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市民、あなたは幸福ですか?➃


『シオン!』


 私の中に眠る二人目の悪魔。

 シオンが目を覚まし、私の身体の主導を奪いあっという間に姿が成り代わった。


『姿が変わった……?』


「本当、ちょっと前から見てたけど。お姉さんのその偽善臭さ、本当嫌になっちゃう」


 こんな時に、と言いたいがこんな時だからこそ。チャンスだ。


「けど。この人たちのがもっと嫌になるなぁ」


 ニタニタと笑ってこそいるが、その無邪気な笑みの裏に隠れた隠しきれていない邪気。

 この圧倒的に不利な状況にもまるで怖気づいた様子もなく、ピタリと足を止めた。


「この人たち心臓ごとバラしちゃっていいよね。メイちゃん」


 機械に強いシオンであるならば、この状況をどうかできるかもしれない。

 こうして、父親の形見をさらし者にされ、死してなおその死を侮辱されるくらいなら。


「……お願いします」


 そう思ったのか。

 メイちゃんの覚悟は早かった。

 マモンも同じ腹づもり、最初からそのつもりだったのだろう。


『認証完了、暴食魔界の三女『ーーーーーーー』』


「おいおい、それ持ち帰……」


『魔王の娘である君が、我々の魔界へ手出すことは重大な背信行為に当たる』


 シオンちゃんがそんな周りと合わせることなどあるはずも無い。

 どこから取り出したのか手にしたスパナ、ドライバー、レンチ。


「うるさいな、左右からグチグチ……」


 その内の一本を心臓めがけて放り投げた。


「いいからもうぶっ飛んじゃえ」


 彼女の手先の器用さは尋常でない。

 並み居る兵士たちの攻撃を掻い潜りながら、素手の反撃。


 あっという間に心臓部へ到達したかと思えば、スパナでボトルを外してドライバーで回すて間もなく螺子を外してしまう。


「ふっ」


 シオンにとって罰当たりなんてなんのその。


『理解不能。貴女の戦闘行為は侵略に当たる』


 しかし、問題なのはずっと危惧していた侵略行為。

 ここでシオンが暴れては元も子もない筈だが……。


「なんか勘違いしてるようだけどさ。私、戦闘なんてしてないよ。そもそも戦闘なんて呼べるの?」


「私はただ、このガラクタ弄って遊んでるだけ」


 あっという間にガラスケースを素手で破り、中の液が飛び出て来る。

 飛び出てきた触手もろとも引きちぎって徐にマモンの前へ投げつけた。


「あとは宜しく。それ私が壊したら本当に侵略行為になっちゃうから」


「恩に切る」


「あ、ああああっ!」


 マモンは魔王の心臓を素手で打ち貫き破裂させ、血液の一片すら残さずに蒸発させる。

 死にかけの身体でこれだけの力が出せる、魔王の息子の力の一端を垣間見えた。


 そして、それはシオンも同じ。


『シオン、貴女』


 まさかと思ってはいたが、あれだけ暴れていたにも関わらず、誰も死んではいなかった。

 本当に紙一重といったところだけども……


「本調子でなかっただけだよ。本当ならこの人たち皆殺しでも良かったんだけどさ」


「で、依頼はどうすんだよ……」


「それは、その……私がなんとか」




 それから、私たちは半日かけてまたブリーフィングルームへ戻ってこれた。とっくに時間など経過しているのだけど、時間が過ぎたことは然程咎められることなく迎え入れられた。


「よく戻りました。ほぅ、よくマモンを生かして連れ帰りましたね」


「その働きに免じて時間の経過は許しましょう」


 私はマモンを前に出す。

 念の為、縛り上げてあるのでこれで疑われなかったようだ。


 これで話は終わってくれ。


 まるで、宿題忘れた日のホームルーム。

 先生が宿題のノートを集めることを忘れててくれと願った時のような心境も虚しく……


「……で、魔王の心臓の方はいかに?」


 そら来た。


「おい。言えよ……」


「えぇ、私!?」


 私は背中を押される。

 責任持って言えというところだろうか……。


「魔王の心臓、敢えてあなた方には伏せましたが。魔王の無尽蔵な魔力を宿す絶好の機会だったと言うのに……」


 片方できたんだから、もう片方の失敗は許してくれないだろうかなどと言えそうな空気でもない。


 それも致し方なし。

 と思ってはいるんだけれど、いざとなればどう説明したものか。

 言葉も出て来ない。


「えーっと……その」


 宿題を忘れて先生に目を向けられた日。

 友達との約束を違えてしまって冷たい目を向けられた日。


「破裂しちゃいました!」


 それらは、今に比べたらどれだけ些細なことだったか。

 彼の怒りは察するに余りある。


「ほぅ……ほおおおおっ!?」


 ワナワナと震える声は、ヒシヒシと私達に怒りを伝える。

 なぜ、こんな事もできないと言う失望。

 

