159話 -指令-
「何がだ!」
「きうい!」
またしても問題発生の予感がする村長の言葉にイラっとして思わず大きめの声をあげてしまったが、それに驚いた村長が俺以上の大きさの声で驚きの声をあげたことで、イライラはさらに上昇した。
「なにが問題なんだ」
村長が怯えた様子を見せたのでひとつ息を大きめに吸ってから声を抑えて問いただす。
「実は今夜この村に盗賊団がやって来ることになっているのです」
「はあ!?」
なんでこうも俺に面倒事が降りそそぐんだ。ありえないだろ本当に。
「申し訳ありません」
「そんな大事なことは先に言えよ。もうすっかり陽が落ちてあたりが暗くなってるだろ。これじゃあ今からほかに移動することもできない」
「すぐ言わなければいけなと思ってはいたのですが、なかなか言いづらくて………そのうちにアカリがやってきてますます言えなくなってしまって」
自分でも思ってたよりも大きなため息が出てきた。
「待てよ………いまから馬車を動かして野営に切り替えるという手段も」
言いながら辺りを観察する。
「まあ冗談だがな」
鮫の目が光った気がした。
「冗談だったんですね」
アカリがほっと胸をなでおろす。
「困った状況でこそ冗談が大切だ」
「なるほど、さすがです」
アカリは納得しているようだが、ほかのメンツはそうでもない。Aランク冒険のクロギンウの奴らは嘘つけマジで見捨てていくつもりだっただろ、っていう顔をしている。
本音で言えばもちろんそうだ。俺は正義の味方じゃない。基本的に自分のことは自分でやるべきだと思っている。しかしながら今回は別だ。さすがにアカリとスイセイが育ったこの村を簡単に見捨てたら極悪人扱いされて今後の俺の人生に影響が出る。
俺のプランとしては将来の敵になりそうなスイセイのことをアカリを使って食い止めるつもりだ、モルンを使ってウミカを止めるように。そのためにはいくら面倒だとは言ってもここは処理しておかなければならない。
「とは言いましても向こうが要求してた食料は用意できていますので、これを渡せば何事もなく終わるかもしれません。しかししばらくは警戒のために男手を村に残しておかなければなりませんので、病院のある街への案内などはできない状況です」
「うーん………クロギンウはどう思う?」
「なんで俺たちに聞くんだ」
「俺は盗賊なんか見たことはないから、向こうがどんな行動をしてくるのか判断できない」
「だそうだ、みんなはどう思う?」
リーダーのヒグロが聞く。
「盗賊の言うことなんか信用できない」
「そのまま素直に帰ってこれっきりってことはないだろ。なんだかんだ言ってきて一生毟り取るつもりだなきっと」
それぞれの考えを聞いているとやはり盗賊というのは俺がイメージしていた通りの奴らだということが分かった。
「やつらはいつ来るんだ?」
「時間については言っていませんでした、ただ今日の夜に来るとしか。村の外に怪しいものが無いか猟師に見張らせていますが今のところ何も言ってきてないということはすぐには来ないものと思われます」
面倒くさい。
「こっちから潰しに行くか」
俺は言った。
「悪くない手だが相手の居場所は分かっているのか?」
俺が知るはずないだろう。この村に来たのも今日だし盗賊について知ったのも今日だ。移動中はほとんど馬車の中にいたから周りの様子なんか見ていない。
「それについてだいたいの場所は分かっています。近くにムラヒ山という石ばかりの山があるのですが、夜はそこを寝床として使っているようです。焚火の光が見えますし騒ぐ声も聞こえてくるので間違いないと思います」
「だったら問題は無いな」
「向こうからやって来ると言ってるんだから待っていればいいんじゃないのか?」
「ただでさえ俺は待たされることが嫌いなのに盗賊なんか待ってられるか。いつ来るのかないつ来るのかな、って気持ち悪いだろ、初めてのデートじゃあるまいし。俺ら他丁度来るタイミングで盗賊なんかしやがって面倒くさい。死ぬほど驚かしてやるよ。向こうはまさか責められるとは思ってないはずだから向こうは油断している。今がチャンスだ」
「まあそれは一理あるな」
「それにこの村で戦うということは村に被害がでるかもしれない。この村にはお年寄りも子供もいるんだ、そんな危険を冒すわけにはいかない」
いい人アピールをしてみる。
「あっそ」
あっそじゃねーよヒグロこの野郎。
「よしそれじゃあ行ってこいクロギンウ!盗賊どもを血祭りにあげてこい」
俺は指揮官らしくビシッと指をさした。




