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140話 -圧-

 



「うわ!開いた開いた」


「本当だったんだ!」


「えーん、お腹すいたよー早く食べさせてよー」


 扉を開けたらすぐそこには見知らぬ3人の子供がいた。


「ちょ、ちょっとちょっと」


 僕は止めようと手を出したけど、それをするっとすり抜けて子供たちが小屋の中に入ってきた。


「ほら!見てよコレ、やっぱり作ってるでしょ?」


「本当だ、お肉がいっぱいだよ」


「えーん、お腹すいたよー早く食べさせてよー」


「ヒロとシンとミサじゃないか。ダメじゃないか勝手に入ってきたら」


 イゴセさんが言った。


「お知り合いですか?」


「ああ、ワシの道場の隣にある孤児院の子たちだ」


「あ、そうなんですか」


「お前たちちょっと来るのが早すぎたな、まだ料理はできてないぞ」


「うっそだーだってできてるじゃん!」


「そうだよだってここにあるし」


「えーん、お腹すいたよー早く食べさせてよー」


「なにをいっとるか、これはさっきに込み始めたばかりでまだ生なんだ。こんな時間に来ても匂いで腹を減らすだけだぞ。孤児院で待ってたらワシのほうから呼びに行く予定だったんだから、それまで待っててくれればよかったんだ」


「え?俺たちの大発見じゃないの?」


「俺たちさー、あさってから飯がいつもより腹いっぱい食えるって聞いてたんだけど、待ちきれなくて来てみたら美味しそうな湯気が出てるからきっとおっちゃんが俺たちに内緒で食べてるに違いないと思ったんだ」


「えーん、お腹すいたよー早く食べさせてよー」


「お前たちもしかして今日一日中外で遊んでたんじゃないか?」


「うんそうだよ」


「思い出してみろ、出かける前に先生がなにか言ってなかったか?」


「言ってたか?」


「覚えてない、なんか言ってたかもしれないけど朝は急いで出てきたから」


「言ってたよ、今日は遊びに行っちゃだめだよって」


「えーそんなこと言ってたの?」


「聞いてないよー」


 さっきまでおんなじことしか言っていなかったミサちゃんという女の子が、急に違うことを言い出したのでびっくりした。というかこの子は聞いていたのになんで遊びに行っちゃったんだろう?


「大体にして子供だけで出歩いちゃ行かんはずだぞ」


「なにそれ、そんなの知らないよ」


 ああそうか………吸血鬼のせいだ。吸血鬼にさらわれた子供は血を吸いつくされて早朝の街中で発見されるという事件だったので、街の人たちは子供だけで外を出歩くことはしないようになっていたんだ。


「血を吸うお化けのことでしょ?」


 ミサちゃんが言った。


「なんだ知ってたのか」


 というかこの子、最初の印象とは違って急にしっかりしだしたな。あ、いま目が合った。


「でもお化けは退治されたっていってたよ」


「まあそれはそうなんだが」


「それに先生はお腰が悪いから私たちずっと孤児院の中にいなきゃいけなくなっちゃう」


「うーむ、まあそうだがなぁ。しかしまあとりあえずは孤児院に帰るんだ。ボム先生も心配しているぞ」


「えー!食べさせてよ、お腹すいたよ」


「芋がまだ全然煮えてないんだ、シャリシャリいう芋を食いたいのか?肉だってまだ火が通ってないから腹を壊すだけだぞ」


「うーーーそんなぁ」


「別に食わさんとは言ってない。もともと食ってもらう予定だったんだから後で呼びに行くから。ここで待ってても余計に腹が減るだけだぞ」


「わかったよ」


「しょうがないなぁ、行こうぜ」


「えーん、お腹すいたよー早く食べさせてよー」


 あの子、また最初の状態に戻ってるよ。


「ちょっと待ってよ」


 坊主頭の子供が言った。


「なんだよ、どうしたんだ。もうさっさと帰ろうよ」


「どうしたんだ急に」


「さっき聞いたろ?先生とか院のみんなが心配していると思ったら不安になってきたんだよ」


「そんなことよりもっと大事なことがあるんだよ」


「なんだよ大事なことって」


「よく見てみろよ、このお姉さんすごく綺麗なお姉さんだぞ!」


 坊主頭の子供がミーラさんを指さす。


「本当だ!!?俺としたことがどうして、こんな大事なことに気が付かなかったんだ。たしかにゆるふわな髪の毛に垂れ目の感じがすんごく可愛い。大人の女性って感じだ」


「ああ!?」


「どうしたシン。俺は今このお姉さんを見るのに忙しいんだ、変な声を上げて邪魔するなよ」


「それどころじゃないよヒロ。こっちの子もめっちゃ可愛いじゃん」


 ウミカを指さす。


「ほ、本当だ。前髪ぱっつんだからこそ顔の綺麗さがよくわかるよ。こういう髪型って綺麗な人しか似合わないんだよな。知的な感じもするし大人になったら絶対に美人になるぞ」


 何言ってるんだろうこの子たちは。さっきまでは可愛い子供だと思ってたけど今の発言でなんだかマセガキって感じがして嫌な気持ちだ。


「そう?そんなに大したことないよ」


 ミサちゃんがふたりのことをジロジロ見ながら口をへの字に曲げている。どうやら二人が盛り上がっているのが気に食わないらしい。


「モルン」


「どうしたのウミカ」


「あの子たちの言葉、しっかり聞いた方がいい。子供は正直、正しいことを言う」


「そうかな?」


「そうかな?ってなに?どういう意味?」


 いつの間にかミーラさんが目の前にいた。


「いや、違うんだ。別に変な意味で言ったわけじゃないよ」


「でも今の言い方だと綺麗って言ってたあの子たちの言葉を否定するような感じに聞こえたよ。なんで?おかしいよね?」


「それはおかしいモルン、どういうこと?さっきの子供たちの言ったことに何か変なことがあった?私にはモルンがどういうつもりでさっきの言葉を言ったのか全く分からない、ちゃんと話してみて。そうじゃないと納得できない。やっぱりモルンはあの男の影響で最近おかしくなってる。前まではそんなことなかったんだよ。ちゃんと話そう、何時間でも何日でも話聞くからちゃんと話そう?」


 ウミカも近い。


 圧を感じる。


 僕はいつの間にか窮地に追い込まれていることに気が付いた。



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