 そもそも特殊工作員でもない私達に頼むこと自体がはなから間違っていたんだ。そんな言い訳は通用しようはずもない。


 彼机の引き出しから大量の剥き出しのまま置かれた注射針を鷲掴みにされて襲われると言う稀有な殺意は私の逃走を遅らせた。


「完璧な市民がこの程度のことも出来ないとは、幸福でない証拠」


「この駐車を一度打てば、貴女は忽ち幸福になれますよ」


 ある意味では幸せになれるかもしれない。

 その幸せの渦中から戻ってこれなさそうなのが大問題というだけで。


「不幸は罪です」


「幸せでない者には幸福を」


 何度も何度も、壊れたレコーダーみたいに幸福幸福幸福……


『あぁ……もう、仕方ないわね。ミコト……私に』


 聞いててうんざりしてくる発言。

 私は、ミコトへの交代を止めさせた。


「……あなたの言う幸福ってなんですか?」


 理路整然と語っても、理解の及ばない相手がいることくらい分かってる。


「決まっています。コンピューター様に従うこと。それだけが幸福」


「それ以外はどうなってもいいっていうんですか?」


「無論。それ以外は幸福とは認めない。幸福などと考えてるような哀れな思考の持ち主でしかありません」


 私は、握りしめた注射器をそいつ目掛けて思い切り投げつける……つもりで床へ投げつけ踏みつけた。


「いい加減にしろ……」


「は?」


「いい加減にしろってのよ!」


「あんたに一々幸せ説かれなくたって。私は毎日ご飯食べて、ソシャゲの周回やって、大学行って、ぐっすり眠れれば十分幸せよ!」


「人の幸福にケチつける奴なんてね、馬に跳ねられてしまえばいいのよっ!」


 ここに来て、ずっと溜めていた鬱憤。抑圧されていた感情。

 何でもかんでも言いたいこと言ってやった。


「行きましょう」


 元より、ここで脱出する手筈だった。

 私はマモンさんの縄を解き、すぐに彼は応戦する。


「てめぇ、さんざ親父に媚び売って。甘い汁啜っといて、いざとなったらまっさきに鞍替えしやがって」


 悪魔にとって裏切りや謀略は褒められた事なのだろう。


「大したやつだよ、てめぇは!」


 だからか怒り狂っていると言う様子よりも、嵌められたことを自嘲気味に笑っているような声色をしていた。 


「がはっ……!」


 魔力による遠方からの一撃でUVは消し炭になる。

 が、この世界において一度の死は死にならない。


「えぇ。貴方のお父様には大変お世話になりました」


 新たにクローンの送られてきた彼の手には何かスイッチのようなものが握られていた。


「貴方も、私の糧となりなさい」


「ぐっ……!」


『うぁっ!』


『やっ!』


「マモン、ミコト、シオンまで……」


 彼の持っているスイッチには恐らく、悪魔に効く電波を発してるのか。

 マモンだけでなく、ミコトたちにまで効果はてきめんだった。


「ハハハハ。本来なら魔王級悪魔に効くはずもありませんが、死に体の悪魔には充分なようですね」

 

「さぁ。貴方たち、マモンと。その裏切り者を取り押さえなさい」


 頭を空っぽにして言い切った結果がこれだ。

 見た目冷静を装ってこそいるが、完全に怒り心頭といった様子。


「あ、あはは」


 少なくとも今から謝っても許してくれないだろうなと言うのだけは理解した。


「あなた達に言ってるのですよ」


 私の後ろにいた四人は、無感情に。

 無気力に、命じられるまま私の周りを取り囲う……。


「あ、その……」


 今さら弁明の余地もない。

 また殺されると、目を細め肩を震わせるしかできずにいた……。 


「確かに、所帯じみててちっぽけかも知れないけど」


「え……?」


「一人でタラタラ高い酒飲むより、大家に怒られるまで騒いで飲んだ酒のが美味いんだよな不思議と」

 

