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きみの隣で、今日も僕は考えてる。本ばかり読んでいた俺の日常は、少しずつ騒がしくなる  作者: マリセリソウ


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第49話 苛立ちが向かった先

 親善試合とはいえ、始まってしまえばやはり試合は試合だった。


 キックオフ直後こそ互いに探り合うような展開だったものの、前半十分を過ぎた辺りから徐々に当たりは激しくなり始め、ボール際では容赦なく身体がぶつかり合い、時にはスライディングで芝が大きく削れる場面もあって、スタンドからはそのたびに「おぉ……」とどよめきが起こっていたのだが、それでも試合自体は非常に引き締まっており、日本代表もイギリス代表も互いに譲らず、前半二十分を過ぎてもスコアは動かないまま拮抗した展開が続いていた。


 もっとも、“年代別代表”とは言っても、このピッチへ立っている選手たちの中には既にプロ契約を勝ち取っている選手も多く、プレーの強度や判断速度は高校サッカーとは比べ物にならない。

 特にリアムなんか、この間一緒に公園で小学生と遊んでいたとは思えないくらい普通に怖い。


「うわぁ……」


 夏樹が思わず声を漏らす。


「速っ……」

「まあ、あれでまだ流してる方だぞ」

「えぇ……」


 リアムは前線でボールを受けるたび、明らかに空気を変えていた。一歩目の速さもそうだが、何より身体の使い方が上手い。無理に突っ込まず、相手の重心をずらしてから抜く。しかも今日は周囲との連携もかなり良い。


「でも創ちゃんも、あの中にいてもおかしくなかったのにね?」


 夏樹がふと微笑みながらそんなことを言った。俺は思わず眉をひそめる。


「いや、無理だろ」

「そうかなぁ?」

「そうだよ」


 即答だった。だが、そのやり取りを聞いていたシャーロットが、少し懐かしそうな顔でこちらを見る。


「When Sotaro left the club in England, the youth coach looked genuinely heartbroken.」(創太郎がイギリスのクラブを辞める時、ユースのコーチ、本気で落ち込んでたわよね)

「あー……」


 そんなこともあった気がする。


「He kept saying “What a waste.” You were the one acting completely calm about it.」(“もったいない”ってずっと言ってたもの。当の本人はめちゃくちゃ淡々としてたけどね)

「失礼な話だな」


 日本語でぼやくと、言葉がわからないはずなのにシャーロットはくすっと笑う。

 実際、その時の俺はかなりあっさりしていたと思う。別に未練が無かった訳ではない。ただ、その時点でもう“サッカー選手にはならない”と決めていたからだ。


「I had already decided not to become a football player by then.」(あの時にはもう、サッカー選手にはならないって決めてたからな)


 俺がそう言うと、シャーロットは一瞬だけ何か言いかけた。


「Why――」


 だが、途中で止まる。

 たぶん、“なぜ?”と聞きたかったんだろう。でもシャーロットは、俺が過去に執着しない性格だということをよく知っていた。終わったことを、俺はあまり振り返らない。だからシャーロットも結局それ以上は聞かず、代わりに少し困ったような笑みだけを浮かべた。


「You're still weirdly stubborn about things like that.」(そういうところ、昔から妙に頑固よね)

「褒めてないだろそれ」

「Not at all.」(全然)


 なぜか日本語なのに通じている…。

 そんな会話をしている横では、柴田さんと山本さんが完全に試合へ夢中になっていた。


「うわ、今のパスすごっ……!」

「えっ!? 何でそこ通るんですか!?」

「いや今のトラップおかしいでしょ……!」


 かなり盛り上がっている。どうやら二人とも、ちゃんと日本代表を応援しているらしい。

 もっとも。


「きゃっ!? リアムさんすごい!!」


 山本さんは時々普通にリアムを応援していた。


「萌、どっち応援してるのよ」

「はっ!? ち、違います! 今のは反射で!」

「完全にリアム応援してたわよね」

「だ、だってかっこよかったんですもん……!」


 山本さんが顔を赤くしながら慌てている。するとシャーロットが不思議そうに首を傾げた。


「What is she saying?」(何て言ってるの?)


