恋人もオオカミさん
「そ、そこは触っちゃだめ……!」
制止の声を上げてみたが、子供の持つ純粋な好奇心の前ではまるで無意味だった。二人の手はまっすぐに、俺の頭頂部を目指して吸い寄せられている。
きっとこのままカルムの筋肉みたいに、あちこち触られるんだ。
ベタベタと触られていたのを思い出し、俺は先を想像して固く目をつむった。
先ほどエチェットに触れられたりキスをされてしまったせいで、うさぎ耳は敏感になってしまっている。そこに二人がかりで囲まれて触られでもしたら、絶対に平静ではいられないだろう。
そんな醜態を人前で晒すだなんて、とても――……。
「はいっ、どーぞ♡」
「ふぁっ!?」
エチェットの胸元から突如として引き剝がされ、俺はずいっとチェルたちの目の前へと差し出された。
まるで触られるのを嫌がって自分にしがみ付いてきた犬猫を、無情にも近所の子供に差し出した飼い主みたいに。
「え、えちぇ……! なにしっ――ンぎゃああああッ!?」
「まぁっ! 毛がふわっふわですわあぁ!」
「ふにふにしてる……。すごい、感触までホンモノ……」
「スベスベしていてあったかくて、なんだか小動物を撫でているみたい。気持ちいいですわ!」
「やめえぇッ!?」
両側から異なるタッチで耳をふにふにされて弄ばれ、微弱な刺激が伝わってくる感覚に、思考回路がショートしそうになる。
「やぁっ――! も、だぁっ……! だめえぇぇッ……!?」
あまりにも耐えられず、半泣きでエチェットに手を伸ばした瞬間だった。
「はいっ! しゅーーりょーー、ですっ!!」
「ンぶふっ!?」
また胸元へと突っ込まれ、頭ごと隠されるように抱かれてしまった。
ふたりは「えええぇーーッ!?」と不満げに叫び、俺に手を伸ばしてくる。
「もうちょっといいじゃありませんの、エチェットお姉さまぁ! もうちょっと、もうちょっとだけ!」
「しっぽ、しっぽも触らせて?」
「ダーーメッ、ですよ!」
エチェットはその手をひらりとかわし、なおも俺を抱き寄せてくる。
「耳と尻尾だって、立派な衣装のひとつなんですから。パーツが取れたりだとか、毛が抜けちゃったりしたら困るでしょう?」
「うっ……!」「そ、それはぁ……」
「それにセーアちゃんのお耳はチグルス様が提供して下さっている、一点限りの高級品ですから。本物っぽい手触りで、脳波? か何かを読み取って動く代わりに、とんでもない金額がかかっているシロモノなんですよ。もしも触って壊れでもしたら……!」
「「ひうぅぅぅっ!?」」
口ぶりを怖がって抱き合った二人は、飛びすさって俺たちから距離を置いた。
「も、もう触ろうとしたりしませんわ!」
「さわらないです! さわらないです絶対!」
その純粋な反応にくすくすと笑いながら、エチェットは俺を抱いたままで、床に落ちている衣装を拾い上げて部屋を出ていこうとする。
チェルはとっさに手を伸ばした。
「……あっ! ど、どこに……?」
「まだ耳と尻尾の調整が少しだけ残っているそうですから、私たちは別室に移りますね。それじゃあ、またあとで」
「え、ええ……。分かりましたわ……」
「またねー」
何か言いたげにしているチェルと、手を振って見送っているフィノを残し、俺たちは他の空いている部屋に移動する。
俺を床に下ろしてから、エチェットはおもむろに「ここで待っていて下さいね」と告げた。
「いいですか、ちゃんと大人しく待っていて下さいよ?」
「わ、分かった……」
そして扉はゆっくりと閉じ、ひとり室内に残されてしまった。
……何をしに行ったんだろう。急ぎ気味に遠ざかる足音を耳にしながら、エチェットの目的を考える。臨時モデルの仕事で来たと言っていたし、衣装を取りに行ったんだろうか。それか、もしかしたら手っ取り早く着替えに行ったのかもしれない。