 いつの間にか、彼らは私の後ろへ周り背を向けている。

 

「えぇ。なんか大事なこと忘れてた気分よ」


「なんとも清々しい気分じゃあっ!」


「あぁ、天界にこき使われるのも。機械に使われるのも真っ平だ!」


 彼らの目に光が戻りつつあった。


 カナミさんは、着ていた衣服を瞬時に放り投げた。


「なっ……!」


 女性が、衣服を空に舞わせる。

 これだけで周囲の目は釘付けになろうかというもの。


「残念でしたぁ」


 しかし、彼女はあの全身タイツのようなスーツの下にまたスーツ。

 2枚がけと言うこれまた珍妙な行動。


 いくら完璧な存在であっても、本能には逆らえない。

 欲には逆らえない、悲しき性を目の当たりにした直後。


「ぬぅ!」


「らぁっ!」


「がぼごばっ!」


 天使と武将による強烈なダブルラリアットがUVの首をギロチンの如く挟んで落とす。どうみてもあれは痛い。


 その怯んだ隙に海賊さんは彼の腰に下げた銃と悪魔を抑制するスイッチを切ってから取り外し、私に投げ渡す。


『ふぅ……我ながら情けなさすら感じるわ』


『ビックリしたぁ』


「あぁっ!?」


「IRの銃じゃUVは処刑できない、それ使え」


 私が切り出した喧嘩だ。自分で落とし前つけろということだろうか。


「スイッチの予備あるなら持ってこいよ」


 彼を確実に仕留められる武器が二つある。

 片方を抑えても、もう片方が仕留めるだろう。


 何体クローンがいようと関係ない。

 使い切るまでそのクローンを焼き尽くすまで。


「ひいいいっ……!」


 そう察したのだろう、彼は何振り構わず逃げ出す。

 しかし入口前に天使と武将さんが立ったことで逃げ場を失い壁際へと自ら袋小路へと立っていく。


 私は、彼が落とした拳銃に指をかけて一歩ずつ詰め寄った。


「UV様。貴方は幸福ですか?」


 彼は首を横に振った。


「おや、おかしいですね。UV様ともあろうものが幸福でないとは」


「これはUV様の偽者を語る反逆者に違いありません、速やかに処刑せねば」



「ZAPZAPZAP」



 彼は、惨めにもダラダラと液体を垂れ流し辺りを汚す。

 ピチャリと言う濁ったような悪臭。


 決してそれを見ること自体、初めてでもないはずなのに私に強烈な不快感、そして後悔を齎した。


「顔に似合わずしてやるじゃない」


「よしてよ……これでも結構手に嫌な感触残ってるんだから」


 そう、彼は失禁した。 

 まぁ後のことまで直接的に目を向けるのは避けさせてもらいたい。 

 

「こいつの処分は俺らに任しときな」


 そう言って、棒を使いながらできるだけ触れないよう当たらないよう気を使っているのか。箒で履くようにぞんざいに扱って室内から退場させていく。




 アンモニア臭漂うブリーフィングルームを出て、私たちは最初に来たメイちゃんの家へ戻ってきた。




 私たちは、最初のメイちゃんの部屋へ来ていた。マモンさんも度重なる拷問による肉体的、精神的なダメージに相当参っていたのか。

 ベッドへ横たわり、ようやく緊張の糸が切れたみたいに息を切らしだした。


「はぁ……ははっ、さすがに。疲れたな」


『さすがの魔王級と言えども、全くの無傷じゃすまなさそうね』


「傷は痛みますか?」


 メイちゃんから、悪魔用の薬も借りてできる限りの手は尽くす。

 これでも医学生だ。

 傷の部分を包帯で止めるのにさほど時間はいらなかった。


「なんてことはない。少し休めば元に戻る」


 普通なら一生ものの傷だろうが、悪魔なら治癒力も早いらしく、さすがに長寿種は違うと感心させられる。

 

