2話 発見と驚きの連続だった。
遅くなってすいません!
皆さんの自己紹介が終わり、私の番が回ってきた。
「西野 葵と言います。友達からは<少年>なんて言われてましたが、普通に葵と呼んでください」
『胸がボーイッシュだね!』と言われて本気でキレた、懐かしき高1の春よ···。
もちろんフリじゃないよ?少年って言ったら怒るからね?
「アオイね、よろしく」
「アオイって言うのか、この辺りじゃ聞かない名前だなぁ」
「そうじゃな、じゃが、いい響きじゃの」
三者三様の反応が返ってくる。
あれ?意外と普通の反応だ。
ラノベとかだと、日本人の名前って馴染みのない形だから不思議に思われるものだったのに。
こうして自己紹介を終えると、さっきまで微笑んでいたエクサさんが急に真面目な顔になる。
「それじゃあアオイ君。何でこんな所にいたのか教えてくれない?君、見慣れない服着てるし、黒目黒髪だし、この辺りのヒトじゃないでしょ?」
今の私は、ジャージ姿にリュックという軽装。
武器の類も持っていなさそうに見えるし、異世界の住人からしてみれば変わっていると思われるのも無理からぬことだった。
信頼を得るためにも答えねば。
しかしその前に、正しておきたい間違いが一つ。
「あの、私のこと男だと思ってません?
こんな見た目ですけど一応女ですよ?」
エクサさんの表情が仰天から猜疑、そして申し訳なさそうなものに変わる。
「えっ···?
···えっと、そのっ、ごめんなさい! さっきの自己紹介の<少年>って呼ばないでって、そういう意味だったのね!?」
やっぱり分かって貰えてなかった···。
しかし、私が今着ているのはジャージ。当然、体のラインは見えない。
小柄な男の子に見えても仕方のないことだった。
···悪かったな!(胸が)ボーイッシュで!
間違いを正したところで空気を切り替えて、話を再開する。
「実は私、記憶がなくて···。ここから見て南西の方角の草むらに、気づいたら倒れてたんです」
取り敢えず、異世界人であることは伏せることにした。
まだこの人たちを完全には信用できてないし、情報を引き出したかったのだ。
「やっぱり?そんな気はしてたのよね」
やっぱり?どういうこと?
「あの···、それってどういうことですか?」
「ここ50年くらいかな、アオイちゃんみたいな子が稀に見つかるのよ。
私達は、彼らを灯人と呼んでいるわ。」
「ともびと···?」
「彼らは己が信ずるモノを守るため、この世界の人々の友として力を振るい、様々な分野の闇に灯を灯したと云われとる。その偉業を讃えて贈られた名じゃ」
「灯人···。」
口の中で、味わうように転がす。
私の他にも同じような人がいたという事実は、ゆっくりと頭に染み込んできた。
温かい何かが頬を滑り落ちた。
その量はみるみる増えて、私には止められなくなった。
「あぁ、一人きりじゃ···、無かったんだ···」
これまで驚きの連続で誤魔化され、塞き止められていた不安の濁流が、安心とともに溢れ出たのだった。
*
私が泣き止んだのは、それから10分ほど経ってからだったと思う。
たぶん。
私が泣いている間、エクサさんは微笑みながら頭を撫でてくれた。
男二人はオロオロして、どうするべきか図りかねているようだった。
泣き止んですぐ、ゲイズさんから声をかけられた。
「大丈夫か?これ、使うか?」
そう言って、ハンカチを渡してくる。
なぜ私が泣き出したのか分からずいまだに戸惑っているようで、ゲイズさんの顔は 心配そうだった。
それがちょっと嬉しくて、笑顔になって礼を言う。
「ありがとうございます」
「ぅぉうっ!? いっ、いいってことよ!」
ゲイズさんは、少しのけ反った後に返事をした。
顔が赤く見えるのは日差しのせいだろうか。
オーガスさんとエクサさんは、私が泣き止んでからは何かが分かったような顔をして立っていた。
と、オーガスさんの方が声を上げる。
「さて、今の時刻は4時半くらいかの?。ちと早いが夜営の準備を始めてしまわんか?。
話はその後にでも出来るわけじゃし」
「そうだな、別に急ぐ旅でも無いしな」
「分かりました。手伝える事とかありますか?」
「テントの設営は出来るかの?」
「多分、出来ると思います」
「助かるわい。そんなら、馬車のなかの寝坊助にも手伝わせるとするかの」
『スーーーッ』 「いつまで寝とるんじゃフランカーっ! 仕事じゃぞーっ!」
オーガスさんがこれまでで一番大きな声で誰かの名前を呼ぶ。
「あっ、まだ人いたんだ···」
ずっとほたってたんですね···。
私が木製の車と呼んでいたものが、馬車だったことにも今更ながら気づいた。
竜車とかじゃなくてちょっと安心。
(爬虫類にはトラウマがあるのだ。)
と、転がり落ちるようにして少女が馬車の中から現れる。
この場合は本当に少女という形容が正しい、なにせ見た目は小学5年生くらいだったのだから。
いあにもわんぱくそうな顔で金髪テインテールな美少女である。
···というかあれ、本当に転がり落ちたっぽいな。頭抱えてるし。
「痛ったぁ···。もう、オーガス!
