157話
「はうあ!」
壁にできた丸い穴を見た村長が素っ頓狂な声をあげた。
「駄目じゃないスイセイ。人様に向けて撃ったら」
「………………」
「ちゃんと外した、じゃなくて窓を開けて外に向かって打つのかと思ってたよ私は」
「………」
「すいませんサブレさん、驚きましたよね」
驚くにきまってるだろ。爆音と生暖かい突風がきて後ろの壁を打ち抜いたら。というか当たってないよな、なんだか頬がピリピリするような気がするんだけど。
「なかなかやるようだな」
言った後で何を格好つけたとを言っているんだ俺は、と自分でも思う。けどなんだか負けたくなかった。スイセイの野郎めわざと俺の横すれすれを狙って撃ちやがったな。そんなことをする奴に対して驚いてるとか怖がってるなんて思われたくなかった。俺より明らかに年下だし。
魔道具を使わない魔弾。
今これを実践で使うやつはほとんどいないと言われている技だ。なぜならば効率が悪いから。魔銃があれば同じことを半分以下の魔力消費量でこなすことができる。俺が使う「飛燕」は短剣を通すことで斬撃の属性を持った魔力を飛ばす技だが属性を持たずに破壊するのが魔弾の特徴だ。
いまスイセイに魔銃を持たせればかなりの威力を出すことができるはずだ。驚かされはしたがこれは収穫だ。
鮫の目を持つものは危険、そう考えて間違い無いだろう。ウミカに続いてふたり目、2/2の確率で普通じゃない戦闘的才能を持つ人間を発見してしまった。しかもなぜかウミカは俺に対して敵意的なものを持っているし、このスイセイも現時点で俺に対していい感情を持っていない気がする。そうじゃなかったらわざわざ俺のいるほうに向けて撃ったりはしないだろう。
おかしい、俺が一体何をしたっていうんだ。今のところわざわざ時間を割いて話を聞いているんだぞ。
「実はスイセイは以前これをひとに向かって撃ってしまったんです」
「は?」
「その人は行商人で以前から私に対して執拗に言い寄って来る質の悪い人だったんですが村にとって必要なものを持ってきてくれるのであまりはっきりと断ることができませんでした。それで一年ぶりにやってきて来た時にはいつにもまして強引で私は思わず大声をあげてしまったんです」
「それで撃ったのか」
「はい。最初は何が何だか分からなかったんですけどスイセイが自分がやったと………」
「殺したのか?」
「いえ、その行商人は用心のために旅の間はいつも分厚い胸当てを付けていたので。それに当たったので無事でした、胸当ては大きくへこんでしまったのですが」
「胸当てか………」
今度からは俺も付けるようにしよう。
「それ以来村の人の中にはスイセイを怖がる人もいて」
「まあそうだろうな」
壁に綺麗に丸く開いた穴を見る。かなりの威力が無ければこうはならないはずだ。子供がそんな力を持ってると知ったら怖いと思う人間もいて当然だ。いつどんなタイミングで撃たれるか分かったもんじゃない。しかも全くしゃべらないし鮫の目だし。
俺はまだ対抗できる手段を持っているから恐怖を感じると言ってもそれは将来を見据えた時の話だが、魔臓のない一般人だといま目の前にある恐怖。家の壁を完璧にぶち抜くくらいの攻撃力だから、くらったらまあ死ぬよな。
「そのこともスイセイをこの村から離したい理由でもあるんです。王都だったらこことは違って人口も多いですからまぎれるんじゃないかと思いまして」
「そうか!」
「どうしたんですかサブレさん」
「さっきスイセイが俺に向けて撃ってきたのが謎だったんだ。それが今の話を聞いてわかった。多分その行商人のせいで、知らない男に対して嫌悪感を持っているんじゃないかと思う」
「なるほど」
「そうじゃなかったおかしいだろ」
「そうですね。スイセイ怖がらないで、大丈夫よ」
撃たれて怖い思いをしたのは俺のほうだけどな。
「それでサブレさん。さっきの私の話なんですけど」
「それについては却下だ」




