第一章:「倣(なら)いて歩む」
少年は顎に力を込め、それを噛み砕こうとした。だが、その生き物は奇妙なほど弾力があった。ゼリー状の体は、まるで固形になった水のように歯の間をすり抜けていく。それと同時に、氷のような冷気が口の中から溢れ出し、舌や喉を通って全身へと広がっていった。まるで魔法のように、その冷たさが喉を焼く苦みの炎を消し去り、意識を曇らせていた眩暈の霧を晴らしていく。
しばらくして、活力を取り戻した少年は、本能的な優しさを持ってその生き物を手のひらの上へと吐き出した。ゆっくりと立ち上がると、喉の痛みは消え、世界はもう回っていなかった。小さな青い塊は、傷つくどころか、以前よりも輝きを増しているように見えた。まるで少年の命を奪おうとしていた毒素を吸収することを、楽しんでいたかのように。
しかし、胃の中の空虚さは消えなかった。飢えのせいで体は弱り、足取りはおぼつかない。彼は、地面をゆったりと動き回る救世主をじっと見つめた。スライムが落ち葉の上に乗り、その透き通った体で葉を包み込む。すると、葉は少しずつ体内に溶け込み、やがて跡形もなく消えてしまった。
少年は、その光景を静かに脳裏に刻んだ。もしあの生き物があれを糧にできるのなら、自分にもできるかもしれない。
彼はその生き物の倣い、近くの植物へ手を伸ばすと、広くて青々とした葉を一枚ちぎり取った。一瞬だけ観察し、用心深く一口かじる。特別な味はしなかった。実際、無味に近かった。だが、苦くもなければ、吐き気を催すことも、舌を焼くこともない。それは、ただ純粋な「栄養」だった。
少年はゆっくりと食べ進めた。そのエメラルドグリーンの瞳は、自分を置き去りにしたこの世界で生き抜く術を教えてくれた、小さな青い生き物をじっと見つめていた。