 夏樹が笑いながら通訳する。


「Moe accidentally cheered for Liam.」(萌がついリアム応援しちゃったんだって)

「That's understandable.」(それは仕方ないわね)


 シャーロットがさらっと肯定した。妙に説得力がある。一方、柴田さんは呆れたようにため息を吐いていた。


「ほんと騒がしいわね……」

「でも直美も楽しそうだよ?」

「……まあ、試合は面白いわ」


 そう言いながらも、柴田さんの視線はずっとピッチへ向いている。どうやらかなり集中して見ているらしい。そして、その様子を少し後ろから見ていた夏樹とシャーロットは、どこか微笑ましそうに顔を見合わせていた。


「They really are fun to watch.」(あの二人、見てて面白いね)

「Yeah.」(そうだな)

「Sotaro somehow gathered very interesting people around him.」(創太郎の周りって、なんだかんだ面白い人ばっかり集まるのよね)

「No, it's not my fault.」(いや、俺のせいじゃないだろ)

「You sure about that?」(ほんとに?)


 シャーロットが意味深に笑う。


 ……何か納得いかない。



 前半終了間際、試合は一気に動いた。イギリス代表のコーナーキック。

 蹴り込まれたボールへ何人もの選手が飛び込み、ゴール前は完全に混戦状態になっていたのだが、最初のヘディングシュート自体は高原が身体を投げ出すようにしてブロックし、スタンドからも「おぉっ!」と歓声が上がった。


「高原くんすごっ!」

「今の止めるの!?」


 夏樹と山本さんも驚いている。

 だが問題は、その次だった。弾かれたボールが中途半端にゴール前へ転がる。そして、その位置にいたのがリアムだった。


「あ」


 俺がそう思った時にはもう遅い。リアムは迷いなく右足を振り抜き、低く鋭いシュートをゴールへ突き刺した。

 ネットが揺れる。次の瞬間、スタジアムが大きくどよめいた。


「うわぁぁ!!」

「リアムさんすごい!!」


 山本さんが完全にテンションを上げている。一方、日本代表側のスタンドからは悔しそうな声も漏れていた。そしてその直後、前半終了のホイッスルが鳴る。

 スコアは1対0。イギリス代表リードで前半終了だった。


「いやぁ……今のは綺麗だったわね」


 柴田さんが感心したように呟く。


「リアム、決める時ほんと決めるよねぇ」


 夏樹も苦笑している。するとシャーロットが得意そうに胸を張った。


「That's my boyfriend.」(私の彼氏だからね)

「Don't suddenly start bragging about your relationship.」(急に自分の彼氏自慢すんなよ)

「I'm allowed to.」(許されるでしょ?)


 まあ、実際格好良かったのは事実なので否定しづらい。そんな話をしているうちにハーフタイムへ入り、観客たちも一斉に席を立ち始めた。

 俺も立ち上がる。


「ちょっとトイレ行ってくる」

「あ、じゃあ私たち飲み物買ってくる!」


 夏樹がそう言うと、山本さんも「私も行きます!」と立ち上がり、柴田さんも一緒についていくらしい。シャーロットも「I want iced tea.」(アイスティー飲みたい)と言いながら夏樹についていった。幸い今日は空席もちらほらあるため、場所取りに神経質になる必要はない。


