機械王の内蔵・毒入りスープ
魔界エンタメショーは夢か現か。
激動の一日を抜けたアマテは、どうにか日常を取り戻しつつあった。
しかし、身の回りに起きた信じがたい現実は不変のまま。
狂気の世界は確実に彼女を捉えて離さないのだった……。
「ハッ……!?」
私が目を覚ましたとき、そこはいつもの自宅の床の上だった。
流しの方から朝日が差し込んでおり、スマホの時計を見ると、ちょうど一晩くらいの時間が経っている。
アレは夢だったのだろうか。
それにしてはタライの命中した頭は少し痛むし、やたらと疲れてるし、叫び通したからか喉がカラカラだ。
「ふぅ……」
私はコップ一杯の水を飲んで落ち着くと、心の部屋で安らかな気持ちで寝息を立てながら眠っているミコトがいることに気づく。
本当にあの悪魔たちの力で病気が治ったのか、それともミコトが言うように一過性の風邪みたいなものだったのか。
「……」
またインターホンが鳴る。
二度とあんな思いは懲り懲りだけれど、無視しておくのも忍びない。
流石にもう無いだろうと思いながら、恐る恐るとドアの鍵を開けた。
そこにはあのゴリラの手が……
「お早う、アマテさん」
と、身構えた私の前に居たのは乃愛さんと音黒さんであった。
「よかった……」
ほっと胸を撫で下ろす。
「凄い汗だけど、何かありました? まさかストーカーとか!?」
「いやいや、ちょっとゴリラが」
「ゴリラ?」
「なんでもない、それでどうかしたの?」
「いや……なにってことはないんだけど、その。時間ある? 少し話したくてさ」
「はい。今日は、大学午後からですし」
私は、上着を一枚羽織るくらいの簡単な着替えだけ済ませサンダルを履いて乃愛さんについていく。
やはり夢だったのだろう、一晩中動いてた割に身体は全く疲れていないどころかぐっすりと寝たから気分がいい。
「アマテさん、私は乃愛を助けてくれた貴女の味方よ?」
「あ……はい」
すると、音黒さんは私の顔をのぞきこんでおり何か私が隠していないかと思っているようだ。
「ストーカーされてても、家族や周りに迷惑かけまいと黙ってるケースは少なくはない」
「大学生の独り暮らしにストーカーは天敵、いつでも使えるようにこの前の防犯ブザーはあげるわ」
「あ……ありがとうございます」
「それと、催涙ガスなんかもセットしとくといい。後は魔除けの札、玄関に貼っておきなさい」
そう言って非常用と書かれたポーチを丸ごと私にくれた。重さから言ってまだ何か物騒なものが入っていそうだ。
「けど、一番は私でも乃愛でも、誰かに相談して。私は貴女が助けを呼ぶならいつでも飛んでく」
「……はい」
ちょっと嬉しいけれど表現が重たい。
命賭けてくれと言われても本当に惜しまず賭けてしまいそうだ。
何でこんなものを常備しているのかという私の疑念も半ばに、私たちは近くの喫茶店へ立ち寄る。
濃い木造色のオシャレなカフェで、静かなクラシック音楽などが流れる自然と今後も通いたいと思わせるところだ。
「んー。美味しい」
さっきまで少し、浮かない顔をしていたのも忘れたみたいに乃愛さんはもうケーキを四切れは食べていた。
呪いの後遺症でまた過食症になってるのではと心配したところでようやく彼女はフォークを置く。
「普通に物が食べられるって幸せな事だって改めて気付かされました」
「まぁ、元々結構食べる方ではあったよ」
コーヒーを片手に、口を直すと乃愛さんはホッと一息入れ何か思い悩む表情を浮かべていたが、決意をしたようにそっと切り出していく。
