141話 -張り手-
「悲鳴!」
ミーラさんが言った。
「どうしたの?」
「いま、悲鳴が聞こえた」
「そんなの僕は全然聞こえなかったよ、ウミカはどう?」
「私も聞こえなかった」
僕たちはスープが煮えていくのを見ながらジャガイモの皮とかをゴミ箱の中にいれたり、使ったまな板を洗ったりの片づけをしていた。
「なんか嫌な予感がする」
ウミカが言った。
「僕もだよ」
イゴセさんはさっきの子供たちを孤児院に送っていくために今はいない。なんか胸騒ぎがした。
「行ってみよう」
「え?!これはどうするの?」
ミーラさんがスープを指さす。さっきジャガイモをひとつ取り出して箸を通してみてに煮え具合を確かめてみたけどまだもう少しかかりそうだった。
「うーん………それじゃあ火を弱めていくのはどう?それなら出来上がるのも遅くならないし、ちょっと行ってみてくるくらいなら大丈夫だと思うよ」
「火をつけっぱなしで出るのは危ないよモルン」
「そうだね、たしかにそうだった」
「ミーラさんはここに残ってください」
「ちょっと待ってよウミカさん、私はこの建物に今日初めて来たんですよ。始めてきた場所で一人取り残されてたった一人でスープを見ているのは寂しいですよ」
ミーラさんは年下のウミカに敬語だ。完全にあの病室での出来事が後を引いているのが分かる。
「わかった、それじゃあスープの火を消してみんなで一緒に行こう」
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扉を開けたけどそこには何もなかった。
「あれ?」
てっきり何か事件が起きているのかと思った。
「そうじゃないよモルン、もっと離れた違う場所」
ミーラさんが言った。
「私のちょっとした特技なの、まあスキルって言ってもいいんだけど。悲鳴はもう聞こえなくなってるけどいろいろな人が騒いでいる声が聞こえるから多分そこだと思う、私についてきて」
「分かった、けど慎重に進もう。何が起きているのかさっぱり分からない。ウミカもいいね?」
「わかった」
「それじゃあこっちよ」
僕たちは走ってミーラさんの背中を追いかけた。さすがに身体強化が使えるだけあって早い。景色がグングン流れていく。
「ほらあそこ!」
ミーラさんが指さす方には人だかりができていた。
「ここからは慎重にいこう」
「大丈夫、ほかの人たちが逃げてないからきっと何もないはず。それよりも早く言ったほうがいい。あの足の隙間から見えているのはイゴセさんが来てたズボンの色とそっくりだから」
「わかった、それじゃあ急ごう」
僕たちは速度を緩めることなく人だかりのところまでついた。
「イゴセさん!」
人だかりをかき分けていくとウミカの言った通り倒れていたのはイゴセさんだった。
「イゴセさん!」
肩を揺らしてみたけれど反応がない、どうやら気を失っているみたいだ。
「モルンどいて」
「え?」
半ば強制的にウミカは僕をどかして左手でイゴセさんの背中を支えた。そしてひとつ深呼吸すると思いっきり頬を張った。
「バッハ!」
「ちょっとウミカ、強すぎだよ」
イゴセさんは叫びながら瞼を開けた。どうやら気が付いたみたいだ。けどもその代償としての鼻の左側から滴のような血がぽたりと落ちた。
「は、お前たち。そうだ、あいつらは」
周囲を見渡す。
「そうだ、傭兵に連れ去られたんだ。あいつらを今すぐに救い出さないと!」




