37話 ボス部屋に来てみたものの
思ったより早くボス部屋に到達すると、一度戻ってレベリングしたくなる。
「少し早いかも知れないが、昼飯にしよう」
「賛成!」
「はい」
保管庫から、昨日買った安価な絨毯を出す。
「えっと、これは」
「広げてくれ」
絨毯はロール状になっている。
エマが広げてくれているうちに、俺は靴を脱いだ。
「土禁な」
地べたには座りたくないからな、特に食事の時は。ざっと6畳ぐらいの広さになった絨毯の上に乗って座る。やっぱりゴザの方が良かった気がする。
「あのう、ドキンとは?」
通じてなかった。
「ああ。この絨毯に乗る時は、靴を脱ぐようにということだ」
「靴を脱ぐのですか?」
ん? 脱ぎたくないのか。
靴を脱ぐのは、地球でも日本含めて少ない風習だったからな。
「エマ。脱ぎたくなかったら、端で腰を下ろすだけなら良いぞ」
「申し訳ありません」
『足が匂うかも知れませんからね』
まあその恐れがあるだけで嫌なのだろう。
「ああ、いや。今度は椅子を買っておく」
「アタシは大丈夫」
リザはサクッと脱いで、絨毯に上がってきた。座るかと思ったら、寝っ転がっている。
「わぁ、ふかふか。なんか贅沢」
まあ高くはなかったけど。もっと毛足の短い方が良かった気がする。
「おい、食事を出すぞ」
「はぁい」
リザは起き上がって、正座になった。
買い込んだトレイの上へ、肉串が山盛りの皿と切れ目を入れて野菜を挟んだパン、それにピッチャーに入った炭酸水を保管庫から出す。
「ケント、別のトレイとお皿はある?」
「ああ」
どうしたいのか分からないが、余分に買ってあるので、出してリザに渡す。すると彼女は、別の皿へ肉串を5、6本と、サンドイッチ3つを移した、そしてマグカップに炭酸水を注ぐ。
「えっ、私にですか? あっ、ありがとうございます」
そして、それをエマが腰を下ろした絨毯の端まで持っていって置いた。
ほう。良いところがあるな。確かにエマは外向きに座って居るからな。中央に置いたら取りにくい。
マグカップに注いで、リザに差し出す。
「ありがと!」
「じゃあ、食べよう」
†
昼食を食べ終わり、少し休憩だ。
「ねえねえ。レダちゃんには食べさせなくていいの?」
レダは豹の形態で、俺の横で気持ち良さげに寝そべっている。
「ああ。物は食べないから、こうやって魔力を与えては居る」
ちなみに俺はレダを撫でてやりながら、魔力譲渡している。
「え? 魔力を食べるの? ……あっ、あれね?」
自分にも譲渡されたのを、思い出したようだ。
俺のすぐ脇に寄ってきて、顔を近付ける。
「レダちゃんは、そのぅ。催さないの?」
囁き声だ。エマに聞かれるのが嫌なのだろう。
そのエマは、眉根を寄せて、身体を捻ってこっちを見ている。
「さあな。だが、俺の言うことはよく聞くようになったな」
それが、スキル使役の効果かどうかは分からない。
「えぇぇぇ。アタシもレダちゃんに魔力をあげたい」
意外に話に喰い付いてきた。
「魔法士は、MPが減るのが嫌なのじゃないのか?」
銃器に例えたら、残弾数相当だからな。
「そうだけど。今日はあんまり出番がないし」
確かに魔鉱獣は、俺とレダがほとんど斃しているからな。
「まあ、魔力譲渡できるならやっても良いが」
「本当? やったぁ。レダちゃぁぁん」
リザがにじり寄って来て、俺に代わって背筋を撫で始めた。
リザは、可愛いならば人型でも獣相でも良いらしい。
忌まわしい首輪だったと、嫌悪を示していた最初の状況とは真逆だ。まあ、仲が良いのは悪いことではない。
レダの方も、一瞬頭を上げてこっちを見たが、俺が肯くとまた弛緩した。
†
食休みも済ませたので、食器類と絨毯を収納して立ち上がる。そのまま、すぐそばにある階段を下った。
第5層だ。
若干、床や壁に湿っぽくなっているところがあるが、さほど上と変わりない。明るさも若干暗くなったかなという程度だ。
一本道なので右に折れて進み出す。
百mも進むと蹄の音が聞こえてきた。曲がり角の向こう。
1、2……。
「3つ来るぞ」
見えた! やはり3体。
暗茶色の体毛、体高は腰ほど。狂猪だ。
やや不器用そうに角を曲がると、横一列となって猛然と突っ込んできた。
「後ろに1頭任せる!」
叫んで跳び上がると、天井近くで躰をひねる。
そのまま壁を蹴って反転、左を走る猪に切っ先を突っ込む。
フゴゥゥゥ。
渾身の力を込めて青銅の剣を脳天に突き込むと、半身回して足から着地。哀れ、猪は勢いそのまま転がり壁へ激突した、
右はレダが襲擊、真ん中は? 振り返るとエマが、通過した猪を首筋から串刺しにしていた。
左手で大盾を構えているから、槍は右手のみで支持しているはず。それであそこまで突き込めるのだから、並々ならぬ膂力ということになる。
ボフボフと破裂音がして、床に青銀が散らばったが、まもなく消えた。
「流石だな。エマ」
「いえ。ケント様こそ、あの体勢で見事に突きを入れるのですから。素晴らしいの一言です」
うむ。
ん? リザがそっぽ向いている。
私にも、魔鉱獣を回しなさいよ。そう言いたいのだろう。
それから1時間余り、時折わざと魔鉱獣を後ろに進ませつつ、順調に狩を熟していると扉が見えた。
「ボス部屋か……あれ?」
貰った地図を見直したが、やはりここだ。
「うーん」
「どうかしましたか?」
「いや、扉が開いているなと」
「はい?」
なぜだろう。エマは、当然のことのような反応だ。
『ご主人様。階層ボスの部屋が閉ざされているのは、当該の迷宮における未踏破部屋もしくは、そこから遡って精々5層から10層までに部屋に限られます』
『そうなのか? どうしてだ!』
『ボスは、一般の魔鉱獣より経験値が高くなっています。特に初めての突破からしばらくは顕著です。だから冒険者は迷宮の深部を目指します。つまり再出現のためのリソースがたくさん必要となります』
『だから?』
「とりあえず中に入りましょう」
アイが顕現した。ボス部屋の中を腕で指している。
「おっ!」
部屋の真ん中に、デカい人型の何かが立っていた。
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訂正履歴
2022/11/18 僅かに表現変え




