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「あ、あの。あたし、王都でデイル様と一緒に住むようになってから、デイル様の優しさにどんどん惹かれていって……でも、デイル様はお義姉様の婚約者だから、ちゃんと諦めようと思っていたんです。でも、デイル様と相思相愛だと知って……お義姉様もあたしたちを応援したいって言ってくれて……っ」
なんの前触れもなく、とんでもないことを突然言いだしたグレースについていけず、ペルソン伯爵夫妻がぽかんとする。
グレースの告白に背中を押されたのか、それとももう後戻りはできないと判断したのか、デイルも吹っ切れたように、ペルソン伯爵夫妻に訴えかけた。
「そうなんです。ぼくも、グレースの明るさにいつしか好意を抱くようになっていって……でも、ぼくにはオリヴィアがいたから。哀しませたくないから、この想いはずっとしまっておこうと誓いました。しかし、他の誰でもないオリヴィアが、ぼくたちの気持ちに気付き、後押しをしてくれたのです」
(……よくもまあ)
デイルの言い方に虫唾が走るオリヴィア。追い打ちをかけるように、その通りです、と続けて声を上げたのは、マケラ子爵だった。
「デイルとグレースが一緒になること。これは、オリヴィアの願いでもあるのです。オリヴィアは、デイルとグレースを誰より大切に思っていますから。我が娘ながら、とても優しい子でして」
「ええ、本当に。自慢の娘です」
誇らしげなマケラ子爵夫人に、マケラ子爵がうんうんと頷く。ペルソン伯爵は言葉をなくしていたが、ペルソン伯爵夫人は、オリヴィアにゆっくりと視線を移した。
「……この方たちが言っていることは事実ですか?」
オリヴィアはもう迷うことなく、はい、と頷いた。
「デイルとグレースは、とてもお似合いの二人だと思います」
それは皮肉もこもっていたが、誰に伝わらなくともよかった。なんというか、客観視ができるようになってみてはじめて、デイルはグレースを含めたマケラ子爵家と、似た部類の人間なのだということが痛感できたから。
ペルソン伯爵夫人が、驚愕の表情を浮かべる。
「……あなたは心からデイルを愛していたように見えましたが」
「そうですね。愛していました。でも、もういいんです」
諦めたように笑うオリヴィアに、ペルソン伯爵夫人の表情が険しくなる。
「どうして二人の気持ちに気付いたのですか?」
──どうして?
その質問に、オリヴィアはうっすら笑いそうになってしまった。どうするか。すべてぶちまけてしまおうか。少しだけ葛藤したが、いまさら失うものなんてない。少々自棄になったオリヴィアは、ふっと肩の力を抜いた。
「……わたしだけじゃありません。きっとペルソン伯爵家の使用人の方たちも、王立学園の人たちも、とっくに気付いていたと思います。なのに、わたしだけが、気付かないふりをしていました」
デイルとグレースが同時に、え、という顔をした。どうやら本人たちは、あれで本気で隠しているつもりだったらしい。お笑いだわ、とオリヴィアは口角を上げた。だって、必死に気付かないふりをしなければならないほどに、デイルのオリヴィアとグレースの扱いの差は、歴然だったから。
「グレースが王都に来てからというもの、学園の登下校、昼食はもちろん、デートすら、いつも三人一緒でした。会話は、ほとんどデイルとグレースがしていて。わたしが話しかけると、いつしかデイルが鬱陶しそうにするようになっていったので、自然とそうなっていきました」
「──なんですって?」
ペルソン伯爵夫人の低音に、デイルがびくつく。ああ、この人は、ちゃんとデイルに怒ってくれるんだ。結局はデイルの幸せを願うのだとしても、オリヴィアはもう、それだけで満足だった。
ぜんぶ、すべてをぶちまけて、終わらせよう。そう思ったオリヴィアの口は、止まらなかった。
「学友に招待されたお茶会でも、王立学園で開かれたパーティーでも、いつしかデイルは、グレースばかりをエスコートするようになりました。それだけではありません。デイルは、グレースのデビュタントのエスコートまでしました。もちろん、ファーストダンスの相手も、デイルがしました。まだ婚約者も友だちもいないグレースが可哀想だからと」
オリヴィアがすべてを明かすとは考えもしていなかったのか。怒りでぷるぷると震えていたデイルがたまらず「それはきみも納得していただろう?!」と、叫んだ。