とりあえず、自分の分を何とかしないと。
仕方なしに着替えを続行していると、また扉が開き、服と一緒に何故かつい立てを持ってきたエチェットが、ガタガタとそれを設置しだした。
やがて俺とのあいだに布が張られた壁ができ、うっすらとしたシルエットが、着替えの様子をぼんやりと浮かび上がらせる。
「……あ、あのさエチェット?」
衣擦れの音と、するすると動く影、つい立ての上に無造作に掛けられていく服。
あまりにも生々しい光景にいよいよ我慢できなくなってきた俺は、注意の意味も込めて彼女に訊いてみた。
「えっとさ。このつい立て、ちょっと薄手じゃないか? けっこうその、シルエットが透けて見えて……。同性同士ならともかく、あんまり意味がないっていうか……」
「そうですか? 意味はありますよ、ムードづくりなので」
「えっ?」
「じゃああーーーーーーんっ!!」
訊き返した直後につい立ての影からバッとエチェットが飛び出してきた。
「がおぉぉぉーーーーっ!! えっへへ、どうですか成哉くん? オオカミさんですよーっ! 候補の中から衣装が選べたので、これにしちゃいましたぁー!」
肉球のついた手袋を顔の横でニギニギさせながら、こちらを見て可愛らしく小首をかしげている。
彼女が着ているのは、布面積のほとんどに毛皮が使われている衣装だった。
露出度は高めで、頭頂部にはピンと立った三角の耳が着けられていて、腕には手の甲までを覆う長さの、肉球つきの長手ぶくろが。
上半身には胸の部分だけを覆う形の、肩ひも付きのトップスが着込まれている。
下はぴったりとした短めのスカートになっていて、そのすべてがモフモフとした、柔らかそうな薄茶色の毛に覆われていた。
「――ぁがっ…………! かっ、ぐおぉぉ…………!」
すぐさま反応を返すべきだとは思ったのだが、まったく言葉を紡げない。
だって彼女の豊満な胸はいまにも零れそうになっていて、実際にトップスの穴あき部分からは、深い谷間と一緒にむにゅうっと白い一部分が押し出されている。
そんな柔らかそうなものを包み込んでいるのがふわふわとした毛皮で、そのうえスカートはピッタピタで、お尻の形がほどよく分かって……。すごく、良い感じに……。
さらに言えば上にはボリュームのある尻尾が着いていて、エチェットが腰を動かすたびに、ふりふりと可愛らしく揺れて……。
「はッ……! はなぢ、でそう……!」
思わず鼻に手を添えながら言うと、エチェットは満面の笑みでこう答えた。
「出しちゃって良いんですよ、いぃーーっぱい♡」
「死んじゃうって!」
冗談抜きで出血多量になってこの世からオサラバしそうだ。
なんなんだこの破壊力は。俺を殺すために天から遣わされた死天使なのか? そうか死天使ってエチェットのことだったのか、なら殺されても文句は言えない。
なんて、もう自分でも何を考えているのかさっぱりだ。
「な、なんでオオカミ……? もっとこう、エチェットだったらヒツジとかさ。ふんわりしていて、柔らかく包み込んでくれる感じの……」
喘ぎながらも何とかマトモな反応を返すと、エチェットは鼻を気にしている俺を嬉しそうに眺めながら言った。
「ふふっ。成哉くんにとっての私は、ヒツジさんなんですね? 確かにヒツジの衣装もあったんですけど……。成哉くんに合わせた格好にしたかったので」
「……俺に?」
「はいっ! やりたいことがあって」
元気よく答えたかと思うと、エチェットは大きく一歩を踏み出した。
あっという間につい立てという名の仕切りは意味を成さなくなってしまい、此処はただ狭いだけの、二人きりの空間へと様変わりしてしまう。
