第11話
翌週の金曜日の出来事があり、今日の烈は今まで以上に警戒しながら、美月を学校に送り届けた。明里もかなり気を張っており、烈と明里の二人は登校するだけで疲労が蓄積。
美月も烈達の険しい雰囲気を感じ取ったのか、いつも以上に饒舌だった。きっと雰囲気を少しでも和らげようとしたのだろう。
烈が自分のクラスに入り、ホームルームの時間になると、担任の多野から全校集会があることを聞かされる。
まあ、先週のことだよな。
ホームルームが終わると、多野に連れられ体育館へ。全校集会が開かれる場合は、基本的には第一体育館を使用する。
春野校長は登壇すると挨拶もほどほどに、「先週校内で器物損壊事件が起きました」と話し出す。烈の予想通りだった。
「事件が起きたのはダンス部の部室であり、部員の持ち物が傷つけられました。幸い、部員に怪我人はおりません。現在、警察が鋭意捜査中であり……」
春野校長は言葉に気をつけながら、事件の概要を話す。まだ青薔薇の貴公子事件から完全に立ち直れていない生徒が多数いる。彼らの心情を心配しているのだ。だが、春野校長の努力も虚しく、顔を青くしている生徒が多数見られ、精神的に不安定な生徒がまた増えるだろうなと烈は予想。春野校長の白髪がまた増えるのではと、不憫でならない。
春野校長は怪しい人物を見たり、自身が犯人の場合は学校に名乗り出るようにと締めくくり、教頭と入れ替わる。
教頭は生徒に向かって、「これから全生徒の服装検査をします」と宣言。生徒にとっては抜き打ちの検査。生徒の間で「マジかよ」「スカート短くしてきちゃった」とどよめきが起きる。教頭は低い声で「静かにしなさい」と一喝。
「先週の金曜日の放課後、教師が校則に反している格好の生徒を目撃しました。教師が注意しようとしたところ、その生徒は走って逃げました。服装の乱れは心の乱れ。きちんと正しい格好をしなさい」
全校集会は終了し、服装検査へ。教師達は不満をもらす生徒達に対して、検査をしていく。検査は一クラスずつ行われ、生徒はその場で服装を直されたり、アクセサリーなどを没収されていく。
烈はベルトが少し派手過ぎると注意された。ズボンが下がってしまうため、没収まではされなかったが、明日からもっと地味なものしろと言われた。
烈が体育館から教室に戻ると、クラスメイト達は口々に服装検査に文句を言っている。後から水原も「ちくしょー」とぶつくさ言いながら、教室に入ってきた。彼は親気に烈の肩に腕を回してくる。
「なあ、剛村聞いてくれよ」
「なんだよ、暑苦しいな」
「さっきの服装検査で、お気に入りのネックレスを取られちまったんだよ」
「ああ。あの派手なやつか」
水原が今朝登校してきた時、ネックレスを首にかけていた。やたらと派手な装飾だったので、よく覚えている。
「馬鹿だなあ。あんな派手なもんつけてたら、没収されるに決まってるだろ」
「大丈夫だと思ったんだよ」
「何を根拠に」
「先週の金曜の放課後にさ、俺達と同じ学年の男子とすれ違ったんだよ。見慣れない奴だったんけど、そいつがさ、金髪にピアスや指輪をつけたかなり派手な奴でよ。あれぐらいまでなら、大丈夫なんだって思って、土曜に買って今日つけてきたんだ」
「いやいや。うちの学校は緩い方だけど、そこまでの格好は許されねえよ。つーか、教頭が言っていた生徒はそいつじゃないか?」
「あー、あいつのせいで今日服装検査になったのか。くそ、罠に嵌められた!」
「なんだよ、罠って。お前が勝手に勘違いしただけだろ」
烈は水原に呆れるが、同時に小さな疑問が浮かんだ。
うちの学校に金髪の生徒なんていたか? 金髪だったら、すぐに教師に注意されるはずなんだが。少なくとも俺は見たことないな。




