは、先に上がります。お疲れ様です」

「お疲れ様です」

 診察室から出ていったマスターを見届けた亜美は、自分も急ぎ足で診察室を出て、休憩室に向かった。

 休憩室で着替えを済ませた亜美は、診療所から出て駐車場に向かった。

 一足早く診療所を出たはずのマスターの自転車は、駐輪場に置いたままだった。

 自転車を置いて、バスに乗って行くのか、それとも出かける前に診療所内に併設された実家に寄っているのか。

 待ち合わせ場所を、亜美は既に知っている。

 待ち合わせ場所の近くには、コインパーキングがある。

 車をそこに置いておけば、亜美は自由に動くことができる。

 亜美は車に乗ると、エンジンをかけた。


 幸いコインパーキングに、車を停めることができた。

 待ち合わせ場所は、広い駅前広場だった。

 駅前広場はネオンが明るく、人々でにぎわっていた。

 駅の柱時計を見上げると、午後八時を回っていた。

 既に一時間が経っていたが、まだマスターは現れない。

 ……見失った?

 亜美は、少し焦り始めていた。

 更に、三十分が経った時だった。

 ロータリーにバスが入ってきて、バスはゆっくり停車した。

 バスの前方の扉が開き、人々がゆっくり降りてきた。

 最後の列の中に、黒いリュックを背負ったマスターが降りてきた。

 マスターは迷いもせず、歩いていた。

 亜美は少し距離をあけて、マスターを追った。

 歩いていたマスターは、駅の壁に寄りかかっていた女性の前に立ち止まった。

 ……あの壁に寄りかかっている人が、流花ちゃんなんだ。先生に隠れて、流花ちゃんが見えない!

 マスターから距離があるので、マスターと流花の会話が聞こえない。

 亜美がじっと見ていると、マスターが流花の携帯を取り上げて、言い合いをしていた。

 ……何を、しているの?

 取り上げた携帯をマスターは流花に返し、流花は携帯をバックにしまい、マスターと手をつなぐと歩きだした。

 流花は薄色の水色のブラウスに、黒のパンツと黒のローファーを履いていた。

 マスターは、黒色のティーシャツにジーパンにスニーカーと、亜美が朝見た姿だった。

 マスターと流花が、亜美の目の前を通り過ぎる。

 黒髪ショートカットで、大人びた顔立ちの流花は、あどけない笑顔をマスターに見せていた。

 流花が背の高い女性だと聞いた亜美は、流花を冷たい感じの女性だと想像していた。

 その想像は、まったく違っていた。

 目の前を歩く流花に、亜美は嫉妬をしていた。


 駅前広場の壁に、寄りかかっている流花を見つけたマスターは、足早に流花のもとに行った。

 流花は熱心に、携帯画面を見ていた。

 マスターに気が付いた流花は、顔を上げた。

 マスターは流花の携帯を覗き込むと、流花の手から携帯を取り上げた。

「ボクを待っている間に、一級建築士の過去問題をやっていたんですね。ボクは、試験勉強は忘れてと、言いました」

「待っている間、だけです。携帯を返してください」

「今夜は、携帯を見ないでください。守れますか?」

 稀に見ない横暴なマスターに、流花は呆れて笑ってしまった。

 マスターは流花に携帯を返し、流花は携帯をバックにしまった。

 マスターと流花は手をつなぐと、繁華街に向かって、歩きだした。

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