そうして引け腰でいる俺をぎゅっと抱き締めてきたエチェットは、鏡の前へと向き直らせ、自分と俺とを見えるようにし。
背後から抱き込む形で、
「た・べ・ちゃ・う・ぞっ?」
甘い囁きとともに、俺のうさ耳をはむっと唇で食んできた。
「ひあぁッ?!」
「ふふっ、これがしたかったんです。それ以外にありませんよ、選んだ理由なんて。別に好んで露出度の高い恰好になりたかったわけじゃありませんし。胸元のスリットだって、これちゃんと自由に塞げるようになってるんですからね?」
スリット部分に指を差し入れたエチェットは、奥に仕舞われていた布地を引き出し、裏側にあるボタンを片手で器用に留めてみせた。
胸部分の窓はあっという間に黒い布で覆われ、裏側から留められているのもあって、けっこう鉄壁に見える。
「ほら。谷間が見えなくなったでしょ?」
「んっ、うん……」
「でも今は開けておきますね。成哉くんにだけ、ト・ク・ベ・ツ、に。私がそうしたいので。……ね?」
「…………ん…………」
うさ耳を繰り返し甘噛みしながら、たまに本物の耳にもエチェットの艶めかしく熱い吐息がかかってくる。
何度も抱き直そうとするたびに、服越しに、彼女の細い指先が俺の肌を這ってくる。
本来なら古傷を思い出してしまうはずのそれは、全身のあちこちが疼いて堪らないぐらいの、心地よい痺れをもたらしていた。
「あ、あんまりやると……! へっ、ヘンな気持ちになってきちゃう……!」
「なっちゃえば良いじゃないですか、男の子に」
天使のような悪魔の囁きが、俺の脳髄に快楽を運んでくる。
「そうやって女の子のままでいると、私が成哉くんをまるごとぜぇぇーんぶ食べちゃいますよ? 私、こう見えてもけっこうオオカミさんなので。うさぎさんのままでいたくなければ、ちゃあんと私を美味しいヒツジさんにして下さいね?」
きゅっと強めに尻尾を摘ままれ、反射的に自分のものとは思えないような甲高い悲鳴が漏れた。
「ひゃぁんっ!」
「……………なにをやっているんだお前は」
ガチャリという音がしたのと、俺が甘ったるい声を上げたのはほぼ同時だった。
気付けば扉の傍にはカルムが立っていて、あまりにも呆れ返った様子に、外に自分の声が漏れていたのかと一瞬焦ったのだが――どうやら彼の非難の目は、エチェットに向いているようだった。
「まったく、話をしやすいように部屋を移動したのかと思えば。ウェスを可愛がるふりをして、そうやってすぐに手を出してイチャイチャと……。仕事中なんだから控えろ、そういうのは」
「仕事中だからこそ、すぐに疲れないよう適度に気を緩ませてあげているんじゃないですか。というか、わざわざ盗み聞きをしていたんですかあなたは? とんでもない変態ですね」
「どっちが変態だどっちが!」
お互いに鋭い視線を送り合いながら、エチェットとカルムは協力してつい立てを移動させ、部屋の中にスペースを作っていく。
その間にも言い合いは続いていて、相変わらずの喧嘩っぷりだった。
「そもそもウェスはうちのメルダと同じく性行為にトラウマがあるようなんだから、もうちょっと優しく柔らかに接してやれ! お前はグイグイと押しつけ過ぎなんだ、情緒がないっ!」
「えぇ~? 押し付けるってなにをですかあぁ~?」
「お前の欲望とそのムダにでっかいパイをだ、ムダにでっかいだけのッ! いつもウェスがぎゅうぎゅうと押し付けられて、苦しそうにしているだろうが可哀想に! そのうち窒息するぞ!」
「無駄にでっかいパイが成哉くんは好きなんだから、こっちから甘えさせてあげようとするのは間違ってはないと思いますけど?」
「お前がウェスにそうしたいだけだろうが! 自分がベッタベタに甘やかして、可愛がって溺愛したいからそうしてるだけで!」
