第三話 使い魔リリィ
「あーあ、もうくたばったよ。これだから無能は‥‥‥何をしても無能だ」
ポイッと投げ捨てられたアリアは、しばらく動けずにいた。
痛い。さっきみぞおちを殴られた。他にも人間の急所狙って‥‥‥あぁ、痛い。叫びたい。こういうことをされるといつも思ってしまう。‥‥‥私はいつ消えれるのだろうかと。
「あ、あの猫‥‥‥姉さまにでもバレたら‥‥‥大変!!」
走って自分の部屋へと行く。どこもかしこも痛いけど、あの猫がどうしても気がかりだった。
「‥‥‥いない‥‥‥!」
部屋のドアを開けると、あの白猫の姿がどこにもいなかった。
間に合わなかった‥‥‥いやでも、まだ可能性は‥‥‥いや、一旦落ち着け。きっと逃げただけだ。そう、きっと‥‥‥
その時、何か花のような匂いがした。
「何かしら、この匂い‥‥‥これは、ローズリリー?」
匂いの正体が分かった瞬間、目の前の空気の色が変わった。
「何‥‥?どういうことなの」
突然起きた現象に理解が追い付かず、ただ見つめるだけだった。と、そこで部屋中に色の変わった何かがドアの外では薄く、ひとまとまりになっていることに気が付いた。
廊下にでてみると、まとまりだと思っていたものが、どこかに続いていた。
「たどればいいのかしら‥‥‥?」
色の変わった何かを辿っていく。私が屋敷を出歩いているとバレたらいけないから慎重に。と、ある一つの部屋に繋がった。
「ここ‥‥‥?」
そこは、誰も使ってい無さそうで、どうにも不気味な感じがした。
開けていいものなのかしら。いや、でも‥‥‥えぇい、背に腹は代えられない!
ガチャ‥‥‥
どうにでもなれの精神でドアを開けると、そこにいたのは‥‥‥姉さまだった。
■
「ね、姉さま‥‥‥」
「あらアリア。いいところに来たじゃない。あんたも喜ぶと思ってね、とっておきのを準備したのよ!」
そういって二つの物を見せてきた。
それが何か分かったとたん、アリアはへたり込んでしまった。
「あははははッ、やっぱいい反応するじゃない!あんたが妹で良かったわ!」
アリアに見せてきたのものは、リリィの頭と胴体だった。アリアの姉はそれを投げ捨てる。
ベチャ‥‥
何かが潰れる音がした。
「ね、姉さま‥‥‥」
「あら何よ。そもそも許可なくこれを持ってきたあんたが悪いんでしょ。だから公爵家として罰を与えたんじゃない」
なんだこの姉は‥‥‥言ってることが最早悪魔だ。何が彼女をそうさせたのだろう‥‥いや、もうそれも知りたくはないな。
「姉さまはすごいですね‥‥‥何も悪意を感じず、平気で生き物を殺してしまうのですから‥‥‥ねえ、これが一度目ではないでしょう?」
「は、何言って———」
「この部屋には血の匂いしかしない。かわいそうに‥‥‥あなたは何も常識を知らずにこれから生きていくのですね」
アリアの言葉にキレた姉は、アリアに殴りかかってきた。
「うるっさいわね!たかが猫ごときが死んだくらいでキレてるんじゃないわよ!!」
「あら、私は生きてるわよ」
突如聞こえて来た声は、胴体と頭が離れたはずのリリィの方から聞こえてきた。見てみると、そこには何事もなかったように元通りになったリリィがいた。
「猫が喋っ」
「あら、使い魔が喋ったらおかしいの?」
「使い魔‥‥‥!?」
何かの本で見たことがある。使い魔とは大昔に人間と大戦争をして、結局は滅んでしまったのだと。でもまだ生き残りがいたなんて。
「使い魔。使い魔ねぇ‥‥‥じゃあ、分かったわ!あんた、私の使い魔になりないさい!どうせ使い魔なんて人のいう事聞くだけの生き物なのでしょう!?」
姉さまが突然無茶ぶりを言い始めた。何を言っているのこの人は。使い魔を扱うのにはいろいろと条件や儀式が‥‥‥。
「‥‥‥嫌よ。なんで私がアンタの使い魔にならなくちゃいけないのよ。ならせ方も分からないくせに」
「ダメ、そんなこと言ったら姉さまがっ」
慌てて猫の口を塞ぐ。でも、もう遅い。姉さまが本気でキレたら‥‥‥!
「もう、頭に来たわ!火よ 炎よ 大地を燃やし尽くせ!!」
ドォンッッ
頭上に火の玉が通り過ぎた。壁がくぼむ。
「‥‥‥魔法」
「そう、姉さまは魔法を使えるの!だからそう簡単に刺激しちゃ———」
「弱い火ね。何だ、この世界はこうも魔法が弱くなってしまったのね」
「何言って‥‥‥」
「魔法というのは、こういうことよ」
ドォォォォォォンッッ
壁が、きれいさっぱり吹き飛んだ。
「は‥‥‥」
「これが私の使う中で一番弱い魔法。魔力が少なすぎて少し弱くなってしまったけれど、まぁ、アンタよりかは強いわね」




