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146話 ー魔人のジンー

 


「ちょっとシロロ、いまの何?」


「何って魔道具だよ、見たことないの?」


「魔道具か………なんかすごい普通じゃない感じだったから驚いたよ。なんか黒い雲が出てきて青い人も出てきて」


「でも魔道具って普通じゃないことが起こるものじゃない?だから魔っていう文字が入ってるんだと思うけど」


「なるほど………」


「何も起きなかったら魔道具じゃなくてただの道具じゃん」


「そういわれてみればそうかな」


 僕が持っているナイフの魔道具ノアにしてもウミカが持っている嘘を見抜く眼鏡にしても普通じゃない力を持っている。


「魔法ってそういうものだった」


 冷静に考えてみればサブレさんもそうだ。さっきまでいた建物もサブレさんが土魔法で作ったものだ。あまりにも見慣れ過ぎているので最近は驚かないところまで来てしまっているけど普通に考えれば凄いことだ。


 これが火魔法だったら火を使ったとんでもないことが起きるし、水魔法なら水の凄いことが起きる。僕が使っている身体強化だって普通じゃない力を出すことができる。ノアだって普通の人間よりもしゃべりすぎなくらいしゃべっているわけだし。


 そう考えてみればさっき起きたこともそれほど変なことじゃないのかもしれないと感じてきた。僕たちが知らないだけで魔道具っていうのはきっとああいうものなんだと思う。


「でしょ?」


「けどそれなら最初に言ってくれればよかったのに、いきなり始まったから驚いたよ」


「そうなの?ごめん。別にほかの人に害を与えるような魔道具じゃないから別にいいかと思ってた。驚かせてごめんね、私は前にも見たことがあって慣れちゃってたから他の人がどう思うか考えてなかった」


「驚いただけで別に何もなかったからいいんだけどね」


「ウミカもごめんね驚かせちゃったね」


「いまでもまだ驚いています」


 いつの間にかウミカは僕の背中から離れて横に立っていた。


「魔道具ってそんなに大きな変化が起こるものなんですか?さっき何もなかったところにあのピカピカ光ってるのが突然現れたんですけど」


「え、わかんない。私はあんまり魔道具に詳しいってわけじゃないんだけど魔道具ってこういうものじゃないの?」


「いえ、そう言われると私も魔道具には詳しくないので分からないんですけど。なんだか思っていたよりも凄かったので」


 僕も分からない。魔道具というのは基本的には高いものなので誰でも簡単に手に入れれるようなものじゃないんだ。サブレさんもあまり詳しくない、みたいなことを言っていたし。


「確かにすごかったよね、その魔道具ってどういう効果がある魔道具なのか聞いてもいいの?」


「うんいいよー駄目だったら最初から見せないしねー」


 そう言われてみればそうだ。内緒にしたいのならはなからこんな間近で見せたりはしないだろう。


「これは魔人を呼び出す魔道具なんだー」


 そういってドクロの数珠をひらひらと振って見せてくれる。


「魔人!?」


 よくわからないけどなんかすごそうな響きだ。


「大丈夫なのそれ?」


「魔人って言っても私が勝手にそう呼んでるだけだけどね」


「え、そうなの?」


 恐怖を感じて強張った体が一気に緩まっていく。


「人間のおじさんみたいな感じがするけど肌はめっちゃ青いから絶対違うなーって思ってたところで魔人っていう言葉を本かなんかで見たんだよね。そしたらピッタリだな、って思ったんだよね。人っぽいけど人じゃない願い事を叶えてくれる青い人ってすごく魔人っぽいじゃんって。魔人っぽくない?」


「魔人っぽいね」


 言われてみればかなりしっくりくる呼び名だ。


「魔人のジン」


「それってシロロが名付けたの?」


「違うよ、前に聞いたんだよ。名前はなんですかって、そしたらジンっていったの」


「へーそうなんだ。てっきり魔人だからジンっていう名前なのかと思った」


「マジ!?天才じゃない?」


「なにが?」


「魔人だからジンってめっちゃ面白いんだけど」


「そうかな?」


「えーめっちゃ面白いよ」


 さっぱりわからない。わからないけどシロロが大きく笑ってくれているのでなんだかうれしい。自分が面白いことを言って笑いをとった気分だ。


「名前とかはいいんですけど」


 ウミカが言う。


「そうかな、名前ってめっちゃ大事だと思うけど」


「大事だとは思いますけどもっと気になることがあるんです。さっきシロロさんが言ってたことがどうしても気になるんです。あの魔人ってなんでも願いをかなえてくれるんですか?もしそうだとしたらとんでもないことですけど」



 そうだ、大事なのはそこだった。僕は妹が言っているのを聞いて初めて気が付いた。なんでも願いをかなえてくれる魔人、まるでおとぎ話の世界だ。



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