「そうですけど何か問題が? 成哉くんをベッタベタに甘やかして、可愛がって溺愛して、甘々のトロットロになったところを独り占め出来ちゃうのが、彼女である私の特権ですから? カルムには出来ないことが私にはできちゃいますからぁぁっ?!」
「このおぉぉッ……!」
なにを議題にしているかはよく分かんないけど……いや分かりたくないんだけど……。よくもまあ飽きずにこれだけ喧嘩できるもんだ。
少々呆れつつも、いつも通りという感じでちょっと安心してしまう。
旅を始めたばかりの頃から、二人はずっとこんな調子だ。
父さんいわく、冒険者の仕事をしている時にはそんなに仲は悪くはないそうなのだが……いや。父さんのことだから、喧嘩の最中でも「仲が良い」とか思っていそうだ。考えるのをやめよう。
ともかく二人は口を動かしながらもテキパキと動き、人が集まりやすいように場を整えてくれた。そうしてあとからチグルスさんとマネージャーが入ってくる。
「やあ、お待たせ。ごめんね、周りを見回っていたら来るのが少し遅れてしまった」
軽く手を掲げながら、俺に笑いかけてくるチグルスさん。
彼もまたカルムと同じように、ゴシック・テイストな黒の燕尾服を着ていた。
黄緑色の長い髪にはビロード生地の黒いリボンを結んでいて、いつも掛けている眼鏡はそのままに、いつものビジネスカジュアルな服装をよりシックで豪華な装いにしている。
エルフ耳にはお洒落にカフスなんて付けていて、私生活でもあまりネクタイを緩めようとしない彼だからこその、また違った一面が感じられた。
「ざっと確認してみたんだけれど、今のところ、怪しそうな人物は見当たらなかったよ」
軽くため息をつきながら、チグルスさんは唇に手を当てて考え込む姿勢に入った。彼の所作はいつも気品があって落ち着いていて、格好も相まって洗練された印象を受ける。
ほんと、同じお洒落で神託者でも、イオニアさんとはまったくもって真逆だ。
あの人はどこまでも自由で奔放で、他人の型には絶対にハマろうとしない。カッチリとした恰好も苦手みたいだし。
……なーんてことを言ったらきっと、ふたりは「コイツと並べるな」って怒るんだろうな。犬猿の仲だし。
俺がそんなことを考えている間にも、チグルスさんの言葉は続いていた。
「遠隔で監視している奴からも、特に報告はないようだし。配付会の開始まではあと二十分もないぐらいだけど、まだ姿を見せてはいないのかな。もしくは、うまく周囲に溶け込んでいるのか……」
彼は燕尾服のポケットから革の手帳を取り出すと、それをパラパラと捲りだした。ページを探りつつ、こちらに目線を送ってくる。
「ウェスティンくん。君を襲ってきたという女の特徴を、もう一度細かく教えてくれるかい? いちおう念のためにね」
「あ、はい。えっと……化粧が濃いめで、金の髪を派手に巻いていて……。黒のぴったりしたドレスを着ていて、けっこう肉付きが良かったです。ボンキュッボンな体型の、およそ三十から四十代ぐらいの見た目の女性で……」
思い出しながら答えていると、ふと、真横からもの凄い視線を感じた。
エチェットが不満そうな顔でわざとらしく衣装のずれを直そうとしている。胸を寄せるような恰好をしてみたりだとか、スカートのお尻部分を触ってみたりだとか。何だか可愛らしいので、「どんな体型の女性だろうと俺はエチェットじゃなきゃ嫌だよ」と言うのは、あとにしておくことにした。
「……三十から四十代ぐらいの見た目の女性で、よく裏通りにいる風俗関係者っていう雰囲気でしたね。喋り方からしても、それぐらいの年齢で女っていうのは合ってると思いますけど……。父さんの乗っ取りの件もあるし、あれが本当の身体かどうかは……」
