139話
真新しい鍋の底に切った野菜とキノコ、肉を投入していく。
「そしたら水だな」
イゴセさんがメモを見ながら言った。
「全部入れちゃっていいんですか?」
「ん?えーと………よし入れてしまえ」
あ、と思った。多分水の分量については書いていなかったに違いない。僕は桶の水を量を確認しながらゆっくりと入れた。
「あとはさっき買った、えーとなんだったかっていうただの葉っぱ。あれをちぎってから入れる」
「ローリエですね」
言われた通り僕は葉っぱを真ん中くらいでちぎってから入れた。
「それを入れたら後は火にかける。弱火と書いてあるから火はあまり強くしないでくれよ」
「わかりました」
僕は買ったばかりの火を生み出す魔道具のスイッチを入れた。
「おお!」
何もないところからいきなり火がついたので、そういうものだとわかってはいても感動した。
「これでしばらく煮込むぞ。あの中くらいの砂時計が2回落ち終わるくらいまでだ。そしたらさっきちぎった葉っぱは取り出さないといかん。あまり長く似すぎると苦みが出てくるそうだぞ」
「わかりました、忘れないようにしないといけませんね」
「それを取り出したら味見しながら塩と香辛料を入れてあとはまたグツグツ煮込んでいく。あジャガイモが柔らかくなったら味見をしてよかったら完成だ」
「思ったよりも簡単なんですね」
「本当はここにセロリをいれると味が良くなると言っていたんだが、あれはワシが大嫌いな野菜だから入れなかった」
「そうなんですね、僕は食べたことがないです」
「あっと忘れていた。アクだ、最初に込んだ時にアクをとらないといかんかった」
「アクですね、わかりました」
「よしこれでうまいスープができるはずだ」
「イゴセさんの知り合いの料理人の人に教えてもらえて助かりました」
「それもそうだがスープを選んだのも良かったな。これなら誰でも作れそうだ」
「そうですね。どっちかというと野菜を洗ったり切ったりする方が大変ですね」
「なにごとも準備が大切ということだな」
「そうですね」
火と水の魔道具を買ってきた僕たちは予行練習をすることにした。
人を集めてさあ初めてやりましょう、というのだとうまくいかなかったときが怖いというのが理由だ。なので今回はそこまでたくさんのスープは作っていない。だけど僕たちだけでは食べきれないくらいの量のスープではある。どうせならだれもやったことがないたくさんの量の料理を作る、ということもやっておきたかったからだ。
「孤児院の子たち喜んでくれるといいですね」
「きっと喜ぶさ。なにせ万年腹を減らしているようなありさまだからな、多少失敗しても何でも喜ぶだろう」
「それはいいこと、なんですかね?」
「まあとりあえずはいいじゃないか。最初に作ったものをいきなりマズいとか言われたりしたらさすがに落ち込んでしまう」
「たしかにそうですね。けど作るのは簡単そうなので誰がやっても失敗しそうには無いですよ」
「それはそうだな」
イゴセさんは大きく笑った。
「それにタダで配るんだから少しくらい野菜が煮えてなかったとしても文句は言わないでもらいものだな」
「そうですね」
そこだけが僕たちの支えだ。お金をとるわけじゃないから僕たちみたいな料理初心者でもなんとかなるんじゃないかという、そこだけに賭けている。
「ありがとうウミカ」
砂時計をひっくり返してくれたウミカにいった。
「思ってたよりは簡単だったのは良かったけど、これって時間としてはいつ頃配るつもりなの?」
「昼にしようかと思っている」
「お昼?普段私たちは学校があるわよ」
ミーラさんが不安そうな声を上げた。
「それは一応考えている。ふたりにはさっきやってもらったように野菜と肉を切って準備しておいてもらえれば大丈夫だ。それなら学校から帰ってきてからでもできると思うぞ」
「なるほど、そういうことね」
どうやら安心したようだ。それはいいんだけどミーラさんがさっきからウミカのほうをチラチラ見ているのが気になる。どうやらあの病室での出来事が相当堪えているらしい。
「それさえできていればあとは朝から煮込み始めれば昼くらいには野菜にもしっかり火が入っているから食べごろになっているはずだ。そうなれば後は配るだけだからワシひとりでもできるんじゃないかと思っている」
「そして僕らの学校が終わったら片付けと食材を準備して、の繰り返しですね」
「そういうことだ」
「一応それでやってみて、大変そうだったらまた人を増やすようにしましょうか。サブレさんには許可をもらっていますから」
「うまくいくといいがな、大抵こういうことは最初に思っていたよりもうまくはいかないものだ。まあしかしやってみないことには何もわからんからな」
「そうですね、ウミカどうしたの?」
「なんか外から声が聞こえる」