「私、オカルト的な話とか。非科学的な話は全く信用していませんでしたが、この前にあんな目にあって、色々と思うところはあります」
「なんというか……多分、大学のトイレでアマテさんと会ってからでしょうか。どこかあの時の自分は自分が自分でないような……」
「思い出してもどこか他人のことを思い出すみたいに自分のことだって実感が湧かないんです」
「まるで、何かに操られてたみたいに頭がぼーっとして、食べること以外には考えられなくなって」
呪いを受けたものにしか分からない苦痛。
決して肉体的な外傷はなくとも、心の内に泥がへばりついてこびりついたみたいに残る。
それが呪いだ。
「……今でも、ゾッとします」
蛙のビードロが壊れた為に、あの呪いは全て解けた。だが、ある意味で本当の呪いはここからだったと言えようか。
王林町のあちこちで奇妙な液体を吐き出す女性が少し話題になっている。
「今でも、音黒やみんなを襲った時の嫌な記憶が残ってる」
呪いが消え、正気でなかった時の記憶が宿主にそのままフラッシュバックし、戻ってきてしまったこと。
後で知れば発狂して病院に駆け込まれた人、警察に自首してきた者。最悪、自殺した人もいるかもしれない。
私も、狂気の一端に触れたからよく分かる。
あの化け物の引き起こす現象は人間の心など、それこそガラス細工くらい容易に砕いてしまう。
明るかった乃愛さんも、必死に笑おうとしているのに、どうしても苦しそうな顔に戻っていくのを私は、とても見ていられなかった。
「でも。私はまだいい方でしたよ」
有彩さんの事は、土夜さんから聞いた。
『友達を食い殺した』『石崎先輩が死んだという』『その半分は剣先輩が元凶だった』。彼女の中でショックはどれほどのことだったか。
今は、自宅にも帰っていないらしい。
ー私があの時ビードロを壊したからだろうか
私が彼女の日常を奪ってしまったのだろうか。
『なんてこと、考えてるんじゃないでしょうね』
ミコトの声がまた聞こえてくる。
生意気っぽい、私のことをまるで見透かしたみたいな口振りで、なんだか恥ずかしいと抵抗する。
『そもそも、私は止めたのに行動に移したのは貴女でしょ。その行動の責任は受けて然るべきじゃないの?』
「それは、そうだけど」
『だけど。そもそも自分のせいとか思わなくていいのよ、こんなことしたのは。水崎と剣って奴で悪いのは何もかんもそいつらでしょ』
『何かにつけて心配心配私のせい、貴女が気にしすぎたってどうこうなる訳じゃないでしょ』
「それは、そうだけどさ……」
体調悪かった時は可愛げあったくせに、元気になった途端すぐこれだ。
私が、ついうっかり人目も憚らず言い合いになっていると二人に怪訝な表情で見られる。
「ところで。あの時の女の子なんだけど」
もうハッキリと二人にも、加えてあの時いた四人にも見られている。
ずっと親にも隠していた、誰にも相談できず打ち明けなかった10年間の秘め事を私は、初めて他人に打ち明けた。
「えーと……その、私が8歳の時。ふと私の中に居たっていうか」
ミコトという名前で、魔界の姫であること。私を助けてくれてたことや皆に害をなす存在でないことを話す。
「そうだったんだ……」
既に超常現象を何度も見たあと、と言うのもあったろうけれど二人もすんなりと受け入れてくれたようだ。
「あの。聞こえてるか分からないですけど、ありがとうございましたミコトさん」
『どういたしまして』
乃愛さんにとって自分の恩人の一人。深々と頭を下げると、ミコトにもしっかり届いていることだけ伝えると嬉しそうにしていた。
