4話 決意した。
遅くなりました。やっぱり1日で投稿はキツかった···。
「うぉっ、モンスターっ!?」
ゲイズさんが私の後ろから付いてきたギドを見て声を上げたのは、皆が起き出してきた頃のことだった。
エクサさんとオーガスさんは起きてテントから出てきていて、ギドを警戒するような眼差しを向けている。
「なんでみんな大声で私を起こすのよっ! ってモンスターっ!?」
後ろのテントから怒り心頭といった様子で出てきたフランカちゃんがゲイズさんと同じような声を上げる。
それでいいのか、少女よ。
騒ぎの元凶であるところのギドは鬱陶しそうに目を細めるばかりである。
私にしか説明は出来なそうだ。
「あ、あの! このモンスターは私が召喚したんです!」
「あの、アオイちゃん? 今、召喚したって言った?」
エクサさんが戸惑い気味に訊いてくる。
「はい、スキルで」
「あなた、今レベルいくつ?」
「-5です。」
「へぇ、-5ね。 いや、マイナス5!?」
やっぱりマイナスっておかしいんだ···。
「アオイ、この世界では皆レベル1で生まれてくるのじゃ。モンスターも人間も亜人も。 それと召喚術は超高レベルの魔術師が召喚術師に転職してなるもんなんじゃよ、本当は。」
オーガスさんが微笑みながら告げてくる。
いや、頬の端が『ピクッピクッ』ってしている。
なんか、ごめんなさい。
ところで、特殊召喚術スキルは名前通りに特殊で特別だったらしい。
「まぁ、<どうやって>とかは言わないでおこう、マナー違反だからな。ところでこいつの名前は?」
『おい! こいつとは何だ、こいつとは!』
ギドが私にテレパシーを送ってくる。
「彼はギドです。それとゲイズさん、こいつとは失礼な! って怒られてますよ」
「え? このモンスター、意思があるのか?」
「ありますよ。というか、このとか言っちゃだめですって」
「あぁっと···、悪かったな。ギド」
『呼び捨てるな! ···もういい。人間にはマナーという文化が無いのかまったく』
「そろそろ動くかの。あと半日もあれば街に着く。話は動きながらじゃ」
オーガスさんはギドを見つめながらそう言った。
説得力皆無である。
*
朝食を食べてテントを片付け、歩き始める。
「それで、ギド君には何が出来るのかしら?」
歩き始めてすぐに、大人ぶった口調でフランカちゃんが訊いてきた。
フランカちゃんは馬車の御者で、私はそのすこし前を歩いている。
大人ぶっていても目は輝いていたし、後ろには振り回される犬しっぽが幻視できたが。
可愛い。
「だって、ギド。何が出来るの?」
『今の魔力は本来の1000分の1といったところだ。小さな火球を10発撃てる程度だろう。他のスキルは消費魔力が大きいから駄目だな』
「そっか。フランカちゃん、火球以外出せないって」
「へー、じゃあモンスターが居たら見せてね!」
そう、実はもうそろそろ安全地帯の境界が間近なのだ。
だからモンスターが居たら、とフランカちゃんは言ったのである。
今度は私からフランカちゃんに話を振ってみる。
「ところで皆さん。凄く今さらなんですけど、皆さんって冒険者なんですよね?」
「えぇ、そうよ。私達は冒険者ギルドに所属するD級冒険者」
「3人でチームを組んで<新緑の息吹>って名乗ってんだ」
「どこら辺が新緑なのよって思ったじゃろ?
儂らは随分と昔にチームを組んだからの。
こっちの2人が若いころに、あれやこれやと話し合ってこの名を考えたんじゃ」
「今じゃもう、30代後半のおっさんとおばさんだけどな!」
「誰がおばさんですって···?」
「ちょ、待って! 悪かったって···アァァ~っ!?」
あれ? 冒険者は3人だけ? あっ、そうか。フランカちゃんは依頼を受けて運んでるとかなのかな?
