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第五話 ライラの魂


「ライラ・ルトリス。今からお前を処刑する」


 処刑される前、気づいてよかった。

 この騎士は、いや‥‥()()()()は、ちゃんと私のことが大嫌いだと。

 その騎士団長に、首を斬られる前、私は言った。


「また後で」



「体の方は大丈夫ですか?やっぱ何百年、いや何千年?‥‥生きてるとどこか痛くなったりしません?」

「あら~、あなたは相変わらず失礼なクソガキね~。シバきたくなるわ」

「出来るものなら来てくださいよ」

「そういう割には距離遠いわね。」

「だって怖いじゃないですか。ライラさんの攻撃なんて」


 ライラは今、一面に花広がる花畑の中にいた。広すぎて、先が見えないくらいの面積だ。

 そしてもう一人、さっきからライラと喋っている男は、いつかのライラの首を斬った騎士団長だった。


「どうですか。この”部屋”は」

「結構いいわね。退屈し無さそうよ。エルド、あなたが作ったのでしょう?」

「はい、頑張りました」


 そういって自慢気に胸を張るエルドを、ライラは無視して通り過ぎる。そしてふと、何かを思いついたように振り返った。


「ねえ、あれは順調かしら?」

「あれ‥‥?あー、あなたの魂を集めることですか?結構頑張ったと思いますよ。なんせ67個中64個も見つけたんですから」

「ふーん。でも、そろそろ早くしてね。いい加減閉じ込められてばかりも飽きてきたわ」

「そうは言ってもどこにあるのか分からないんで無理です」

「あらそんな事?」


 ライラは空に向かって手をかざす。その瞬間、空にある情景が浮かび上がった。

 しかしその情景はブレブレで、とても使えるものとは言えなかった。


「う~ん、まだ私も不完全ね。えーと‥‥‥あら?ここ私知ってるわ。学園よ、この国の」



「起きなさいよこのぐうだら聖女候補が!!」

「スヤァ‥‥‥」

「入学式でしょ!?いつまで寝てるのよ!セイラなんて諦めてもうとっくに出ていったわよ!?」


 数分後———‥‥


「良い目覚めね~」

「そうかしら?私は最悪だったわ」


 そういいながらアリアの着替えを手伝う。アリアの制服には、普通の制服とは違う、聖女候補生の

”印”が刻まれていた。


「大丈夫なの?あとちょっとで入学式よ?時間、間に合わないんじゃない?」

「入学式って午後じゃなかったかしら?」

「何言ってるの?もうその午後よ」


 私は思った。そう言った時に見せたアリアの表情を、金輪際忘れることはないだろうと。



「何で起こしてくれなかったの~」

「起こしたわよ!散々!アンタがここまで生活力がないとは思わなかったわよ!」


 現在‥‥‥白猫を抱えながら学園内を走っているのは聖女候補生だ。

 ゴーンゴーン

 鐘の鳴る音が聞こえて来た。


「あら~?入学式始まったかしら~?」

「もうちょっと緊張感持ちなさいよ‥‥‥」



「入学おめでとう、生徒諸君。さて、挨拶をする前にここで二人!聖女候補生を紹介しよう。ロアナとアリアだ」


 拍手と共に壇上に上がってきたのは、金髪で青い目の色をした女の子、ロアナと‥‥‥いや、ロアナだけだった。

 見当たらないもう一人の候補生に会場はどよめく。


「おい、もう一人はどこだ」

「見当たらんぞ」

「今年は第一王子がいるというのに‥‥‥!」


 教職員が立ち上がろうとした、そのとき、ドタタタタ‥‥と走る足音が聞こえた。


「ごめんなさ~い。寝坊しましたぁ~!」


 勢いよく扉を開けながらリリィを抱えたアリアが入ってきた。


「え、もう聖女候補生紹介してるわ。急がなくちゃ!」

「いや、その前にその猫何」


 尋ねる教師をよそに、アリアは走って壇上へと階段を上った時———‥‥‥


「ひゃん!」


 アリアは階段に躓き、盛大にこけた。

 その瞬間、会場からドッと笑いが溢れる。


「アリアさん!あなたのこけっぷりに応じて今回は許してあげますが、あなたはこの学園の生徒‥‥しいては聖女候補生なんですからね!次からは遅刻しないように!」

「はぁい」


 笑いが収まり、紹介が終わる。

 そしてアリアが椅子に座る、その時までも、ずっとアリアを見ている者がいた。


「アリア‥‥‥私と同じ聖女候補生‥‥‥一瞬で私から人の目を奪っていったことを許さない‥‥‥!」



 広い広い花畑の中に、ライラは一人でいた。

 視線の先には、まだ芽が出たばかりの花があった。


「アリア‥‥‥リリィ‥‥‥あなた達はとても素敵なパートナーだったわね」


 そういいながら、ライラは芽を足で踏み潰した。






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