せっかくいい夢見てたのに、いきなり大声で呼ぶことないでしょ!」
「オーガスさん、じゃろが! 起きてくるなり失礼な小娘じゃのぅ!」
赤くなったおでこを抑えたまま走ってきた少女、もといフランカちゃんとオーガスさんが怒鳴りあう。
「もう、ろうじんは怒りっぽくて嫌ね。···ところでそこにいる変わった見た目の人は?」
「私は葵、ついさっきこの世界に来た灯人なの。」
「灯人!?ほんとに?じゃあ、特別なスキルとか使えるの!?」
「すきる?」
「スキル知らないの?ふーん、ふふふ、仕方ないわね。私が教えてあげっ、痛たたたた!
オーガス痛いって!」
話の途中でフランカちゃんの頭が、後ろから伸びた手に鷲掴みにされる。
「さんはどうした! いや、そうじゃなくて。じゃから、仕事じゃっていったじゃろ。
アオイと一緒にテントを張るんじゃ、いいの···?」
『ガクガクガクガク!』
心身共に圧力がかかり、フランカちゃんが高速首振り機と化した。
こちらを向いて猛然と語りかける。
「さぁ、アオイ!話は後にして仕事するわよっ!」
テントを持ってくるために、馬車目掛けて走っていってしまった。
[私も呼び捨てなんだ···]、とか[<すきる>ってスキルのことよね?もしかしてスキルボードとかあったりするのかな?]などと考えながらフランカちゃんの手伝いをしに行く。
見た目的に一人じゃテントを運べなそうなので。
*
「それで、すごいスキル持ってるの?」
フランカちゃんが、キラキラとした目で私に質問をしてきたのはテントの中でのことだった。
あの後無事にテントを張って、夕食をとり、今は寝るためにテントの中にいた。
テントは2つしかなかったため、私とフランカちゃんで1つ借りて、残りを他のメンバーで使うらしい。
エクサさんは「枯れたオッサンとチキン野郎しか居ないから大丈夫よ~。むしろ私から奇襲してやろうかしら?」と言ってカラカラと笑っていた。
大人って凄い。
見張りも3人が交代でしてくれるらしい。
この辺りは基本モンスターが寄り付かないらしく、クレイジーボアが出たりしなければ見張りをするつもりも無かったとゲイズさんが言っていた。
話を戻そう。
私はフランカちゃんにこう答える。
「うーん、そのスキルってどうしたら分かるの?」
「<ウィンドウオープン>って唱えてみて」
「分かった。<ウィンドウオープン>」
唱えた瞬間に光が目の前に現れる。
それは翡翠色の光で出来た板のような物だった。
そこには、白い文字でこんなことが書かれていた。
西野 葵 (16歳) レベル-5
職業:異世界の学生
体力 100/100
魔力 150/150
スキル:特殊召喚魔術<カード> Lv1
称号:異世界の学生
灯火を継ぎし者
愛すべきカード馬鹿
パッと見てみて分かったことは、よく分からないスキルが手に入ってることと称号の意味が分からないことだけだ。
つまり分かんないことが分かった。
いやいやいや、それは早計だろう、詳細が見られないか試してみようと思い直す。
まずはスキルについて。
特殊召喚魔術<カード>:リアライズ オブ ソウルのカードに限り、そこに描かれた者たちを召喚することができる。召喚するものによって基本消費魔力が変わる。
また、基本消費魔力以上の量の魔力を注ぐことで召喚する物の強化が出来る。
次に称号に関して。
異世界の学生:異世界からやって来た学問を学んでいた者に与えられる称号 (知力が10上昇する)
灯火を継ぎし者:この世界の暗闇を照らす者に送られる称号
(無を除く全属性魔法への適性中上昇·特殊と名の付くスキルによる魔術の成功率を95%にする)
愛すべきカード馬鹿:カードゲームを愛してやまず、カードゲームの道を追及し続ける者に送られる称号 (使ったカードが1日に1回午前0時に、デッキホルダーの中に復活する。ただしカードが物理的に破壊された場合を除く。
異世界で新しい弾が出ると、内容を知ることが出来る)
と、書いてあった。
正直信じられないことばかりが書いてある。
···今日は寝よう。疲れた。検証はまた明日だ。
ちなみにフランカちゃんは、私がウィンドウとにらめっこしている間に寝ていた。
にらめっこは、意外と時間がかかっていたようだ。
あれ?この子昼も寝てたような···。
『カクッ』という音が合いそうな勢いで、私の意識は堕ちていった···。
次回は7/22日夜9時投稿予定です。
遅れないようにせねば···。
7/27 スキル説明を追加しました。