「じゃ、終わったらまたここ集合な」

「はーい!」


 そうして一旦別行動になる。


 俺は人混みを避けながらコンコースを歩き、トイレを探していたのだが、その途中で見覚えのある顔を見つけた。

 西海だった。私服姿だが、後ろにはスーツ姿の大人が二人ついている。

 どこかのスポンサーか、関係者か。

 そんなことを考えていると、西海もこちらに気付いたらしく、一瞬だけ口元を歪めるように笑った。


「……」


 だが特に話しかけてくる訳でもなく、そのまますれ違う。俺はそんな後ろ姿を見送りながら、まだ夏前とはいえスーツって暑そうだな……と、どうでもいいことを考えていた。

 そして用を済ませたあと、元の席へ戻ろうとしていた時だった。

 少し離れた場所に、夏樹たちの姿が見える。


 ……のだが。


 何か増えてる。近付いてみると、西海が夏樹たちへ話しかけていた。しかも、明らかにシャーロットへ興味津々である。


「ぜひ紹介してくれよ!こんな美人とどこで知り合ったんだ?俺のことも紹介してくれよ!」


 西海は妙に愛想よく笑いながら話している 一方、シャーロットは完全に“営業スマイル”だった。口元は笑っている。

 だが目が笑っていない。そして夏樹の通訳へ耳を傾けながら、微妙に困った顔をしていた。

 するとシャーロットがこちらへ気付いた。


「あっ」


 次の瞬間。


「Sotaro!」(創太郎!)


 シャーロットはぱっと表情を明るくすると、そのままこちらへ走ってきた。そして自然な動作で俺の腕へ掴まる。


 おい。


 周囲の視線が痛い。


「What's wrong?」(どうした)


 俺が小声で聞くと、シャーロットは少し困ったような顔をした。


「That guy is kind of scary.」(あの人、なんだか怖いわ)

「Scary?」(怖い?)

「The way he looks at me feels weird.」(見られ方がちょっと変なの)


 なるほど。俺は軽く肩をすくめた。


「You're too pretty. That's probably why.」(お前が美人すぎるからじゃないか?)


 一瞬、シャーロットが固まる。

 そして。


「Wait… did you just call me pretty!?」(今、私のこと美人って言った!?)


 急にテンションが上がった。

 めんどくさい。


「You almost never say things like that!」(創太郎、そういうこと滅多に言わないのに!)

「はいはい」

「I'm telling Liam later.」(あとでリアムに自慢する)

「やめろ」


 面倒になった俺は、そのまま近くにいた夏樹を呼ぶ。


「ほら、回収してくれ」

「えぇー?」


 夏樹は苦笑しながらシャーロットを引き取った。

 一方、西海はその様子を見て一瞬だけ不機嫌そうな顔をしたものの、すぐにまた営業用の笑顔へ戻る。


「それでは、また。広瀬さん、山本さん、柴田さん」


 そう言って、西海はスーツ姿の男二人を連れて去っていった。

 夏樹と山本さんは「はい、またー」と普通に挨拶を返していたのだが、柴田さんだけは違った。

 彼女だけは最後まで挨拶を返さず、どこか訝しむような目で西海の背中を見つめていた。



 観客席へ戻った俺たちは、さっきと同じ並びで席へ座り直し、再開した後半戦を見守っていたのだが、試合の流れは前半終了間際とは少し違っていた。

 一点を追う日本代表は、どうやら川村を中心に攻撃を組み立てる方針へ切り替えたらしく、ボールはかなりの頻度で川村の足元へ集まっていた。

 球技大会では圧倒的な個の力で無双していた川村だが、さすがに国際親善試合ともなると勝手が違うらしい。


「うわ、囲まれてる……」


 夏樹が思わず声を漏らす。

 実際、川村がボールを持つたびにイギリス代表は二人、三人と素早く寄せており、簡単には前を向かせてくれなかった。

 それでも強引に仕掛けようとするのが川村らしいのだが、今日はそれが裏目に出ている。

 無理に突破を狙ってボールを失う場面が増えていた。


「球離れ遅いな……」

「そうなんですか?」

「完全に狙われてる」


 俺がぽつりと呟いたことを山本さんが気になったようだ。簡単に状況を説明していると川村へボールが入った。

 その瞬間、一気に囲む。そして奪ったら即カウンター。

 かなり徹底されていた。


「でも、何か焦ってる感じするよね」


 夏樹の言葉に、俺も小さく頷く。たぶん川村自身も、自分が狙われていることは理解している。その上で、一人で状況を打破しようとしているように見えた。だが、その焦りは周囲にも伝わってしまっていた。

