158話
「そうですか………やっぱり駄目ですよね」
「けどまああんたたち二人に支援をすることは約束しよう」
頭を垂れていたアカリが顔を跳ね上げた。
「どういうことでしょうか!」
「ちゃんと説明するから落ち着いてくれ」
「ちょっとびっくりはしましたけど落ち着いてはいます」
「あんたの娘のほうのことだ」
「あ!」
スイセイの髪の毛が下敷きを頭に擦り付けたみたいに逆立っている。普通の人間なら恐怖を感じるぞ、家の壁に穴をあけたやつがそんな感じでいたら。
「大丈夫よスイセイ、落ち着いて」
背中をさすることで髪の毛がゆるやかに下がっていく。
「落ち着いてきたので続きを喋っていただいても大丈夫そうです」
「まだだ。まだ目がさっきよりも鮫の目だからもう少し落ち着かせてからにしよう」
「さめのめ?」
どうやら母親のアカリは鮫を知らないようだ。
「気にしないでとにかく落ち着かせてくれ。なんならまた撃ってきそうな感じがする」
「落ち着いて、大丈夫だから落ち着いてスイセイ」
うーん。かなりの激情型だな、これのどこが神の子なんだ?神様の子供だったらもっと精神的に落ち着いているべきだろ。どうだろう、ある程度落ち着いてきたか?
「まずとりあえずさっきの話ではスイセイひとりだけで王都に行かせたいという話だったがアカリ、あんたも一緒に来てもらう。それをしなければいけない理由は金だけだ、金なら俺が出すからそうすればふたりが王都で一緒に生活ことができるんだ」
「そんなこと、本当にいいんですか?」
「もちろんだ」
というか是非とも一緒に来てほしい。そうじゃないとスイセイをコントロールすることができない。何か問題が起きるたびに魔弾を撃ち込まれても困る。
「たしかにさっきの話の通り戦闘に関する才能はかなりありそうだから金を貸したとしても将来的に返すことは問題ないだろうと思う。戦闘職は命がかかっている分、報酬は高いからな」
「ありがとうございます」
才能があると言われてほっとしているようだ。
「王都にはこの国で一番施設のいい病院があるからそこであんたも病気を診てもらうと言い。コネがないと普通は診てもらうことすら難しいんだがそのコネは俺がもってるから大丈夫だ。治療費もすべて俺が貸し付ける。すべて無利子無期限でいいぞ」
「そんなことまでしてもらっていいんですか?」
「ただし条件がある」
「条件………」
アカリの顔が分かりやすく不安に染まる。
「感謝すること」
「ぽむぽ?」
「ぽむぽ、じゃなくて感謝すること」
「感謝すること、ですね。すいません、予想外過ぎて変な声が出てしまいました」
「約束できるなら支援を約束しよう」
「感謝、それだけでいいんですか?」
「ただし死ぬまでずっとだ」
「はぁ………」
分かってない顔をしているがこれが俺にっては重要なことだ。
「そして俺に迷惑をかけないこと。親子二人ともずっと、だ。これができるなら支援させてもらおう」
「そうなんですか?助けていただけるのであれば、もちろん感謝はさせていただきますし迷惑をかけようなんて思うはずありません」
「繰り返しになるがそれはふたりとも、だ。もしスイセイが感謝の心を忘れているようならあなたが注意してほしいし、迷惑をかけようとしているなら止めて欲しい、約束できるか?」
「………はい、もちろん」
少し考えてから言った。
「それじゃあ支援を約束しよう。それじゃああなたは一刻も早くまともな施設がある病院に行ってくれ」
「え!すぐですか?」
「すぐだと何か問題があるのか?放っておいても治らない病気はさっさと医者に見せたほうがいいと思うんだが」
「あ、いえ、なんだか少し驚いてしまって。病院に行くことについてはありがたいと思っています」
「村長!」
「はぽん!」
急に話を振られた村長が驚いて少し飛び上がった。
「何でいちいち驚くんだ」
「すいません。いつもはこうはならないんです。声の大きさで行ったら村の男共、まあ女でもですが、そいつらのほうが声は大きいんですが、なんだかサブレさんが言うことにはすごく驚いてしまうんです、緊張ですかね」
頭を掻きつつ照れたような笑顔を見せた。
「ああ、そのことなら俺に少しだけ心当たりがある。真偽は定かじゃないんだが強力な魔力を持っているやつの言葉には魔力の痕跡があるんだと。だから戦場でも魔力を持っている人間の声はよく響くんだと」
「なるほど、初めて聞きましたよ」
「それはいいとして本当ならすぐに王都の病院に行ってもらいたいところだが、この村からは距離があり過ぎて到着する前に病気が悪化しないとは限らない。近場で施設の整った病院のある街はどこだ?できるだけすぐにその街に行けるように手配してくれ」
「そのことなのですが非常に難しいのです」




