機械王の内蔵・毒入りスープ②
「初めてこんな状況にあったのは小6の時。夏休みの家族旅行で、ある島の観光に行ったんだけどな」
「そこでかわいい女の子と会ったんだ。いわゆる初恋ってやつだな」
「けど、その子の正体は見るにも語るにもおぞましい化け物だった」
「今にして見ればなんだったんだろうな。アレって」
「そこから先、俺の人生は変わったよ」
淡々と自分の思い出話を語る彼。
あまり神妙な空気になって欲しくないみたいな様子は感じた。
過度な道場や感情移入はいらないのだろうが、それだけに真実味の薄さと言うか、いつもと変わらないでまかせにも聞こえてしまった。
「化け物に襲われた。食われかけ、殺されかけたっていう体験はどうやらいちど味わうと中々放しちゃくれないらしい」
なんだか、結局また彼のペースだ。
「ま、そんなとこだよ」
「俺のこと信じてくれとは言わないけど、少なくとも俺の目の前で誰も死なないでくれればいいとは願ってる」
私自身も彼を頭ごなしに信じようという気にはなれない。しかし、彼の言葉に嘘はあっても悪意は感じられなかった。
「……信じてみてもいいのかな」
なにより、彼の話に真実味を感じられたのは私と同じ経験をしたものにしかわからない感覚。
ずっと彼に感じていた違和感の正体。
共鳴とも言うべきか、私の胸のうちに突き刺さるような奇妙な一体感があった。
『今ここで仲違いしてても始まらないし、この異変の元凶が彼でもなければ、まずは言うことを聞く価値はあると思うわよ』
「へへっ。貴女にそう言ってもらえると嬉しいですね」
ミコトの言葉を代わって私が告げると、皆もそれでなんとなく安心してくれたようだ。
『まぁ、怪しいことに変わりはしないけど……追従はするんじゃないわよ。思考を止めることほど愚かな行為もないわ』
「分かってる……」
「それじゃ、公平にくじで決めっか」
そうして決まった私の担当は『内蔵』と『胃袋』
まずは胃袋の方を調べに行く。
ー機械王の胃袋。
そこは、胃袋と言う名の割に長い一本道が奥まで続いた街道のようになっていた。
錆びついた機械の油臭が充満し天井から黒い廃液がポタポタと落ちては、水溜りがそこかしこで出来ている。
「……暗いですね」
辺りはランタンが等間隔で電柱みたく建てられているがバチバチとついたり消えたりを繰り返したりとして、その殆どは消えている為に頼りない。
こういう時にスマホなどの光源がないのは不便だった。
「……っ!」
突然、入ってきた方の道からガシャンと言う音が聞こえ、私はゾクッと縮み上がった。
振り返れば、ランタンが落ちて割れて灯が消えたらしい。
「びっくりした……」
『ビクビクし過ぎでしょ。何もいやしないわよ』
「そうは言ってもさ……」
暗闇を意味もなく恐れてしまうのは人の本能らしい。
そうでなくとも、まだ残り火のような私の心にへばりついた忌まわしい記憶はしつこい汚れのようにこびり付いている。
ーあの暗闇の奥、化け物が大口を開けて待ち構えているのでないか。
今でも思い出すだけで気の触れそうな記憶は私を捕らえて放してはくれない。
まるでその頃の記憶が蘇ってきたように身体の奥底から恐怖に支配されていく。
怖い。
怖い。
怖い。もう嫌だ、蹲っていたい。なんで私がこんな目に……。
「ひ……」
『アマテ。落ち着きなさい、弱い人間がこういう時に一番やったらいけないのは取り乱すこと、貴女の行動で他の二人の命がかかると思いなさい』
「分かった……」
実際に落ち着けで落ち着けたら世話ない。しかし、ミコトの言うことは最もだ。
また一つ、暗くなっていった機械王の胃袋を突き進むと、土夜くんの手のひらが見えた。
「二人とも、下がれ。何かいる」
カラン。
空き缶が落ちたような音が、静かな胃袋の中に木霊する。
「んっ……」
私は息を呑む。