 そして、それが形になって現れたのが後半十分過ぎだった。

 中盤で川村がまたボールを失う。その瞬間、イギリス代表が一気に前へ出た。


「速い……です!」


 山本さんが思わず声を上げる。

 縦へ鋭く入るパス。そこから一気にゴール前まで運ばれ、日本代表DF陣が慌てて戻る。だが間に合わない。最後は右サイドからの折り返しを押し込まれ、追加点。

 スタジアムがどよめいた。


「2点目……」


 山本さんが不安そうに呟く。

 一方、ピッチでは別の意味で空気が荒れていた。失点直後、日本代表の選手が川村へ何か声を掛けたのだ。たぶん、「もっと簡単に捌け」とか、そういう類の言葉だったんだろう。

 だが川村は、それに完全にキレた。


「うわ……」


 思わず声が漏れる。

 川村は味方選手の胸ぐらを掴み、何か怒鳴っていた。慌てて高原と広田が間へ割って入る。


「やめろって!」


 そんな声がここまで聞こえてきそうな勢いだった。観客席もざわつく。


「何だかイライラしてるわね……」


 柴田さんがぽつりと呟いた。夏樹と山本さんも心配そうにピッチを見ている。俺は小さく息を吐いた。


「……一人で何とかしようとしてるな」

「え?」

「完全に抱え込んでる」


 川村は今、自分で試合をひっくり返そうとしている。でも、それをやればやるほど周りが見えなくなっている。するとピッチでは、高原が川村へ何か話しかけていた。たぶん落ち着けと言っているんだろう。だが川村は、高原を突き飛ばした。


「うわぁ……」


 夏樹が顔をしかめる。高原は一瞬だけ険しい顔をしたが、すぐに諦めたようにため息を吐き、自分のポジションへ戻っていった。

 日本ボールで試合再開。普通なら、一度落ち着いてボールを回す場面だ。

 だが……


「っ!?」


 川村がボールを持った瞬間、イギリス代表が一斉に前へ出た。完全な奇襲だった。


「狙ってたのか……!」


 俺が思わず身を乗り出す。

 川村は一瞬対応が遅れ、そのままボールを奪われる。そこからは速かった。ワンタッチ、ツータッチで小刻みに繋がるパス。高原と広田が必死に戻りながらコースを消そうとする。だがラストパスが通った。


「リアム!」


 シャーロットが立ち上がる。ラストパスを受けたリアムは、迷いなく右足を振り抜いた。

 低く鋭いシュート。ボールはそのままゴールネットへ突き刺さる。

 ――3対0。

 一瞬、スタジアム全体が静まり返った。あまりにも一瞬だった。速すぎだ。観客席のサポーターたちも、何が起きたのか理解が追い付いていないような空気になっている。


「……凄いです。何だか怖さ感じるくらいです」


 山本さんがぽつりと呟く。

 まだ後半十五分。時間自体は残っている。だが、空気はもうかなり重かった。3点差。しかも内容的にも、日本代表は完全に飲み込まれ始めている。

 再び日本ボールでキックオフ。今度はさすがに先程のような奇襲は無く、日本代表も慎重にボールを回しながら反撃のタイミングを探っていた。

 そこからしばらくは一進一退だった。日本も何とか立て直そうとしている。高原と広田を中心に、守備陣はかなり粘っていた。

 だが――。


 中盤でリアムがボールを持った瞬間、スタジアムの空気が少し変わった。日本代表の選手たちが一気に距離を詰める。

 だがリアムは慌てない。

 身体を半身に開きながらボールをコントロールし、周囲を見ながら次のパスコースを探していた。


 その時だった。


「っ!?」


 後方から、川村が物凄い勢いでスライディングを仕掛けた。完全に後ろからだった。リアムも気付くのが遅れたのだろう。ほとんど回避動作を取れないまま、そのチャージをまともに受けた。


 鈍い音。


 次の瞬間、リアムの身体が大きく崩れ落ちる。


「Liam!!」(リアム!!)


