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149話 -クルーン-

 


 ビィーン。お金を入れた途端に「ドラゴンクルーン」は今までよりも強く光りだした。


「これは危ないものじゃないんだよね?」


 不安になった僕は聞いた。


「大丈夫。前は何回もやってたけど一度も危険な目には合ったことはないよ。やり過ぎて怒られたことは何度もあるけどね」


「え?」


「そんな不安そうな顔しないで、適度に楽しめば大丈夫だから。今はあの時よりも大人になってるから一日中やっちゃうことなんてないと思うから」


 一日中?なんだか不安になってきた。


「とりあえずここにある丸いのを掴んで右に回すんだよ」


 そういってシロロは右下にある出っ張りを握って回した。


「あ!」


 台の左側から銀色の玉が勢いよく飛び出してきた。


「これがさっき言ってた玉なの?どんどん出てくるよ」


「そうだよすごいでしょ」


 台の音に負けないようにシロロが少し声を大きくしていった。


「この玉をね、ここの「GO」って書いてあるところにまず入れるところからスタートなの」


「っていうことはまだ始まってないんだ」


「そういうこと」


 真剣なまなざしでどんどん玉が出てくるけどまだ「GO」と書かれたところにある隙間には一個も入っていない。その周辺にたくさんある金色の釘が玉を弾いてしまっていて入るのを邪魔している。


「全然はいらないよ」


「そんなにがっつかないで、そのうち入るから」


 がっつく、って言い方はなんかちょっと嫌だな。


「ほら入った!」


 見ると確かにひとつの玉が今までとは違って回転している赤い仕掛けのところに落ちてくるくると回っていた。


「これでどうなるの?」


「赤いやつに隙間があるでしょ?その隙間を通って玉が正面にある穴に落ちればいいの。左右に落ちて行ったらハズレ」


「あ!真ん中の穴に落ちたよ」


「一発目からこれは相当運がいいよ。やっぱり今日は調子がいいと見た!」


「また玉がくるくる回ってる」


 今度は透明なすり鉢状のところを玉が回っているんだけど、そこには3つの穴が開いていて、玉が勢いを失えばその3つのうちのどれかには落ちるような仕掛けになっているようだった。


「そう。あそこに穴が3つあるでしょ?そのうちの手前の穴に玉が落ちれば次に進めるの。残りの2つに落ちちゃったらハズレ」


「あ、駄目だった」


 玉は後ろにある2つの穴のうちの左側に落ちてしまった。


「まあ3分の1だからしょうがないね。また「GO」のところに玉を入れるを目指すところからスタートだよ」


「ちょっとまってシロロ」


「どうしたの?」


「赤いやつの下には3つも同じのがあるよ。これを全部入れないといけないってこと?」


「そうだよ」


「えぇ………」


 なんだ入る気がしない。こうしている間にも玉はどんどん左側から飛び出してきているけどひとつも「GO」のところに入っていない。全部が釘に当たって弾き飛ばされている。


「これがひとつ4ゴールドなんでしょ。どんどんお金が無くなっていくよ」


 ウミカの冷めた声。


「確かになんかすごくお金を無駄遣いしているような気がする」


「気がする、じゃないよ「している」だよ」


「入った!」


 けれどすぐに玉は赤い回転している場所で右に流れていってしまった。


「ダメだったね」


「うん。けどこんなの当たり前だから気にしないで、とにかく打ち続けることが大事なんだよ」


「この一番下にある大きな穴に落ちたらもう戻ってこないんだよね」


「もちろんそうだよ。ギャンブルってそういうものだから」


 4ゴールド、4ゴールド、4ゴールド………玉はどんどん一番下に吸い込まれていく。100ゴールドあれば屋台の串肉とかパンとかいろいろ買えるものはあるから、それが無くなっていくことに対してすごい罪悪感を感じてしまう。


 けれどシロロには全くそんな様子はない。目を輝かせながらただひたすらだいと向き合って玉の行方を見ている。


「この3段目の透明な奴、クルーンっていうんだけど、これの手前に玉が落ちれば大当たりで1万発も玉が出てくるんだよ」


「一万発!?」


「そうだよすごいでしょ!」


「ということは4万ゴールドっていうことだよね。ちゃんと子の台からお金が帰って来るの?」


「もちろんそうだよ、いつでもお金は戻って来るから大丈夫」


「すごい」


「そうでしょすごいでしょ!だから4万ゴールド使い切るよりも早く大当たりをひくことができたらあっという間に入れたお金は帰って来るんだよ。それに当たった時の嬉しさったらないんだよ。頭がぼーっとなってじゅわーってなるの。私はたくさんの人にパチンコの楽しさを知ってもらいたいんだ。だからこれはここに置いておいて誰でも気軽に遊べるようにしたいんだ」


 夢を語る子供のような表情だった。


「楽しそう」


「すっごく楽しいよ」


 何だか僕もやってみたくなってきた。当たれば4万ゴールドになるなら最初に入れた1万ゴールドなんて全然大してことが無い金額に思える。仕事だったら一日中大変な思いをしてやらなきゃいけないのに、これだったらあの3段目のクルーンの当たりの穴に落ちれば一瞬だ。


 そして何より楽しそう、楽しいことでお金が手に入るなんて最高だ。台の外側にある龍の飾りが音と光で僕をギャンブルの世界に誘ってくる。


 これがドラゴンクルーン、これがパチンコ、これがギャンブル。シロロが言っていたようにこれをやっている間はつらいことを忘れることができそうだ。


 やってみたい。


 僕なら上手いこと3段目の当たりの穴に入れることができるんじゃないかと思えてきた。そしたら4万ゴールドだ、4万ゴールドがこんなに楽しみながら簡単に手に入るってどんなに嬉しいことだろうか。何を買おうかな、ここ最近はいろいろあったから思い切って普段やらないような贅沢をしてみたい。


「しかもこれだけじゃないんだよ。なんと一発の玉の値段を変えることができるの」


「どういうこと?」


「いまこの玉は一発4ゴールドだけど40ゴールド、400ゴールド、そして無制限にも変更することができるんだよ」


「ということは………」


「そう!大当たりした時に出てくる玉もその値段だから40万ゴールド、400万ゴールド、そして1億ゴールドにもなるの!」


「ええぇ!?玉がひとつあそこに入るだけで1億ゴールド!家でも何でも買えるよ、本当にすごいね」


「ふっ、ふっ、ふっ、どうやらモルンにはギャンブルの楽しさが十分に伝わったみたいだね。モルン、合格だよ」


「ありがとう」


 嬉しくなってついお礼を言ってしまったけど合格ってなんだろう。


 ちらっとウミカの表情を見てみるとお面みたいだった。ウミカにはこれの楽しさが全く伝わっていないみたいだった。


「こんなの絶対当たらない」


 目が鋭い。


 何も言ってなくても僕に対して絶対にダメだぞ、と言っている。


 僕がパチンコを打てる日はくるのだろうか?




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