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ベノムワールド  作者: 朝裏 刻


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3/11

#03封印の神殿

【あらすじ】


地下深くに眠っていた神殿。


そこには、長い時間封じられていた何かが存在していた。


偶然開かれた封印。

広がる黒い煙。

そして、静かに現れる謎の存在。


ジョージたちは、

ただの古代遺跡ではない何かと向き合うことになる。


その場所に隠されていたものとは何なのか。


そして、なぜジョージの記憶は反応するのか。


封印された物語が、少しずつ動き始める。



第三話 



地下神殿は、どこまでも静かだった。


幾本もの石柱が並び、天井は見えないほど高い。


その広さに、店員たちは思わず見上げる。


「 広いなぁ…。 」


「 地下にこんな場所があったなんて。 」


「 古代神殿って、本当にあるんだ…。 」


ジョージは黙ったまま辺りを見渡していた。


その時だった。


ケロが、ぴょん。


「 あっ。 」


ペタも、ぴょん。


「 ちょ、待って。 」


最後にモスが店員の肩へ飛び乗る。


「 わっ!? 」


ガシャーン。


神殿中に乾いた音が響いた。


台に置かれていた古びた壺がこっぱみじんに砕け散る。


札のような封印が何枚も舞い上がった。


誰も動かない。


しばらく沈黙が続く。


ジョージが小さくつぶやく。


「 …これ、さっきも見た流れだな。 」


次の瞬間。



「 お前だろ! 」


「 いや、ケロだ! 」


「 ペタが跳ねたからだよ! 」


「 モスだって飛んだじゃん! 」


「 俺じゃない! 」


「 だからって、俺でもない! 」


三匹の店員たちは、いつものようにペットのカエルたちと責任を押し付け合っていた。


ジョージは苦笑する。


「 …平和だな。 」


その言葉が終わるより早く、


モク……


黒い煙が壺の中から静かに立ち上る。


煙はみるみる広がり、


神殿全体を包み込んでいった。


「 見えない! 」


「 お前どこだ!? 」


「 これ足か!? 」


「 それ俺の手! 」


「 え、お前見えてるのか!? 」


「 夜行性だからな。 」


ジョージが呆れたように言う。


「 夜は、ふつう寝るもんだろ。 」


その時。


「 周囲が暗すぎます。ただちに照明を起動します。 」


tonicの声が、静かに辺りへ希望のように響いた。


人類の文明の利器であるスマートフォンが、柔らかな光を放つ。


白く優しい光が、黒い煙をゆっくり照らし始めた。


ジョージは目を細める。


「 …そんな機能、あったか? 」


「 通常機能ではありません。 」


「 現在、この空間に最適化されています。 」


「 …魔法か? 」


少しだけ間があく。


「 分類できません。 」


その直後だった。


煙の向こうから、ゆっくりと拍手が聞こえた。


パチ…。


パチ…。


妖しく、それでいてどこか優雅な声が響く。


「 ふふ……。 」


「 一番おいしい登場シーンだったのに。 」


「 まったく、機械というものは……。 」


「 文明の利器だか、文明の開化だか知らないけれど……。 」


「 少しは空気を読んでほしいものね。 」


煙の中から、黒と淡い紫の炎がゆらめく中、一人の女性がゆっくりと姿を現した。



まるで、止まっていた時間を巻き戻すように。


恐ろしい姿ではなかった。


息をのむほど美しく、どこか妖艶で、黒い衣をまとったその姿は、人ではないことだけが静かに伝わってくる。


その姿を見た瞬間、ジョージの胸がわずかにざわついた。


しかし、それ以上に気になるものがあった。


「 ……。 」



「 あくまだ! 」



「 間違いない!!」



「 ぼく、本で読んだことがある。 」



三匹のカエルたちは、珍しく声をそろえて騒いでいた。



( ん?カエルって本読むのか...。 )


tonicが反応する。


「 反対方向から、高純度のエネルギーを検知しています。 」


「 明るい気配が、向こうから近づいています。 」


黒い煙の向こう側。


淡い光が、ゆっくりと差し込んできた。


そこに立っていたのは、


天使だった。


白く透き通る翼。


優しく穏やかな光。


けれど、その瞳だけが、言葉にできないほど哀しそうだった。


何も話さない。


ただ、静かにジョージを見つめている。


その瞬間、胸の奥が強く締めつけられた。


( ……どうしてこんなに懐かしいんだ。 )


思い出せそうで、思い出せない。


何か、とても大切なもの。


何か、絶対に忘れてはいけなかったもの。


tonicが静かに解析を続ける。


「 記憶領域に、大きな変動を検知しています。 」


「 強い精神的衝撃によって、封じられていた記憶が刺激された可能性があります。 」


ジョージは答えなかった。


ただ、その天使から目を離すことができなかった。


対照的に、さっきまで漂っていたコーヒーのわずかな香りだけが、


この出来事が夢ではなく現実であることを、全員へ静かに引き戻す残酷な証に

なっていた。




♪モーツァルK.137inspireされています。(イメージソング)

【 あとがき】


第三話では、「封印の神殿」を舞台に、

ベノムワールドの大きな謎へ触れる入口を描きました。


地下へ続く階段。

誰も知らなかった場所。

そして、そこで待っていた存在。


不思議な出来事の中にも、

いつもの喫茶店らしい少しの騒がしさや、

仲間たちの掛け合いを残しています。


怖さだけではなく、

どこか温かさや懐かしさを感じる場所。


ベノムワールドでは、

謎の答えだけではなく、

その場所で何を感じるのかも大切にしています。


封印が解かれたことで、

ジョージたちの旅は新しい段階へ進んでいきます。


この先に待つものを、

一緒に見届けていただけたら嬉しいです。


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