「感謝するよ」


 と、ミコトよりもだいぶ素直にお礼の気持ちを出されなんだか擽ったい。


「そこそこ色んなところ見てきたけど、本当にめっちゃくちゃね。こんなんで魔界復興出来るの?」


「さぁ。もう手遅れかもしんねぇし、手遅れじゃないかもしんねぇ」


「それでも、これからも俺の副官としてついてくるよな? ベル」


「は、はいっ!」


「先は厳しいかもしれないがな」


「お兄様とならなんの困難もないです! 私、もう次のプランは」


「おぉ。見せてみな、全部どついて否定してやっから」


「もう、お兄様の意地悪!」


 などといちゃついてる現場を惜しげもなく見せびらかしてくれる。


『で、本当にこんな惨状になってて本当に直せんの?』


 それこそミコトが無理やり話に割って入らなきゃ、ずっといちゃついていそうでもあった。


「悪魔様は幸いしぶといんで。気長にやってくさ」


 なんにしても、そんな前向きさは私のやってきたことも間違ってはいなかったとどこか安心させてくれた。


『お兄様かぁ……なんかレイラちゃんが懐かしくなっちゃった』


「ところでミコト」


 今度は、妹のメイちゃんに向けるのとはまた違った。いわゆる仕事スタイルといったクールな口調で私……もといミコトへ話しかける。


「なんで神話生物なんかに喧嘩売りに行ったんだよ」


『……あんたには関係のないことよ』


「あるだろ。四姉妹が全員行方不明ともなれば魔界は多少なりとも騒ぎになったろ。俺も、ベルやサタン様やヴァイアーも心配してたぞ?」


「アスモデウス様なんか怒り狂って魔界中を滅ぼすかもしれなかった」


 実際、ナンナンの大量発生に始まりトリナさんの口ぶりから彼女らの行方不明は魔界にとっての大損失であったことは容易に伺えた。

 結果論ではあるけれど、彼女らを頼ったベルちゃんの計画も何年か遅れることにもなった。


「……ま、別に恨み言を言いたいんじゃねぇ」


「少なくとも、俺達『七つの大罪セブン・シン』の悪魔と『クトゥルフ神話』じゃ『世界観』が違う、神格クラスともなれば魔王たちが結託しても手に余る化物共だ」


「そんな連中をわざわざ、いくら自信家なミコトと言えど喧嘩売りに行くほど無謀な奴だとは思わなかったが? 単純な好奇心だよ」


『お姉様は……!』


『シオン、余計なことは言わないの。えぇ、私はそんな自分の実力も弁えず妹も危険に巻き込んでこのざまになってるバカな奴よ』


「……そういう事にしとくか。悪魔に道理や政治説く意味なんざないしな」


 そう言って、また振り返るとさっきみたいな軽くいムードに戻って話しかけてる対象をミコトから、私へ向けたようだ。


「あぁ……悪い悪い、アンタの前でこんな話してよ。悪魔は律儀なんだ。ここまで尽くしてくれた恩人をただじゃ帰さねぇさ」


「欲しいものをいいな」


「え……?」


「あんたの欲しいもの、望む物なんでも見つけてやるよ。金でも宝石でも、存在さえしてれば見つけてやるさ」


「じゃあ……えっと」


 彼の言葉に固唾をのみながら私はひと呼吸おき


「その……クロナとレイラ、ミコトの妹を見つけてください」


 迷わずそう答えた。


『お姉さん……それ、本気なの?』


 シオンは驚き、ポカンとしたような口調で聞かれる。


「私には、そんなに大それた財産はいらないよ、両手に収まるくらいで」


「それに比べて、ミコトとシオンの失った物を取り返せるチャンスならこんなに安いことはないと思ってる」


 そんなに変なこと言ったろうかという私の疑問の最中、マモンははひっくり返るほどの大笑いをする。


「ウアーハハハハハッ!アーハハハハハハハッ!」


 バタバタと床を踏みつけながら笑い、身体がねじ切れそうなほどひっくり返したりとその行動の意図が読めず、少し怖くなって後ずさりした。


「あー……腹痛え、つか身体がいてぇ」


「お兄様、笑いすぎですよ。もぅ」


「せっかくの願いを人の為に使うか」


「随分と変わった人間を見つけたじゃないかミコトよぉ?」


 マモンはメイちゃんに地図を持ってこさせた。

