二十話
今年中には終わらせたいです。
もう、この物語飽きたので。
「味に問題はないはずなんだよね、全部秘伝のレシピでやってるし。」
確かに、シルヴァンの惣菜の味は美味しい。
この味なら売れてもいいと思うんだけどなぁ…
「ところでシルヴァンさん、表に定休日の紙が貼っていなかったけど臨時休業なんですか?」
「ん?いや、いつも夜から店を始めるんだ。」
「…は?」
「なぜだろう…冬期は休業してるけど冬以外は休みになんてしてないのに…」
「なに言ってるんですかシルヴァンさん。それですよ。貴方のお父さんは何時から開店してました?どうやって接客してました?どうやって宣伝していました?」
「父親は朝から仕込みをして、開店してたよ。接客は明るく元気にやってた。宣伝もビラを作ってたっけ?」
「それですよシルヴァンさん、今まで気づかなかったんですか?じゃあ明日からは朝から開店してくださいね?」
「ええー、接客を明るくするのは得意だけど朝苦手だしビラも面倒だ…」
「甘ったれんな!!」
突然怒鳴るアケミにびっくりしたのかシルヴァンはビクッと肩を震わせる。
「シルヴァンさんこの店潰したいんですか!?私に給料払ってくれないんですか!?明日から私も早く来ますから頑張ってください!!いいですね?」
「…はい」
「それと、ビラは私作ってきますから!!じゃあ、そういうことでまた明日来ますね。」
そう言い残すとアケミはシルヴァンの店を後にした。
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「ただいまー」
片道2時間をかけて商店街と屋敷間を歩いているので疲れ果てながらアケミはリビングに向かう。
「…お帰りアケミ。」
「あ、ただいまルゥナ。」
「今日、どこ行ってたの?」
「…えっ?」
「どこ?」
ルゥナはジッと私の目をのぞき込んでくる。
心を読まれてはいけないと心の中で全く違うことを考える。
「…誤魔化した…まあいいや、明日は家にいるんでしょ?」
「ごめん、明日もいないんだ…」
「ふぅーん?そうなの…」
なんとかルゥナをだまし、波乱のバイト一日目は終わりを迎えたのでした。
それからというもの、私は毎朝早くに家を出てシルヴァンを起こし、仕込みも手伝った。ビラも目を引くようなものを作り、シルヴァンの店は急激に繁盛していった。
アケミはめんどくさがりのシルヴァンを扱いていくうちに打ち解け、敬語はなくなっていった。
「結局、開店時間と接客さえ間違えなければ、このお店は繁盛したんじゃないの…」
「そうだったみたいだね。いやぁ!!何がともあれ助かってるよアケミちゃん!!アケミちゃんはイイ笑顔で接客してくれるし仕込みだって上手だし、あと一週間くらいで契約期間終わりでしょ?短期じゃなくて長期で働かない?」
「いや、それはちょっと遠慮しておく。私はただプレゼント代を稼ぐために働いただけだから」
「?短期とはいえ一か月毎日仕事してのお金だろ?そんなに大きな買い物なの?」
「いや、私へのプレゼントじゃないんです。今お世話になっている家の人に買っていくんです。自分で働いたお金で買ってお礼を言いたくて」
「なるほどね。じゃあ、たまにでいいから遊びに来てよ。アケミちゃん面白いし、それくらいならいいでしょ?」
「もちろん!!私もシルヴァンがサボってないか気になるしね。」
「おいおい、ひどいな。俺、アケミちゃんのおかげでまじめチャンになったのよ?」
「どうだか。」
アケミとシルヴァンはクスクス笑いながら楽しく店番をつづけたのでした。
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一方、三週間ほどアケミが家にいないスペンサー家では家族会議が行われていた。
「…アケミ、今日も用事だってさ。」
ルゥナは今にも泣きそうな声で言う。
「はあ!?もうここまで来たらおかしいだろ!!なんでこんなに予定が詰まってんだよ!!」
ジェルもピリピリした様子で叫んでいる。
「確かに、この世界出身ではないアケミがここまで家を空けることは今までなかったな。そろそろ理由が聞きたい。」
と、もっともらしいことを言うカイルの心はアケミには家で大人してくしていてほしいだけである。
「みんな落ち着いて?きっと大丈夫だよ!!」
と、ジンだけはアケミをフォローしている。
「…父さんって一番心配しそうなものじゃない?」
「確かに、この件に関しては父さんも一枚噛んでそう。」
「どうなんだ?父さん。」
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「いやぁ、本当に助かったよ!!はい、給料。今までお疲れさま、また遊びにおいで?」
「うん。たまにとは言わず、暇だからちょくちょく来るね?」
「おいでおいで!!あ、でもね、冬には来ちゃだめだよ?この店も閉まってるし俺もいないから。」
「わかった。じゃあね!!いままでありがと!!」
「うん。こちらこそありがとう。」
シルヴァンはとても優しい笑顔で私を見送ってくれた。
屋敷への帰り道に本題であるプレゼントを買っていき、
とてもウキウキして屋敷のドアを開けると仁王立ちで立っているカイルとジェル、ルゥナが居る。
私は怒って無言の三人に連れられ、リビングのソファに座らされる。
目の前には「ごめん。言っちゃった。」と薄っすら泣いているジンおじ様が座っていた。
三人のうちルゥナとカイルは私の両脇を固め、ジェルはジンおじ様の片方を陣取った。
「で?アケミ。私たちに何か言うことはあるか?」
「えっ?えっと…短期の仕事をしてました。ジンおじ様には許可を取っていました。」
「なるほど…それで?」
「えっ?うーん。楽しかった?」
「違う。なんでそんなことをしたんだ?ルゥナは寂しがっていたしジェルもアケミが居なくてイライラしていた。私も…少し、寂しかった。」
「…ご、ごめん。だって…」
「欲しいものがあるなら遠慮なく言えばいいのに…」
「それじゃあ意味なかったんだよ!自分で稼いで、みんなにお礼を言いたくて…これ…」
アケミは持っていた大きな袋をテーブルの上に置く。
「お礼の形として、私、みんなにプレゼントを買ってきたんだ。カイルにはお仕事用に万年筆、ルゥナは匂いのモノがすきだからアロマキャンドル、ジェルは前に欲しいって言ってたパズル、フォッカさんには手荒れ用のハンドクリーム、ジンおじ様にはお酒を…」
それを聞いた男一同は固まった。
「アケミ、お前、自分のモノは買ってないのか?こんな俺たちのモノで…」
「だってお礼言いたかったんだもん。このお屋敷においてくれてありがとう。」
アケミはニコニコと笑顔を振りまく。
「っちょ、父さん、聞いてない、アケミ、僕たちのために働いてたなんて…」
「俺も初めて知ったんだよ…アケミちゃん…なんていい子なんだ…」
ジンおじ様は感動して泣き始めてしまった。
「…アケミ」カイルに名前を呼ばれたのでアケミはくるっとカイルのほうを向くと
「ありがとう。大事に使う。」というお礼の言葉を言われたのまではよかった。
その後、殺人的なイケメンスマイルを向けられてしまい、アケミの顔は真っ赤になってしまった。
アケミのプレゼントは大成功した。
みんなからのアケミの好感度が上がったのは言うまでもない…。