カラン、カランという音が大きくなり始め、土夜くんがじわじわと距離を詰める。 もっと下がれという合図か、私は有彩ちゃんの手を取り、出来るだけ彼が見えなくならない程度に後ずさっていく。
「……!」
ランタンの灯りの下、まだ光源の残っている地点へ辿り着くと、私たちを追ってきていた者の正体がはっきりと見える。
それは、ドラム缶の身体。
鉄パイプの足に、壊れた配電盤のメーターを目に見立てて顔を作り、手はペンチとスパナで出来ている。
それらを雑多に針金でつなぎ合わせた鉄人形といったところか。
『悪魔……? 魔物じゃなさそうだけど、魔力を感じるわね』
今さら、なぜこの鉄人形が動いてるのかという疑問や恐怖はない。
敵意は特別感じない。
私たちが足を止めても、襲い掛かってきたりと言ったこともないが、そこでふと首にかかった鉄の札を見つける。
そこには、ナイフで削ったような掘り文字でこう書かれていた。
『これは貴方だけの奴隷。
貴方の命令を何でも聞く奴隷です』
「ストップ!」
それを確かめるように私は、思い切って命令を出す。すると鉄人形はピタリと動きを止めた。
「こっち来て」
また歩き出した。
ちょっとかわいいかもしれない。
私は膝を折って、目線を合わすと彼?へ向けてそっと話しかける。
「アナタは誰? ここはなんなの?」
口がないから利けないのか、喋ったり話したりのできない事までは叶えられないようだ。
「この子、連れてく?」
「ふむ。ここの住民かなんかなのか?」
すると、鉄人形の頭がボトリと音を立てて崩れる。
頭の支えもなくて困っているのかウロウロと頭を探しているようだ。
私は落ちた頭を拾ってあげるとその子は喜々として被り直し、お礼のつもりか、ドラム缶の中を開き、黒光りする鉄の塊を私にくれた。
「ありがとう……って、これ拳銃!?」
この日本で実際に見た者は少数だろうが形は誰でもハッキリと知る黒い手に握れるサイズの拳銃。
思っていたよりもずっと重く、とてもでないがまともに扱えそうもない。
「おいおい。銃口を自分に向けるなよ」
「ど、土夜さん持っててよ……私、拳銃なんて」
「俺だってねぇよ」
「ま、女の子の護身用にはいいんでないの? 反動がすごいから吹き飛ばされないように、あと撃鉄は下ろしときなよ」
「そんなぁ……」
『私だって常に出られるわけじゃないんだから自分の身は自分で守れないとね』
「あ、アマテさん。私が持とうか?」
正直、拳銃を持つことそのものより一番取り乱しかねない自分が持つことへの恐怖のが強かった。
人間、追い詰められると何をしでかすか知れない。
「いえ……その、私、やります」
弱気に負けそうになっていたけど、狂気の世界に触れるのは私だけで十分。
土夜さんの話を聞いて、今までそんな風に考えたこともなかった。
それに、いつまでも弱気な自分への戒めの意味を込めて拳銃をしっかりと握りしめる。
そうやって私がまごついてる間にも乃愛さんが、膝を折り小さい子をあやすみたいな姿勢から話しかけていく。
「ねぇ。私たちはここから出たいんだけど、出口はどっちかな?」
すると鉄人形はカラカラと言う音を立てながら、私たちが行こうとしていた道をまっすぐ進んでいく。
「ついてこいってのかな?」
胃袋の次は内臓。
分厚い何重にも札の貼られたいかにも何かしらを封じ込めていそうな鉄の扉が一枚。
「この先は確かお帰りの方はこちらからでしたよね?」
「ってことは、こっちは尻になるんだな」
「土夜くん! 女の子が三人いるんですけど!」
男子とは、なぜこういうネタが好きなんだろうか。そんな私の疑問はさておき、注目は扉にある覗き口に集まる。
ちょうど郵便受けくらいの大きさで見る分に問題なさそうだ。
「私が見るよ」
「気をつけてください」
穴の向こうは、予想通り暗く何も見えやしなかったがただ一点。蝋燭でも電気でもないボンヤリとした赤い光が灯る空間。
そこにあったものは、想像を絶するほど巨大な人の形をした像の化け物のオブジェクトだった。
「グゴゴゴ……!」
