第6話
美月の護衛を引き受けた翌日。今日から美月と一緒に登校することに。
先に明里と合流してから、美月の家へと向かう。家の前まで来ると、明里が到着した旨のメールを美月に送信。返信がすぐに来た。
「まだ準備ができていないから、もうちょっと待ってて。まじメンゴ、だってさ」
「白波の家は学校から遠いんだから、早く行かないと遅刻するぞ」
「まあまあ。女の子は男の子と違ってやることが多いんだよ。気長に待とうじゃないか」
明里に宥められつつ烈が待っていると、玄関の扉が開いた。ようやくお出ましかと、目をやると玄関から出てきたのは中年の女性だった。
「あら、美月のお友達かしら?」
美月の母親はスーツ姿であり、これから出勤するようだ。明里は「おはようございます。お母様」と丁寧に挨拶し、烈は「どうも」と軽く頭を下げる。
「美月、お友達が来てるわよ。早くしなさい! お友達も一緒に遅刻させる気!」
美月母が家の中に呼びかけると、奥から「ちょっと待って、ちょっと待って。髪のセットあと少しだからぁ!」と騒がしい声が返ってきた。
美月母は娘に呆れ、「ごめんなさいねえ、うちの愚女が」と烈達に謝罪。烈達は曖昧な笑みを浮かべる。
「ったく、美月の方は友達が多いけど、ルーズなところがあってねえ。学校で迷惑をかけていないか心配だわ」
「あのお母様。美月さんから聞いたのですが、最近嫌がらせを受けているそうですね?」
「え、ええ」
「昨日や今日も何か嫌がらせがありましたか?」
「あったわ。今朝はゴミが玄関に捨ててあったし、暴言が書かれた張り紙などもあったわ」
「その張り紙、見せてもらえますか?」
「別にいいわよ」
美月母は玄関の靴箱の上に置いていた張り紙を手に取り、明里に渡す。
「あはは、これは……」
張り紙を見た明里は苦笑い。烈も「汚い字だなあ」と感想を漏らす。張り紙には赤い字で色々と書かれているのだが、かなりの悪筆で半分しか読み取れない。下女や売女、サゲマンなど書かれており、どれも女性を軽視する表現からおそらく美月に向けられたものだろう。
明里は「一応、撮影しておくか」と、スマートフォンで文面の画像を保存。美月母に張り紙を返す。
「あ。もしかして、君達が美月の護衛をしているって子達?」
「はい、そうです。昨日、美月さんから相談を受けまして」
「面倒事に付き合ってもらって、申し訳ないわ」
「いえいえ。むしろ、大好物です」
「大好物? ふふふ。お嬢ちゃん、あなた面白い子ね」
「よく言われます」
美月母は明里のことを気に入ったらしい。面倒事に自ら首を突っ込む明里のような人間は、確かに興味深いだろう。だが、毎回のように振り回されている烈からすれば、美月母の評価は見直した方がよいと言いたい。
「ごめんごめん、お待たせ!」
ようやく準備を整えた美月が家の中から飛び出してきた。美月母は自分の娘の頭に「こら!」とゲンコツを落とす。
「いった! 何すんの、ママ!」
「何すんのじゃないでしょ! お友達を待たせて!」
「それは悪かったと思ってるよ。二人とも、早くいこ!」
美月は烈と明里の手を取り、ダッシュ。烈達は美月母に会釈し、美月と共に学校に向かった。
学校にはなんとか間に合い、美月は「あかりん、れっちん、また放課後でね」と手を振りながら、自身のクラスへと入っていった。
「登校する時は何もなかったな。怪しいやつもいなかった」
「おそらく、ボク達の他に通勤、通学する人間が多く、人目につくことを嫌ったんだろう。あとはボク達が一緒にいることも、手を出さなかった要因じゃないかな?」
「護衛の成果は一応出ているってことか」
「さて、ボク達もそろそろ自分の教室へと入ろう」
「ああ。じゃあ、また放課後にな」
烈は明里と別れ、自分の教室へと。間もなく、担任の多野が入ってきて、朝のホームルームが始まる。多野の話を聞きながら、今日の登校中に何も危険なことが起きなかったに安堵。常に気を張っているのは、疲れる。これがどのくらい続くのか、今から憂鬱になる烈であった。




