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151話 -料理人のケイちゃん-

 


「みんなーご飯できたよー」


 塀からのぞく美女に笑顔で手を振り返した後でヒグロは交代で寝ているメンバーを起こすことを始めた。


「ふわー」


 伸びをして体をほぐす。それが第1目標だが、第2目標としては手を上にあげることで捲れ上がった服からのぞく腹筋を見せつけるためだ。


 夜は魔物の活動が最も活発になる時間帯、今回の旅は今までで初めてと言っていい襲撃の多さで体が怠い。しっかりと寝ているはずなのだが常に寝不足状態だ。


「めっちゃうまそう、ケイちゃんは本当に料理が上手だなぁ」


「そんなこと言ってまだ一口も食べてないじゃないですかぁヒグロさん」


 笑いながらの肩へのタッチに顔が蕩けている。


「俺は鼻がいいからねすぐわかっちゃうんだよ、これは美味しいに違いないって。それにケイちゃんの作ってくれる料理は毎日おいしすぎるから信頼しすぎちゃってるんだよね」


「ほんとう?うれしい」


「いやー朝からこんなにおいしものを食べられて幸せだなぁー」


 そういってヒグロは柔らかそうな湯気をあげているスープをすすった。


「やっぱりうまい!」


「うれしい!」


「みっともない顔をするなよヒグロ」


 隣に座っているダンクが顔をしかめる。


「なんだよお前は気に入らないってのかケイちゃんの料理が」


「そんなこと言ってねえだろ。朝から声がデカすぎんだよお前は」


「ちぇっ、なんだよ格好つけやがって」


「ふたりともケンカはやめてよもう」


「ケンカじゃないケンカじゃない、これくらいいつものことなんだよ。子供のころからずっとだから気にしないでよ」


「それだったらいいんだけど皆さん本当に仲がいいんだね、ちょっとびっくりした」


「なににびっくりしたの?」


「なんていうか仕事でずっと一緒にいるグループって必ず仲が悪い人とかがいて、仕事だから仕方なく集まってるみたいなイメージがあったから」


「ああたしかにそういうパーティーは多いよ。そういうやつらってちょっと調子が悪くなると簡単に解散したりするんだよね。外から見れば十分に上手くいってる時でもさ。けど俺たちは子供のころからずっと一緒だから信頼が違うよ」


「えーなんかうまくいくコツみたいなのってあるんですか?」


「お互いに干渉し過ぎないことかな」


「へぇ………」


「なにか揉め事があった時には無理に解決しようとするんじゃなくって放っておく、それが一番いい解決策だったりすることもあるんだ。もちろんちゃんと解決しなくちゃいけないこともあるけどね。その見極めが大事かな」


「すごーい!さすがAランク冒険者のリーダー。やっぱり結果を出している人って違うなー尊敬しちゃう」


「俺なんか大したことないよ、仲間に恵まれただけさ」


「かっこいいー!」


「そう?そうかな?」


 ヒグロはこの上なくだらしない顔で大きく笑った。


「私がお店開いたら絶対来てね、Aランク冒険者のみんなが来てくれたら絶対評判になると思うから」


「いくいく絶対行くよ。もうさぁ毎日ケイちゃんの料理食べてたからケイちゃんの料理を食べないと生きていけない体になってるんだよ」


「うれしー、ありがとー」


 体をくねらせているケイを見てより一層ヒグロの顔がだらしなくなった。


「ところでサブレ」


 ひとつ咳払い。


「あんたに聞いておきたいことがあるんだがいいか?」


 ダンクが落ち着いた声で言った。


「なんだ?」


「今回の仕事は明らかにおかしい」


「おかしいって何が」


「敵の質の量も明らかに俺たちの今までの経験で考えるよりも一段か二段は上だ。本当はこの仕事、俺たちじゃなくBランク冒険者のバルトに頼むつもりだったらしいって聞いたぞ。普通ならそれでも十分すぎるはず、それなのにサブレ、あんたの要望でさらにそれ以上の冒険者が必要になったって聞いたんだが本当か?」


 場の空気が静まっていた。


「ああ本当だ」


「ってことはこの仕事は厄介なことが起きるってわかってたってことだよな?」


「ああもちろん。俺は呪われた魔道具を持っているからな」


 そういってサブレはドクロの指輪をかざした。


「ひやぁ!」


 ケイが隣に座っていたナギックに抱き着く。


「なんでそんなもん持ってんだよ、いますぐ外せ!」


 ヒグロが一歩飛び退き、身構えながら言った。


「呪われた魔道具だって言っただろ、そう簡単に外せたら誰も困らない。これは災いを呼ぶドクロなのさ」


「外せないのか?」


「それが呪いの魔道具ってもんだ」


「サブレさんはなんでそんなに落ち着いてるんですか?!」


 ケイの目は潤んでいる。


「慌てふためいたってどうなるものでもないんだよ。外れないものは外れない。だったらそれを受け入れるしかないだろ」


「あ、なるほど」


「納得してる場合じゃないよケイちゃん」


「なぜそれを最初に言わなかった?災いを呼ぶドクロ、冗談じゃない。層を分かっていれば引き受けたりはしなかった。あんたはそれを分かったうえで俺たちに何も言わずに依頼したってことだよな。これからは慎重に口を聞けよ、ことによっちゃその首は胴体から離れるぞ」


 ダンクの手には鞘に収まった剣。


「なぜそんなことを言わないといけないんだ?」


「あ?」


「いや、本当に分からないんだ、教えてくれ」


「なにいってんだお前。そんなもん言うのが普通だろそのせいで俺たちがどれだけ苦労していると思ってる。死んだとしてもおかしくないんだぞ、金持ちは人の命なんかなんとも思わないのか!」



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