 日本や世界地図とも違う、おそらく魔界のだろう、それを床が埋まるほど。


 そして懐から紐にくくられた紫色の水晶を取り出した。


「確か音黒さんも持っていたっけ……えーっと。占い道具のペンデュラムとか」


「いいぜ、見つけてやろうじゃないか」


 地図の上にペンデュラムを投げつけると、振り子は糸もないのに天井へ固定され、風が吹かずとも大きく揺れる。

 すると、振り子は自分からより揺り戻すの動きが大きく鳴る方へと近づいていく。


「ほぅ、ほぅほぅ」


「お兄様は探知能力に優れています。魔界の財産や資金、珍しい物なんか掘り当てては魔界の発展に貢献しました」


「もっとも。ヤバイものかどうかの区別もつかなくて今じゃこのザマだが」


 そう自嘲気味に笑ったところで、ペンデュラムはこれまでにない反応を示す。孤ではなく直線的に、机とは別の方向を向いたままピッタリと空中で固定されだした。


「この反応は……ベル、無魔力界の地図を真ん中に置いてくれ」


「はいっ」


 彼らが無魔力界と評する地図は、私にもよく見覚えのある世界地図だった。世界規模で大体の範囲を絞り、段々と地図を変え局所的な位置へと拡大していく。


「ほぉ、わかったぜ」


 そこが日本の関東地方圏内と言う事までしか私には分からなかったけれど、彼にはそれ以上の何かが見えたようだ。


「クロナかレイラかまでは分からねぇけど、どっちかは少なくともその人間の娘の住む世界にいる」


『本当に!?』


「この子が今、住処にしてる王林町から離れた『虎伏山』ってところだな、今の俺じゃ疲れて範囲まで絞り込めねぇが」


『でも、凄いよ! 魔界規模で探してたら見つかりっこなかったもの!』


「ひひっ。残る方も力が戻ったら、やってやるから気長に待ってろよ」


 ミコトとシオンの気持ちが湧き上がってくるのを感じる。久方ぶりに姉妹に会えるという喜びが肌を通して伝わってきた。


「あのぉ。盛り上がってるところ恐縮ですが」


 すると、手をおにぎり握る形にしながら胡麻をする海賊さんがもういいかな?という風に入ってきた。


「俺達も貴方様にとって恩人と言える存在ではないでしょうか」


「あぁ。忘れてねぇよ、望む物は存在してれば何でも見つけてやる」


「けどよ。せいぜい人間世界で見つかる宝にも限度はあるし、そっちの世界は魔界に比べりゃ法律とかいう物が喧しいだろ?」


「まぁ確かに……どうせ見つけても国に取り分ハネられるなんてある話だし」


「とっておきのビジネスがあるんだ。オオサカって言うこことは別の魔界があるんだが」


「そこを拠点にしてもらって俺の仕事を果たしてくれるか? なにせまだまだ強欲魔界の再建には武器も兵力も資産もいる」


「それに、よその魔界まではあの機械王の支配下も伸びないからな」


「そこで腕っ節と知恵と愛嬌たっぷりのあんたらの出番ってことだ。報酬は弾むぜ」


 体裁よく即戦力を得られ、強欲の悪魔というだけあってしっかりとした性格のようだ。


「おおおおおおっ!」


 乗せられていることを知ってか知らずか。

 血気盛んな三人の姿を見て、なんとなく彼らはやっぱりこうでなくてはという気持ちにさせられる。


『それじゃ、シオンも目覚めたことだし。城にいるお友達連れて帰るわよ』


「あ、うん」


 ここでの役目は終わった。

 後は帰るだけなのだけど、私は一つやり残した事があると四人の前へ立った。


「なんだ?」


「ごめんなさい、その……あなた達のことも知らずに、私。誤解してたっていうか、見下したみたいなこと考えてて」


「まぁ気にすんな。自分でも最低だと思っているから」


「最低なくらいがちょうどいいんじゃ、後は上がるだけじゃからな」


「翼をもがれた俺だが、まだ生憎生きてるんだ」


「そういう事。だからアマテちゃんが気にすることじゃないの」


 その言葉を最後に、私たちはまた再びの別れを繰り返す。

 ただ、なんとなくだけど……またそう遠くない内に会いそうな気がヒシヒシと感じられた。



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