「むぅ……なるほど、私の感じていたオーラの正体はそれだった訳ね。私には見たり聞いたりできないのがもどかしい……なんとかして話せないものか」
対して、音黒さんは一人俯きながらブツブツと呟いている。
オカルト趣味な彼女には悪魔が目の前にいるのに見えないという生殺しみたいな状況にモヤモヤとしているのだろう。
『本当、悪魔に興味あるなんて人間は変わった生き物よね』
なんとなく、ずっと溜めていたことを話せて胸の支えが取れたかもしれない。
自然と彼女らと打ち解けられてきたような気がして、私自身も気持ちが軽くなっていた。
「あっ……」
一瞬、脳裏に浮かんだあの薄桃色の空の世界のことは黙っていた。
心配かけまいという気持ちは音黒さんの気持ちを裏切ってしまう形にであったけれど、それと同じくらいにこの話は刺激が強すぎると思った。
「どうかした?」
「いや、なんでもない……」
今でも、思い出すだけで気を病みそうになる人の命が紙屑よりも軽く消えていく狂気の世界。
知らずにいられるなら、決して知る必要はないと思ったまでのこと。
それに、私とて今でも当時のことを説明するには情報が欠落している。
なぜ私はあそこに居たのか。
具体的になにがあったのか。
あんな世界を見た後遺症か10年前の私の記憶はどこかスッポリと穴が開いてしまっている。
ミコトも同じく、肉体を失った影響か当時の記憶が抜けているらしい。
「話せてスッキリしました、ありがとうございます」
こうしてケーキを囲みながら、なんて事のない談笑をかわす。
高校どんなところとか。大学生活はもう慣れたかとか、独り暮らしで困ったことはないか。
他愛ない、けれどとても楽しい話を精一杯。事件のことも忘れるほど、大学の授業の時間になるまで語り明かした。
そんななにげない時間が私の心を、段々と日常に戻してくれた。
それからは、大学に通い多忙の日々になる。新しい生活にも慣れなければならないし、事件のことを思い出している暇はあまりなかったかもしれない。
そんな生活が何日か続いたらある日の夜、自宅アパートにいた私はパソコンで大学から早速出された課題レポートを纏めていた。
時刻は10時過ぎ、時計のカチカチと鳴る音と近くを車が通り過ぎる音が時々聞こえるくらいに静かだった。
「んんっ……」
あと一山越えれば終わるかという状態になり、パソコンデスクから背伸びをして立ち上がる。
コンッ
「ん?」
その時だ。私の耳に、トンネルの中で壁を叩いたような軽い音が反響する。
どこから聞こえているのか分からなかったが、空耳と思って注視していなかった。
軽く小腹も空いて夜食でも食べようかと、レポートを一時保存してからキッチンへ足を運んだときだ。
コンッ
「あ……あれ……?」
また聞こえる。
今度はハッキリと、耳にでなく。頭の中に直接流し込まれているみたいだ。
私は、いきなり目蓋に鉛がついたみたく猛烈な眠気に誘われて床に膝をつく。いくらレポート作成に疲れたと言っても、そこまで酷使した訳ではない。
『……がさない……』
ザザッと言うテレビの砂嵐みたいなノイズと共に曇りのかかった女性の声。
目蓋が重く、開けようとすればすぐに降りてきてしまう。
立っているのが辛い。
コンッ。と言う反響音はより強く、より激しさを増し、何か尖った打突物が私の頭に振りかぶられている姿を幻視する。
身体が重い。
ぐちゃ。と言う音と共に血しぶきが舞う。
これは、私の血……?