自己完結もいいところである。
こうして話をする事1時間、随分前に境界は過ぎてしまっていた。
モンスターが出ないことに焦れてしまう。
とっくに境界は越えたんだけどなぁと、安心と不安がない交ぜになったまま歩いていたとき、遂にモンスターが現れた。
巨大な芋虫型のモンスターが前方からあり得ないスピードで這って来ていた。
まるで、興奮すると眼が青から赤になる某蟲の王みたいだった。
「ギド、来てる来てる!」
その姿を確認した瞬間にギドが動き出す。
とは言っても動かしたのは下顎だけなのだが。
『カパッ』と可愛らしく開いた口から、10秒ほどのチャージを終えて5センチ大の火球が放たれる。
その紅い球は、芋虫に着弾すると同時に火柱を立てた。
遅れて衝撃波がこちらに到達する。
その威力は嵐の時の突風以上で、筋肉質な他3名ならともかく私に耐えられるようなものではなかった。
馬車の後輪辺りまで転がされる。
3人は馬車にしがみついていたので無事である。
それに助けられてフランカちゃんと馬も。
ギドは私の前まで戻ってきてこう語りかけてきた。
『やはり魔力が足りんようだ、アオイ。本来より大幅に威力が落ちている』
これで威力落ちてるの!?
本来の威力ってどんだけなの···?
立ち上がって芋虫のほうに目を向けるが、そこにあったのは炭化した何かの残る焼け跡だけだった。
出てきてから消えるまで1分も経っていないだろう。
憐れみを覚えた。
*
火柱事件の後からモンスターに出くわすことは無くなってしまい、そのまま歩くこと6時間。
今、私の眼前には壁があった。
人生の壁ではなく、物理的な壁である。
ビルの6階くらいの高さはあるだろうそれは、街をモンスターから守る外壁なのだとオーガスさんが言っていた。
本来はもっと時間がかかる予定だったのだが、それはモンスターとの戦闘時間を含めたものだったようで大幅にズレてしまっていた。
壁の大きさに呆気に取られていたところで、オーガスさんから声を掛けられる。
「アオイ、これからどうするんじゃ?」
「私ですか? 私は···」
さて、どうしようか。
この6時間の間にこの世界のことは大まかに聞いた。
無論、この街のこともである。
ルシェラ王国の辺境に位置していて名をピスカと言うらしいこの街は、辺境である割には人が多いことで有名らしい。
というのもここから南東の位置には、ルシェラ王国内にあるルシェラ大森林があるからだ。
自然豊かなその森には、当然のようにモンスターも蔓延る。
自然の恵みとモンスターから得られる色々な物を求めて、冒険者や商人がやって来ているという訳だ。
だから、この街は冒険者の街としてそれなりに有名なのだそうで。
私の大きな目標は、自分の世界に帰ること。
その為にはまず生きなくちゃいけないよね?
ということは、レベル上げと資金の確保は必須。
ここは冒険者の街で、私は召喚魔術が使える。
···冒険者、か。
よし。
「私、冒険者になろうと思います」
「ほぇ? えっと···、本気なの?」
「はい。レベル上げとかしたいですから」
「この仕事を甘く見ておらんか?
···本当に危険なんじゃぞ?」
オーガスさんが心配からか真面目な顔で問いかけてくる。
優しい人だから、私が危険な目に会う可能性を放っとけないというところだろうか?
でも
「いえ、甘く見たりなんてしませんよ。死が身近にある仕事なのは承知です。
だけど私は、もといた場所に帰りたい。そのためには生きなきゃいけないんです。
これは、それを成すための第一歩です」
「···。そうか。 うむ、これなら心配無さそうじゃな!」
「そんじゃ、街に入ったら俺に付いてきな、冒険者ギルドまで案内してやるよ!」
「冒険者のイロハは私が教えて あ·げ·る!」
やっぱり最高に素敵な人たちだ。
ありがとう、皆さん。
最初に会えた異世界人が、皆さんで良かった。
心からそう思ったのだった。
ブックマークして下さる方がいてくれて感無量です!
今後ともよろしくお願いします。
次回は7/25 夜9時投稿予定です。