腕が六本。赤白い肌に、宝石などで着飾ったとてもまともな精神で見ることのできない怪物の像をまるで髪か何かかのように崇め奉る何かがいる。
「あっ……あぁ」
私は、ここまで抑え込んでいた恐怖が。
空気をパンパンに溜めた風船を割った見たく爆発させてしまう。
「いやぁぁぁぁぁっ!」
扉から仰け反り、奇声を上げてしまった。
そうなれば当然、気づかれる。
あの化け物は、ゆったりとその丸太のような大足を上げて私達の方へ迫ってくる。
「逃げろ!」
言われなくてももう逃げてる。
「……あの鉄人形は」
「あーもぅ!」
乃愛さんは無我夢中で、自分でもよくわからない。敵か味方か何なのかすらも分かってない鉄人形を抱えて走った。
「うわっ!」
そのタッチの差で、いま私が居た足場に扉を突き破って化け物の手が伸びる。
「乃愛ちゃんっ!」
土夜さんは乃愛さんの手を取ってすぐに立ち上がり、急いで体勢を立て直す。
幸いにもあの化け物の動きは鈍く、知能も低かった。私たちが走ってる内は、少なくとも追いつかれることはなさそうだ。
「はぁ……はぁ……」
なんとか命からがら逃げてきた私たちの反対側、そこは機械王の胃袋の前。
「全くヒヤヒヤさせるぜ」
「ごめんなさい……」
彼女でも、本当になんでこんな鉄人形を庇って命を賭けたのか分からないようだ。
さっきは気づかなかったが、ふくらはぎに薄っすらと青あざができていて、わずかに痛みが走っているのか立ち上がるのに難儀している。
「ごめんなさい……私のせいで」
「過ぎたこと言っても始まらねぇよ」
「そうですよ、私だってこの前。操られてたと言えみんなを傷付けてしまいましたし、これでおあいこで」
「……はい」
つい私の頬も緩む。
この前は全然分からなかったけれど、いかに乃愛さんが勇敢な人かと、私は感心してしまった。
対して私は弱い。
ミコトの存在をまるで自分の力か何かかと勘違いしているような馬鹿だ。
「さ。いくぜ」
卑屈になっている暇もない。
こうしてる間にも、あの化け物は少しずつ歩みを進めてくる筈だ。
私たちの探索分が終わり、予定通り反対側の探索を終えたチームと合流する。
「あ。土夜さん!」
「おぅ、神日。生きてたか進捗は?」
「眼球の方は図書館でした。中には、毒を入れる必要があるみたいなんですが」
「毒を持ち出す容器と、毒を調べるものが必要になると分かりました」
彼らも彼らで、狂気の一旦に触れたのか。神日さんのさっきまでしていなかった手の包帯からは血が滲んでおり、土夜さんとそのことを分かっていないのか触れようともしていない。
「それが銀のスプーンってわけ」
「どうやら胃袋にあるみたいなんですが」
「配電盤を直さなきゃいけないみたいなんだよね」
胃袋へ行くための配電盤のついた扉を指して言う。
どうやら扉と連動して開く仕掛けになっているようだ。
それもボロボロの鉄屑の扉でも固く閉ざされていて、蹴飛ばしたくらいで壊せそうにない。
「え……ちょっと待って、私たちの中にこういう機械に詳しい人っていた!?」
こう言う頭脳労働と言えば、まっさきに皆が向くのはやはり土夜さん。
しかし、配電盤を触っていた彼であったが振り返ればいつもの歯を見せた笑みを浮かべながらも冷や汗を垂らしていた。
「簡単なものならまだ……けど、これはちょっとプロの領域だな」
「嘘……」
一転して場の空気が重くなる。
「で、でも。こういう時って何かしらの処置がある物じゃないかな? 例えばその図書館とかにヒントが……」
そういう私の希望的観測も、遠くの方から唸る化け物の咆哮で散らされる。
「なんの声!?」
「あ、そうだ! なんかヤバイ感じの化け物がこっち来てる! あまりノンビリしてはいられないよ」
「情報収集は終わった?」
そんな私たちの前に聞き覚えのある声。
ハッと振り返ったその先で皆が目を見開く。
「有彩ちゃん……!」
「随分湿気た顔しちゃって、私の考えたゲームは気に入らなかった?」
