第10話 『新たな刺客⑤』
控え室。
「···ちゃんと説明してもらうぞ」
「だからさっきも言いましたよ?私と礼はそういう関係だと」
「嘘つくなッ!そんなわけ無いッ!」
カンナは憤った声と共に机を強く叩いた。
だが、少女はその圧に一切臆することなくカンナへの嘲笑を続ける。
「あらら?私の言っていることが嘘だという確証はどこに?」
「私達は礼と同棲してる。だが、礼にそんな恋仲とつるんでいるような素振りはないッ!」
「それは貴女方の一方的な思い込みでしょう?貴女方に気づかれぬようにこっそりと逢い引きを行っているかもしれませんのに」
「それは···、」
「それに、先程、礼本人も言ってたじゃないですか。そういう関係だと」
「···」
「ふふっ。もう反論の余地がありませんか」
「···美保。今礼はどこだ?」
「礼なら別の控え室におるぞ」
「呼んできてくれ」
「了解じゃ」
「あらあら?何をする気ですか?」
「もう一度本人に聞く。それが一番だ。もし、ここで礼が違うと言えばその時点でここでお前を射殺する」
「あら怖い。ったく、軍人は気性が荒くて嫌になっちゃいますね」
「···」
◇ ◆ ◇
「礼をつれてきたぞ」
「···礼。私は、お前を信じているぞ。だから、もう一度聞きたい。礼。この女は、お前の恋仲なのか?」
「···うん」
暫しの静寂の後、私は静かにうなずいた。
「···ふふっ。残念ですね。カンナさん?」
「·········」
カンナは黙って部屋を飛び出していった。
すれ違い様に見えたその表情はとても暗かった。
「礼。話は後で詳しく聞かせてもらうのじゃ···」
「れい。きょうもいえにかえってきてくれるよね?」
「···あぁ。帰るよ。 今日は 」
その言葉を最後に、美保と未唯も部屋を後にした。
···ごめん。
「皆さん。ごめんなさい。私の彼女が突然変なことしちゃって。ファンたちも激昂しているようですが、今度公式に謝罪をさせていただきます。本日はファンたちの牽制等大変な業務をさせてしまい、申し訳ございませんでした」
私は、周りのスタッフたちに頭を下げる。
「今後、こういうことがないように私の方からも彼女にキッチリと言い聞かせておきますので今後ともよろしくお願いします」
スタッフたちを帰らせ、控え室には私と少女だけになった。
「ごめんなさい。礼。突然変なことしちゃって」
「本当だよ。お陰で大事件だよ」
「でも、あんなファンに礼は私だけのものって見せしめただけでも私は満足ですよ」
「ふふっ。独占欲が強いかわいい彼女さんだな。···あれ?えーっと、」
「ヒメア」
「あ、そうそう。なんで名前が出てこなかったんだろう?まぁいいや。本当にかわいい彼女さんだよヒメアは」
「ふふっ。ありがと。礼」
そして私達は唇を交わした。
◇ ◆ ◇
夕方。
私は一人で家に帰った。
玄関の扉を開くと真っ先にカンナが駆け寄ってきた。
「···ただいま」
「······」
カンナは返事をすることをせずにただ私を見つめていた。
そして、突然に私の唇を奪った。
カンナは舌を必至に絡まそうとする。
夕方の薄暗い部屋にイヤらしい音が響く。
私はそれを嫌がることもせずに受け止める。
暫くすると頬に冷たいものを感じた。
涙だ。
でも、これは私のではない。カンナのであった。
暫く私達は玄関先で情熱的なキスを交わした。
◇ ◆ ◇
「···ねぇ。礼」
「何?」
「今の礼は···、いや。今の礼の心は誰の?」
そのカンナの問いは鋭いものだった。
「···カンナ。気づいてたの」
「えぇ。さっきのキスで全てを確信した。もし礼が本当にアイツのモノだったらあんなキス、受け入れてないだろ?」
「そうだね」
「···それで、礼。貴女は操られてるの?」
その質問には答えられなかった。
まだ答えるには早い。
この件がすべて終わってから皆には話したい。
だから、私は黙った。
「···そう。言えないか」
「······」
「ねぇ。礼。···私達は礼の仲間だな?」
「···あぁ」
「だから。信じてる。この件もきっと礼が正しいと」
「···ありがと」
「······美保と未唯も礼が今どんな状況かうすうす把握しているだろう。きっと礼は操られているんだって。だから今全力でそれを解く方法を探している。だから待ってろ。私たちが礼をきっと助ける」
「···解った。それと、私からも伝えたいことがある」
「伝えたいこと?」
俺はカンナの耳元で小さく囁いた。
「私が、完全に支配されたら···殺してくれ」
カンナはその言葉にぎょっとする。
「で、でも···、礼は操られてるだけだ···、解毒剤を飲ませればッ···」
「残念だけど、それは無理だよ」
「な、何故···?」
「私が飲まされている惚れ薬はただの惚れ薬じゃない。とても強力な代物で、今はこうして何とか耐えられてるけど、いつ完全に支配されるかわからない。もしそうなっては心が完全に壊された証拠。そうなっては解毒剤なんてものは効かないよ」
「な、ならッ、完全に支配される前にッ···」
その時、ピンポーン、と、チャイムが鳴った。
「···時間みたいだね。私はもう行くよ」
「れ、礼ッ!」
「···カンナ。私はお前達を信じてるから。信じて待ってるから。だから、···諦めないで」
涙で顔がぐちゃぐちゃだったカンナは自身の袖でそれを拭った。
そして、いつもの凛々しい笑顔に戻り、強く答えた。
「···解った。絶対に私達はお前を救ってみせる。だから、その時まで私達の愛を忘れるなよッ!絶対にだッ!」
「うん。絶対に、絶対に忘れないよ」
そして、私は玄関の扉を開けた。
少し期間が空いてしまいましたすみません。
こういう謎を散りばめる話は事前にすべての結末を考えてから書かないといけないので、回収作業を考えてましたらいつのまにかこんな季節に...
にしても、日々暑い日が続きますね。
暑さには充分に注意して夏をお過ごしくださいな。
そういえば、夏の定番と言えば水着回ですね。
...夏中に書けるかなぁ水着回...?