眠い、眠い……。
私は、そのまま床の上で眠りについてしまったようだ。
ーーーー
夜の帳よりも暗い、深い闇の中。
コツッ。コツッ。と言う木槌を打つその先には、まだ真新しい血のこびりついた肉の塊。
『逃さない……誰一人』
雑に人の形に整えられた肉人形が5つ。
心臓部に杭が深々と打たれており、そのまわりには犬やネコだったと思わしき物残骸。
「待っててください。石崎先輩」
彼女の周りを取り囲むのは、また新しい杭の打たれていない別の肉人形が5つ分。
「ミアちゃん……」
「お父さん、お母さん……お姉ちゃん」
こちらは杭の打たれているものよりも丁寧に扱われ、服を着せるみたく布で覆われ、この人形に対して彼女は親族や友人の如く愛情を向ける。
顔中を血で染めた都津呂有彩は、生気のこもっていない何かに取り憑かれたかのような笑みを浮かべ、こびりついた血を一枚の皿の上に注ぐ。
「私が生き返らせてあげるから」
ーーーー
次に私の意識が覚醒した時、そこは私の部屋でなかったことがすぐにわかる。
「ここって……」
バチバチと言う音を立てながら、今にも落ちそうなほど頼りなく吊り下がったランタンの灯りだけが光源の空間。
背中から伝わる感触は木や布ではなく、ゴツゴツとした鉄だ。
見ればすぐにここが私の部屋出ないことがわかる。
「臭っ!」
そして、強烈な鉄錆とオイルの油臭さが鼻腔を刺激し、さっきまでの眠気も忘れてすぐに立ち上がった。
すると、いきなり背中に何かがぶつかってすぐに離れる。
「なにっ!?」
何事かと警戒して振り返った私は、続けて驚くことになる。
「あれ……アマテさん?」
「乃愛さん? 音黒さんに、皆も」
三人だけでない、土夜さんの神日さん。
あの日の事件の関係者が5人、集められている。
皆、思い思いの夜を過ごしていたのだろうが女性陣がパジャマ姿にスニーカーとラフな格好してる。
にも関わらず、男二人は大学へ来てる時と丸っきり様子が変わらない。
「ネカフェで夜過ごしてたらいつの間に」
「河原で野宿してました」
「本当になにしてたの……」
二人の行動はこの際置いておこう。
あの変態共のおかげと思いたくないけれど自分でも驚くほどこの異常事態に気持ちが落ち着いていた。
「私……いつの間にこんなところへ来たのかな?」
改めて周りを見回すと今にも崩れ落ちそうなほど、黒く錆びつき鉄の匂いが充満した機械組みの部屋。
鉄パイプが複雑に絡んだ天井、雑に鉄板を敷いて針金で繋がれただけの頼りない床と、重厚な古い機械の中に取り込まれてしまったみたいだ。
「ここどこなんだろう」
「誘拐された?」
「誰がなんのために?」
突然の事で私たちは、答えの出ない言い合いになっていると
「なぁ、なんかあるぜ?」
と言う土夜さんの一言で視線がそちらの方へ向く。
部屋の中央に置かれた鉄で組まれたテーブルの上に唯一と言っていい木製物である木製の丸みがかった器とメモがあった。
メモには強い筆圧で殴り書いた字でこう書かれている。
『ここから出たかったら、一時間内に毒入りのスープを飲め』
『一時間以内に飲めなかったら、お迎えがくる。君たちではそこから出られない』
そのことに私達が気づいた、それが合図だったみたいに壁に立て掛けてあった短針のない長針の振り子時計が動き出す。
どうやらアレがタイムリミットのようだ。
前の惨状と合わせ、お迎えと聞いて希望的な観測を述べるものはいないだろう。
「スープって……これ?」
見るからに真っ赤なスープ。
トマトスープなんかじゃなさそうだ。
この鉄錆の臭いに混ざって分かりにくいが、私はごく最近これと同じ物をハッキリと間近で見てしまったせいか、これの正体に察しがついてしまう。
「これって……」
その黒が混じった赤々しい液体、それはどうみても血だった。私は、思わず声を上げそうになったが口を抑えて耐える。
「ふむ」
すると突然、スプーンの取っ手の先で掬った土夜くんはそれを舐めてしまった。
「ちょっと、土夜くん!?」
すぐに唾ごと吐き出してハンカチで舌をぬぐいさった物の、あまりにも突飛な行動に皆して驚かされて、血を見たことのショックを受けてる暇もない。
「うん、不味い」