なぜ。彼女がここに?と言う疑問や行方不明だった筈ではと聞きたいことがいっぺんに浮かんで来ては思考がまとまらない。
聞いていたよりも、ずっと元気そうだった。
とか呑気なことを考え、安堵してしまうほど彼女の表情は愉悦に満ちていた。
「ゲームにしちゃ些か公平性がないっていうか、イマイチだな」
だが、危うく聞きのがすところだった。
「別に、私はをこの場で全員チャンスも出口も与えず見殺しでも良かったの」
『私が考えたゲーム』確かに彼女はそう言った。
未だ、放心状態で事態をうまくのみこめていない私たちへの当てつけか。
高見から見下ろした視線を浴びせながら、上着を脱ぎ捨てた。
「なに……それ……」
赤黒い液体にまみれたシャツ。それが血、それも返り血であると判断するまでにそうかからなかった。
「けど、少なくとも頑張れば0%じゃあないんじゃない?」
その頑張ればで済むはずもない。
こっちは命懸けなのに。
有彩ちゃんは私たちを弄んで楽しんでいる。
「じゃあ、一ついい事を教えてあげる」
「あのグールは見ての通り動きは鈍い」
「けど、意外にも行儀の良い奴で。ちゃんと頭からかぶりついて、まずは脳を吸い出してからゆっくりと足にかけて食べていく通でもある」
「骨や血もちゃんと残さずにしゃぶって食べるところは意外と可愛いから見てみるといいかもよ?」
なんて何かを丸読みしたような口調でケラケラ笑いながら話しているけれど、何が言いたいのかサッパリだ。
「……何が言いたいわけ?」
「つまり、グールは食べるのも遅い。少なくとも一人食ってる間は他の奴には手を出されないってことだろ?」
「ご名答。さすが土夜くん」
「それって生贄ってこと!?」
「最悪の場合犠牲者は一人で済むのよ? こんな優しいデスゲーム他にある?」
「ほら決めなよ、こうしてる内にもグールは追ってくる。それとも全員仲良くオダブツする!?」
彼女は、完全に狂気の世界に触れ壊れてしまった。
そこにいるのは最早元の『都津呂有彩』ではない。
「ふざけるな……」
「あ?」
「ふざけないでっ!」
「私、有彩ちゃんを巻き込んだこと……心のどこかで私のせいだって思ってた」
「あんたの思い通りになんてなってたまる物ですか! 私は絶対誰も見捨てたくなんかないっ!」
精一杯、彼女へ向けて叫んだ。
自分の中に絡みついた恐怖を振り払うように、闇に向かって轟かせる。
しかし、声だけの虚勢など狂気の前にはいかに無力であるかを思い知らされた。
私の頬を掠め、黒い靄の塊が通り過ぎていく。
「御上 天照ぇ……お前のせいで、俺はすげぇ痛い思いしたんだぜ!」
「剣……!」
「剣先輩っ!」
「悪ぃな有彩ちゃん。見てるだけって約束だったけど、やっぱあの面見たら我慢できなくなってよ」
左腕が通っていないジャンパーを揺らし、右腕は依然として怪物の力を残したまま。
あの異形と化した片手を伸ばし、私の首を締め付けてくる。
『アマテ!』
「がっ……!」
息ができない。
呼吸器が締まる。
「ミコトさん! アマテさんを助けてよ!」
『出来るならやってるんだけど……』
「あの悪魔も、自由に顕現できる訳じゃないんだってな。あの時は無駄に魔力供給させちまったが」
「お前一人締め上げるのにカスみたいな魔力さえありゃ十分だ」
確かに、前より締め付けは弱い。だからその分ミコトが私の体へ憑依するのに十分な魔力がないのだ。
ただ、人一人制圧するのに十分すぎる凶器だ。私程度の腕力で振りほどくこともできやしない。
「うわっ!」
助けに入ろうとした神日さんが簡単に弾かれ、土夜さんも有彩ちゃんに牽制されて助けになど入れない状態。
「あ……あっ」
このまま殺されると、私が死を覚悟した瞬間に解放された。
「ケホッ……カハ!」
「安心しろよ。お前だけは殺さねぇから」
「え……?」
「手足を切り刻んで動けなくして、その後にもっと恐ろしい世界に放り込んでやるよ」
