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女装戦記  作者: 水城 漣
第2章 『男娘の暗殺者』
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第11話 『新たな刺客⑥』

「んっ···、朝か」


窓から差し込む眩しい光に私は目を覚まさせられた。

目を開けて飛び込んでくる天井は私の家のものではない。

だけど、この天井を見るのはもう何度目だろう。


「んぅ···」


顔を洗おうとベッドから降りようとしたとき、隣で寝ていた女の子が寝返りを打ち、こちらを向く。

そして、幸せそうなかわいい寝顔を晒す。


「すーすー、、えへへ、、、」


どんな夢を見ているのか知らないが、突然寝ている彼女は微笑んだ。

その微笑みは見た人の心を確実に虜にするだろう


だが、それも無用な心配。

何故なら彼女は私の可愛い彼女。

何者にもこの微笑みを奪わせない。


···あぁ。そうだ。

他人にこの顔を見せる前に私が殺さなければならないからだ。


今現在、私は彼女、いや、彼の恋仲という設定で行動している。

彼はヒメアと名乗っていたな。

だが、それは偽名だろう。

本名が解ればどの部隊の所属なのか容易に解るが、そう事は簡単ではない。

現在、ミドリに情報を漁ってもらっているがまだ連絡は来ない。

握手会の事件から一週間が経とうとしているが、いまだにコイツが何者か解っていないのだ。


私はベッドから起き上がり、洗面所に向かった。

寝起きであまり働かない頭を冷たい水で無理矢理覚醒させる。


パチンッ


冷たい手で顔を叩く。

···よし。


そして私はリビングのソファーに座り、テレビをつけた。

朝のニュース番組が流れる。

だが、今の私にはその音など映像など頭には入ってこない。


考えろ。

考えるんだ。

ヒメアが何者かを。

ヒメアの目的を。

ミドリの情報を待っていては遅いのだ。


私はテレビを眺めるような格好で、考察を続けた。



   ◇   ◆   ◇



私がヒメアと出会ったのはあの握手会が初めて。

そして、握手会の時に私は不意にヒメアにキスされた。

そこでヒメアは自信満々に私と恋仲であると言ったのだ。

そこで私は首を縦に振った。

勿論、首を横に振ることも出来た。

だが、私は気になったのだ。

あんなにも堂々と私と恋仲である発言をした真意を。

さも、私が否定しないと確信したような発言の裏を。

だから私はヒメアの思惑通り首を縦に振った。

そしてヒメアと行動を共にすることを選んだ。


これに関しては恐らく、ヒメアを好きになる為のナニカを私に仕掛け、それが成功したと思ったからそういう発言に至ったのだろう。


そのナニカで思い付くものが媚薬。そして、魔法。


だが、媚薬というもには徐々に効果が出てくる品で、即効性はない。

それに、媚薬を飲まされるタイミングはあのキスでしかなが、その時私はヒメアから少量しか液体を口に含まされていない。

その程度の量で人間の心が奪われる筈などない。


だから私は魔法であると確信した。


咄嗟にそう判断した私は握手会時点でミドリに調査を依頼した。

紅国で心を操る魔法を所持している人の情報を収集してくれと。

流石のミドリで、もう翌日には手元に数十枚の紙が届いていた。

紅軍所属の操心魔法発現者。

その中にはヒメアの姿はない。

だが、それは想定済みだ。

私が知りたいのはヒメアが紅軍所属であるかどうかではない。

知りたかったのは操心魔法の特徴。


ミドリから渡された資料で解ったことはただひとつ。

紅軍所属の操心魔法は全て、同性にしか効果がないということだ。

だから、私はこう結論付けた。

ヒメアの使っている魔法も同性にしか効果がないと。


勿論、紅軍所属の魔法遣いのみが同性にしか効果のないものばかりという可能性もある。

しかし、そんな魔法が蒼軍の手元にあるならば既に紅国は滅んでいてもおかしくない。

それに、操られた女性が暴れる等という事件は私の知る限り今までにはない。


さて、話を一転させてまた別の考察もしよう。


ヒメア。

姿こそ可愛らしい女の子だが、彼は紛れもない男だ。

私はその事実を最初の接触の時から見抜いていた。

何故か?

私にもわからない。

ただ、絶対に男だと感じた。

それだけだ。

何年間も異性のみの世界に溶け込んでいるから、同性に対しての共感の力が強く働いたのかもね。


さて、ここでひとつ問題が発生する。

それは、


ヒメアは同性にしか効かない魔法を私に対して使ってきたということだ。



つまり、ヒメアは私を男だと知っている。



何故。

どこからその情報が漏れた?


私は一週間、その事についてずっと苦悩していた。


私が男だと知っているのは数えるほど。

元班員達。前大臣夫妻。美月家メイド達。···


一体何処から漏れた···?

誰かが裏切っているの···?

もしくはメイド達の中にスパイが···?

いや。

考えたくない。

皆、私の友人や恩師達だ。

裏切るはずがない。


···私がカンナにわざと媚薬という言葉を発したのはこのためでもある。

解毒方法を探させるという名目で彼女達を私から遠ざけさせた。

彼女達にも情報漏洩の容疑はかかっているのだ。

裏切り者などいない。そう、私は信じている。

信じているからこそ、この事件から遠ざけさせたい。


更に、もう一つ疑問がある。


ヒメアは何がしたいのか。


これに関してはさっぱりだ。

ヒメアは確実に蒼軍の暗殺部隊所属だろう。

そして今回のターゲットが私。


ならば、なぜ早急に殺さないのか。


私を虜にさせて一週間が経過したのに一度も命の危険を感じたことなどない。

それに、何故私を虜にさせたのかも謎だ。


ただ本人の趣向か?


だが、ヒメアが私を殺さないでいるおかげで色々考えることができた。

そして、当初の考えていた以上にこの事件は底が深い。

それを全て解き明かしてこその事件の終焉だ。

だが、解き明かすには情報が少なすぎる。

せめて、せめてヒメアの情報だけでも欲しい。

その情報は現在、ミドリに極秘で動いてもらっている。が、ミドリにも情報漏洩の容疑がかかっているのだ。

ミドリの情報は虚偽かもしれない。


···信じてる。けど、信じるほど不安になる。


周りの誰を信用していいかわからない。

だけど、私もそう迂闊に動けない。

相変わらず暑いですね。

夏休みというものの、こんな暑さじゃ外出するのも躊躇ってしまいますね~。


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