「分からない、か。とりあえず、その情報も捜索に使わせて貰うよ」
俺が言った内容を手早く書き込んだチグルスさんは、手帳を仕舞い込むとパッとマネージャーに目をやった。腕時計を確認した彼は、「そろそろですね」とチグルスさんへ頷きを返す。
「もう持ち場に着いておいた方がいいみたいだね。それじゃあセーアちゃん、カルロくん。今日は任務よろしくね」
「はいっ!」「ああ。よろしくな」
「私も皆さんが行けないようなところを、なるべく捜してみますので!」
「ありがとう。助かるよ」
エチェットの言葉に微笑んだチグルスさんは、今度はポケットから通話機を取り出すと、また別の人物と連絡を始めた。
さっき遠隔で監視している奴とか言っていたし、俺たち以外にも協力して任務にあたっている人がいるのかもしれない。
解散ののちに、それぞれの持ち場へと散っていく面々。
俺は店の小規模なイベントスペース内に設置されたお立ち台へと向かい、カルムはその近くに警備員として待機。チグルスさんは入口付近で待機列の整理。エチェットは大人服のコーナーで仕事の傍らに監視と、なかなかに大変そうだ。
そんな俺たちのやや緊張した心持ちとは裏腹に、周囲は浮き足立った雰囲気に包まれていた。
スタッフもいつもより忙しそうに動き回っていて、人の数も多い。これは捜す難易度がかなり跳ね上がりそうだ。
「あっ! セーアちゃん、遅いですわよ!」
「おそーい」
「ごめんごめん! 調整が遅れちゃって」
早くも場に控えていたチェルとフィノに迎えられ、俺は持ってきたクッキーとサイン色紙を二人に配った。
半券のチェックとスタンプを押すのはスタッフの役回りなので、俺たちはこのふたつをお客さんに配る係だ。
「このサイン、まさかセーアちゃんひとりで書いたの? これぜんぶ?」
「お見舞いの時に言ってくだされば、これも手伝いましたのに。ちゃんと寝ましたのセーアちゃん?」
渡されたサイン色紙を前に、二人はびっくりしていた。
崩した筆記体で、『ピィニア』と書かれたサイン。その下には『会場に来てくれてありがとう! またライブ見に来てね☆』というメッセージを書き加えておいた。最初は『ピィニア』とだけ書くつもりでいたのだが、それだけではなんだか寂しかったので、フィノが作っていたメッセージクッキーにならって、俺もひと言添えておいたのだ。
それを百枚ぶん書いたので手も少し痛くなってしまい、徹夜ぎみになってしまったけど……誰かに喜んで貰えるのなら、後悔なんてまったくしていない。
「だいじょーぶ、ちゃんと寝たよ」
「本当ですの? もうっ、今度はわたくしたちにもサインを書かせてくださいませね!」
「さんにんで、ピィニア」
フィノがサイン色紙を掲げ、『ピィニア』と書かれた部分をちょんちょんと指で示してみせる。
「セーアちゃんに、チェルに、わたし。さんにんで、ピィニア」
「…………うん。だねっ!」
俺の返事にふたりは笑い、三人でともに手を取り合いながらお立ち台へと昇る。
「今度はみんなで書こうよ! それぞれにメッセージや、絵なんかも添えてさ!」
「ええっ! 今からなにを書こうか、楽しみですわ!」
「クッキーもまた作らなくちゃ」
手作りクッキーがたくさん詰まった籠をスタッフから渡され、それを大切そうに抱え込んだフィノが、ちょっとばかり震えた声で呟く。
「……お客さん、喜んでくれるといいな」
「喜んでくれますわよ!」
チェルは明るく言い、店の外を示した。
「だって皆さん、もうすでにあんなに嬉しそうですもの!」
ガラス越しに並んでいる人々が見える。
彼らの表情は一様に、期待と興奮とでキラキラと輝いていた。