「……っ! そ、そんなことで私がひるむと思ってるの。人を馬鹿にするのもいい加減にして!」
なんで私はこんなことを言ってるのか。
命乞いすれば、ひょっとしたら助けてくれるかもしれないなんて無駄な淡い期待すらしないで見栄を張り続けているのか分からない。
漫画で見るようなヒロイックなセリフを実際に自分の命が差し迫った状態で言うのがこんなに難しいだなんて思いもしなかった。
「他の皆は関係ないでしょ。」
それでも、私に出来るのは屈しないことくらい。
きっと、この後の私は人でいれるなくなるかもしれない。
それでも、やっぱり最後の最後まで人間でいたい。
「誰がしゃべっていいって」
『クスクスクス』
場を割って入って、笑い声がこだまする。これも剣の仕込みかと思えば彼にも何が起きたか分からない顔をしていることから違うようだ。
体内から聞こえる女の子のような笑い声は天井から壁から床から、幾つも聞こえて来る。
『この声……まさかっ!』
そんな不気味な光景に驚いていた時、声の正体は私たちが連れていた鉄人形からだと気づいたのはミコトだった。
『つくづく、人間って醜いなぁ』
「なっ!?」
あの機械人形は果敢に飛び出し剣へと飛びかかる。自分もろとも彼を腕ごと突き飛ばし、あの巨大な腕を粉々に粉砕する。
『そんな……』
ミコトから熱い物がこみあげて来る。
嬉しい時とか、感動した時に目頭の奥が熱くなって、私の身体をつたって溢れてくる涙だった。
『心も身体も弱っちぃくせに、すぐ大それた物に手を出したがる』
すると、ボロボロになった機械人形の首からまたハッキリと声が聞こえてきた。
『でも。そのゲーム面白そうだから私も参加してもいい?』
『シオンッ!』
私の声帯を使って、ミコトが声を出す。
『え……なんで私の名前を?』
「私よ、シオン。ミコトよ」
声までミコトになっている。覚えのない言葉が次から次へ、感情まで含めて次々と出てくる。
『まさか、お姉様!?』
「チッ……」
突然の乱入者に優位も消えて不利を悟ったか有彩ちゃんと剣はどこかへ姿を消してしまい、一まずは助かったと言うべきか。
『あの子は私の2番目の妹のシオンよ』
『シオンは機械には相当強いから頼りにはなると思うわ』
「本当に!?」
『ところで誰? この人たち、なんで人間なんかの身体にいたのさ』
『色々あるのよ。それより、貴女こそなんでこんなとこにいたのよ』
『あの時さ、肉体を失って魂だけになった私は機械の匂いに誘われてこの世界に来てね』
『元の世界に戻る方法も分からないし、なんとか魔力であの身体だけ作ってフラフラしてたの』
「フラフラしてたって……こんな世界で!?」
悪魔と人間の価値基準は違うというべきか。
生まれつき強く、寿命も悠久の時を生きる彼女らには一時の暇つぶしのようなものらしい。
『まぁいいわ。ちゃんとこの人たちに協力なさい』
『お姉様がそう言うなら……』
膝を折って地べたに座るほど心底嫌そうな表情を見せるけれど、ミコトの言うことには忠実のようだ。
『じゃあ、お姉さんの身体貰うね』
「え、ちょ……っ!」
二人目の悪魔が私の中に入り込む。
身体は何ともない、けれどなんだか例えようのない不思議な気分だ。
『あぁぁぁぁ、お姉様ぁ』
『じゃれつくな』
久々に再開できたことがよほど嬉しかったのか、擦り寄って喜んでいるのがこれでもかというほど伝わってくる。
ミコトの妹とのことだから害はなさそうだけど、また一つ頭の中が騒がしくなってしまった。
「ま、良かったね。妹さん見つかって」
『えぇ。まずはシオンが見つかって良かったわ』
「それじゃ早速頼んでいいですか? 」
『ほら、シオン』
シオンは心の内からヒシヒシとやりたくない。嫌だという気持ちとミコトの言うことだからと言う気持ちで板挟みになってるのが私にも伝わってくる。
さっそく神日さんの案内に従って『機械王の眼球』へと戻ってきた。




