第8話
その日もあっという間に時間が過ぎ、時間帯は放課後に。今日は週の平日の最終日ということで、美月のダンス部は短時間ではあるが、部活動があるそうだ。
清稜高校には普段の授業で使う第一体育館と、一回り小さな第二体育館がある。ダンス部は第二体育館を練習場所としており、普段は他の部活動と場所を融通し合っている。だが、今日は第二体育館を使う部活動はダンス部のみであり、広々と占有していた。
「美月、何その振り付け。全然違うじゃん」
「ごめーん、ド忘れしちゃった」
「変な動きで誤魔化さないでよ」
「えへへ」
美月は他の部員と和気藹々としながら、ダンスの練習をしている。もう直ぐ大会があり、それに向けての練習だ。
烈達は部活動が終わるまで、体育館の端で美月達の練習風景を眺めている。
「いやー、まさに青春だね。眩しいよ」
明里は購買部で買った紙パックのジュースを飲みながら、そうしみじみと呟く。隣に座っている烈も「そうだな」と同意。
楽しそうに笑い合いながら部活動に打ち込む美月達の姿は、正直羨ましい。烈は中学時代の部活動を思い出す。烈が所属していた柔道部は、団体戦に出るのもぎりぎりな部員数だった。いわゆる弱小部であったが、ほのぼのとした雰囲気の部であり、常に笑いが絶えなかった。 様々な馬鹿なことをして、顧問に怒られたのはいい思い出である。
今からでも興味が持てそうな部を探してみっかな。
烈は美月達の姿から青春パワーを分けてもらいながら、自分の学校生活にもう少し彩りを加えたいなと考える。
一時間ほどでダンス部の活動は終了。ダンス部は体育館の戸締りをし、烈達も一緒に出る。
「私達部室に戻るね。ちょい待ってて」
「あいよ」
清稜高校の校庭の隅にはプレハブ小屋が並んでおり、各運動部はそれぞれ部屋が一つ割り当てられている。その一つの部屋に美月達は入っていった。烈達は体育館の前で美月を待つことに。
ダンス部の面々が部室に入って間もなく、部室から女子の甲高い悲鳴が聞こえてきた。
「キャー、なにこれ!」
烈達はなんだと顔を上げる。
「今の声、白波だよな?」
「うん、ボクにもそう聞こえた」
「まさか……!」
烈は美月の身に何かあったのだと部室へ走り出し、ドアノブに手をかける。
「烈くん、待ちたまえ。彼女達は今……」
烈の後を追ってきた明里が制止するが、烈は聞く耳を持たずドアを引く。
「白波、何があった! 大丈夫、か……」
烈の声は次第に萎んでいく。明里の制止の意図が遅れて理解できたからだ。
部員は練習で使用していたダンスウエアから着替えようとしている最中であり、そこに烈がまさに飛び込んできた形。部室の中に短い沈黙が流れ、すぐに部員達の悲鳴が轟いた。美月の時よりも数が多く、何倍もの声量だ。
「す、すまん!」
部員達から投げられる様々な物を避けながら、烈は慌てて謝罪。すぐにドアを閉めた。
「……やっちまった……」
ダンス部の部員達は練習で汗をかいていた。その彼女達が部室に入ったのだから、着替えるためと少し考えれば分かるはず。
己の浅慮を恥じる烈。そんな烈に対し、明里は盛大にため息を吐き、頭を振ってみせた。
「おバカだな、君は」