 シャーロットが悲鳴のような声を上げた。夏樹も息を呑み、山本さんは思わず口元を押さえている。


「えっ……うそ……」

「今の……」


 柴田さんも表情を険しくしていた。

 俺は反射的に立ち上がる。そして、そのまま観客席の一番前まで降りていった。ピッチを見下ろす。リアムは倒れたまま動かない。

 審判がすぐに笛を吹き、試合を止めた。そして迷いなくポケットから赤いカードを取り出す。


 レッドカード。


 当然だった。あれは完全に危険なファールだ。しかも後ろから。悪質と言われても仕方ない。

 すると次の瞬間、イギリス代表の選手たちが一気に川村へ詰め寄った。


「What the hell was that!?」(今の何なんだよ!?)

「Are you insane!?」(頭おかしいのか!?)


 怒号が飛ぶ。高原と広田、それから日本代表の選手たちも慌てて間へ入り、必死に仲裁していた。ピッチ上は完全に入り乱れた状態になる。

 だが、そんな中でも川村はリアムへ目も向けなかった。むしろ苛立ったような顔のまま、ふてくされた様子でピッチを出て行こうとしている。それがさらに相手選手たちの怒りを買っていた。


「Hey, wait a minute!」(「おい待てよ!」)

「No apology either?!」(謝罪も無しか!?)


 また詰め寄るイギリス代表。慌てて止める日本代表。

 空気は最悪だった。俺はそんな騒ぎより、リアムの様子が気になっていた。

 だが。


「……まずいな」


 リアムはまだ起き上がれない。スタッフが駆け寄り、メディカルが状態を確認している。シャーロットも立ち上がったまま、祈るような顔でピッチを見つめていた。


「Please get up…」(お願い、立って……)


 だが結局、担架が運び込まれる。周囲の選手たちも険しい顔をしたまま見守っていた。高原なんかは特に辛そうだった。リアムはチームメイトたちに囲まれながら、そのままピッチを後にする。スタジアム全体が重苦しい空気に包まれていた。

 そして次の瞬間。


「I'm going to the locker room.」(ロッカールームに行く)


 シャーロットがそう言って駆け出した。


「あっ、私も――」


 夏樹も慌てて追いかけようとする。だが俺は咄嗟にその腕を掴んだ。


「待て」

「でも創ちゃん!」

「気持ちはわかるけど、俺たちは部外者だ」

「……っ」

「シャーロットはともかく、俺たちは入れない」


 夏樹は悔しそうに唇を噛む。今のロッカールーム周辺は、チーム関係者や医療スタッフが動いているはずだ。部外者が行っても邪魔になるだけだろう。


「リアム本人か、シャーロットから連絡来るの待とう」

「……うん」


 夏樹は小さく頷いた。山本さんも不安そうな顔をしている。


「大丈夫でしょうか……」

「さすがに心配ね……」


 柴田さんも心配そうな顔だった。

 そして、その重い空気のまま試合は再開される。だが、流れは完全に壊れていた。数的不利になった日本代表は防戦一方となり、イギリス代表の猛攻を受け続けることになる。

 高原と広田は必死に踏ん張っていた。それでも、一人少ない状況でイギリス代表を抑え切るのは難しかった。


 後半終盤、さらに2失点。


 そして試合終了のホイッスル。


 スコアは――5対0。


 スタジアムに重たい空気が流れる。



 だが、今この場で俺が気にしていたのは、試合結果よりも別のことだった。

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