彼の行動が、突然の状況にまごついている私たちへ入り口をこじ開ける役目を果たしてくれてはいる。
「おどかさないでよ」
けれど、少しは周りを顧みて欲しいという気持ちはあった。
「悪ぃ悪ぃ。けど、やることはハッキリしたろ」
「つまり、このスープはまだ未完成だからこれに何かを継ぎ足して『毒入りスープ』を完成させる」
「なにかって?」
「皿の下にメモが彫られてた」
皿を退かしたテーブルには、染み込んだ赤黒い液体でこう書かれていた。
『ここは機械王の舌の上』
『機械王の胃袋へ行きなさい。スープのスペアがあるよ』
『機械王の心臓に良い子がいるよ』
『機械王の眼球。あらゆる叡智を見てきた機械王の蔵書が詰まってる』
『機械王の内臓に。お帰りの方はこちらから』
この部屋を中心にして四隅にそれぞれ機械王の~と書かれた部位が囲うように点在している部屋になっているらしい。
『機械王【ーー】……かつて存在した重機に支配された魔界を統べる王様ね』
「なにそれ」
『その山のような巨体は全て機械で出来ていて、腕のひと振りで星ごと吹き飛ばす程の強さを持っていたとか』
『それでいて、完全な管理世界を作り上げるほどの頭脳を持っていながら自分以外のものを信じず、全て滅ぼしたら、修理する者もいなくなり孤独のうちに長い年月をかけて、朽ち果てたって言う話』
『まさかとは思ったけどこんなところで肉体だけは残してたとはね』
今は関係のなさそうな話だ。こうして話してる間にも刻一刻とタイムリミットは迫りつつある。
「時間もないし三手に分かれよう。俺のチームと……神日のチームだ」
「待って」
私自身、ほぼ考え無しで彼の案通りに皆が動こうとする所に、咄嗟で異議を唱えたのが乃愛さんだ。
「貴方の言ってることは、一見正しいように聞こえるけど、その実どこか私たちの思考を誘導してるようにも思えるんですよね」
「それになんか無茶しすぎじゃないですか?」
彼女の事件への取り組み方が、前とは全然違う。きっとこれが本来の彼女自身なのだろう。
「まるで自分で死に場所探してるみたいな……そもそも、あの時だって。なんで私達に最後まで協力してくれたんですか?」
「それ今必要な話か?」
強く言い寄られても、彼はいつもの飄々とした笑みを崩さない。
本当に何を考えているか分からない所があるのは本当だ。その上で、なお乃愛さんは
「必要です! 少なくとも、私が貴方を信頼するために!」
「はは。随分と嫌われた物だな……けど、今こうして話してる間にも時間は過ぎてくぜ?」
「えぇ。だから、私は固まって動くべきだと思ってる」
「……分かった。俺は君の下に付くよ、口は出さないし君の指示にはある程度従う。死んでくれみたいなのは勘弁だけど」
「その上で神日とチームを二分する、それでどうだ?」
根負けしたように見せて下手に話を長引かせず、折衷案を立てる。
「……」
しかし、それでまだ納得しないと目で訴えられる。
そうしてやっと根負けしたみたいに壁へ寄りかかった土夜さんは壁の振り子時計を見つめ、表情を崩さないままため息をついた。
「あ。あの乃愛さん、あまり彼を」
「いいよ神日。彼女の反応が正しい。頭から俺のこと信用なんかされたら逆にこっちが信用できなくなる」
「なんか否定しないって言うか、土夜さんって怒るイメージないわよね」
音黒さんの言うように、私も同意して頷く。
どこか相手の顔色を伺っている訳でもないが、人の怒りの地雷を踏まないよう遠回りして歩くような素振りを見せる。
それだけ、とっつきやすいとも言えるがそれは逆に周囲から胡散臭さ。無礼な捉え方をすれば詐欺師のような笑みの見せ方にすら感じられた。
「ハハハハハッ! そう見えるか?」
すると彼は、ここに来て初めて表情を崩し元から笑ってるような口元をより歪めて笑った。
「よく化け物より人間が一番恐ろしいなんて言葉もあるけどな、本物の化け物を知っちまうとどんな人間も可愛く見えちゃうもんなんだよ」
その発言に周囲も『え……?』と不可解な反応を示す。まるで彼もまた、本物の化け物を見た事があるような。
「手短に話せば、俺はこんな事件に関わるのはこの前や今日が初めてじゃないからさ」




