闘技場へ
「えっと、次に行くのは服屋でも良いか?」
「え⁉︎涼太もついにオシャレに興味を持ったの?」
「そんナ!涼太はこっち側だと思ってたのニ!」
「そんなわけないだろ、てか楓は用事があるの知ってるだろ」
「ちぇっ、少しくらい興味持ってくれても良いのになぁ」
「はいはい、また今度時間があればな」
俺達は街の服屋の中で比較的大きく、人気があるらしい店へと向かう。
「あら、いらっしゃい、今日は何をお探しですか?」
凄いカラフルな羽にカラフルな服を着た鳥の獣人の店員が話しかけてきた。
「フード付きのコートってあるか?」
「ございますよ」
「じゃあそれで頼むわ、楓とカノンは適当に時間潰しててくれ」
「はぁーい、じゃあこっちに来てくださいね」
「分かった、じゃあカノンは私と一緒にまわろうね」
「いヤ、私は別に服に興味ないゾ、エ?いヤ、だから無いんだっテ、えっちょっト、助けてくれぇえエ!!」
……………よし、俺は店員に選んでもらうとするか。
「えっと、この店にあるのはこれくらいですかねえ」
「おぉ、十分だ」
10メートルに渡り約3段、色とりどり、サイズも取り揃えてる。
が、羽用の穴とか尻尾用の穴がないな。
「純粋な興味だけなんだが羽とか尾とかってどこから出すんだ?」
「それくらいの穴なら5分も有れば開けられますよ」
「へぇ、スキル様々だな。あ、じゃあこれで」
適当な紺色の薄手のコートを買う。
「はい、ありがとうございました。」
俺の買い物はそこで終わりコートを羽織って外へと出る。
待つ事30分、楓が一人で、いや、後ろにカノンの気配があるな。
「ほらカノン、隠れないで」
「うゥ、動き辛イ……」
「おぉ、服変えるだけで随分と印象が変わるな。」
正直どの服がなんて種類のなんて服なんて分からんが普段寒色系やボーイッシュな服を着てるカノンが暖色系で統一してスカート履いてるだけでもどう考えても楓が選んだことが分かるな。
「……おつかれ」
「おゥ」
それから教会を出てのべ数時間、特にやる事もなくなり包丁やフォーク等の日用品や便利アイテムを買ってはアイテム袋に入れるを繰り返している。
「なァ、そろそろ終わりで良いんじゃないカ?流石に足が疲れてきたゾ」
「そうか?俺はそんなに疲れてないがレベルが影響してるのかもな、それならちょっと早いが最後の目的地に行くか」
耐久とか筋力がもろもろ上がってるわけだからそりゃそうか、って事は女子の買い物について行ったら疲れるのはやっぱ気疲れなのだろうか。
「そうだね、受付ならそろそろ空いてそうだし。」
「おう、じゃあカノンと楓はゆっくり飯でも食いながら見ててくれ、」
最後の目的地、それは街の中央付近にある闘技場だ。
強者を探すのにこれ以上の場所はないだろ。
今日そこでチャンピオンが戦うらしく本戦後の当日の飛び入り参加も歓迎らしい。
チャンピオンが圧倒的すぎて今や飛び入りのチャレンジャーは居ないらしいがな。
建物の全容は元の世界でいうコロッセオそのままだ、正面入り口を通ると受付が存在し見るだけなら金は要らないらしく飛び入り参加やVIP席の場合は受付に話しかけるらしい。
受付は飛び入りがいなさ過ぎてちょっと船を漕いでるみたいだ、いやVIPの対応しろよ。
「じゃあ俺はここで別れるぞ、また後でな」
「はーい、じゃあ楽しみにしてるよ」
「負けるなヨ?」
「おう、適当に頑張ってくるわ」
やりとりを終えて受付へと向かうと受付の人が寝ぼけ眼を擦りながらこちらに焦点を合わせる。
「はぁい、VIPっすねー、カード提示して奥へどーぞー」
うわぁ、やる気無いのが凄いわかる、こんなんでよく雇って貰えてるな。
「いや飛び入りです」
「え?あー、やめた方が良いっすよー、いるんすよねー、そうやって怪我する人、とりあえず今日は見るだけにしたらどうっすかー?」
へぇ、こんなでも人の心配とかするんだな、まあ受付って花形的な所もあるしそりゃそうか、睡眠不足とかなのか?
「……書類作りも面倒だしねー」
違った、こいつマジでただの怠惰なダメ人間だ、ワンチャン大罪だったりして。
「飛び入りで」
「あー、はいはい、面倒だなー、じゃあこれ書いてね、後証明書」
自己責任の同意書を書かされ、証明書は冒険者カゼキのものを使う。
「あー、そこと、そこと、そこも書いといてー」
「スタッフ記入欄って書いてるじゃねえか、仕事しろ」
「えー、チッ、座ってりゃ良い日だと思ってシフト入れたのになー」
ぶつくさ言うスタッフに書類を書かせて選手控え室に入った。
あのスタッフどれだけ仕事してないんだよ、滅茶苦茶時間かかったじゃねえか。
試合チャンピオンの本戦始まっちゃってるじゃん。
歓声凄いな、流石はチャンピオンの本戦ってところか。
…
……
………
ん?歓声がやんだな、もう終わったのか。
歓声がやんで数十秒してスタッフがやってきた。
「カゼキさん、準備お願いします。」
「分かりました、すぐ行きます」
カゼキの名前も広まった方が良いし、まあ多少目立つ分には良いだろ。
「さてと、じゃあ行きますか。」
席を立ち一直線の廊下を進む。
闘技場に設置された円形の戦場に近づくと歓声がやんでなお、ざわめいている音と熱気が全身を叩く。
それらを感じて間もなく会場のマイクで俺の紹介がされた。
「今回王者に対戦を挑んだバカヤロウの紹介だぁ!Bランク冒険者のベテランハンター!かと思いきや登録日はここ最近の期待の超新星!!おっとみんな、Bランクだからって役者不足だと思ってくれるな!この男なんと称号が帝国の英雄!!!この間の帝国Sランク魔獣討伐の太刀役者!!!カゼキィィイ!!!!」
帝国の英雄ってやっぱ目立つよな、名前が知れ渡るようにわざわざ冒険者カードに目立つようにあの称号くれたんだろうが、それにしてもなぁ。
気恥ずかしい思いもあるが逃げるわけにもいかず戦いの場へと踏み出した。
相手の紹介は……ないか、俺は乱入者で王者の紹介は既に終えてるんだろうな。
俺はここで初めて王者を見る。
見たところ獅子の獣人か、身長は2mほどで肉体は鍛えられてまさに肉の鎧といった感じだな。
得物は大剣を背に背負ってるだけ、だが獣人である以上はその爪や牙も下手な鎧程度なら軽々と切り裂き穴を開けるだろう。
服装は肉体美のお陰で腰巻に大剣の鞘を背負ってるだけであっても随分と絵になる。
強いな。
「俺の名はフォーグ、お前が飛び入りの参加者か、随分と久しぶりだぞ良い勝負を頼む」
王者は余裕の表れか気さくに話しかけてきながら手を出す。
「あぁ、全力で戦ってくれ」
その握手に応じながら少し不敵に笑ってみる。
「ガハハハハ、威勢のいい参加者だ、俺の全力を引き出せるならな」
俺たちは握手をやめてある程度の距離を置き開始の鐘の音を待つ。
俺はグロニアを右手に持ち左足を前にし、右足を後ろに下げ腰を落とす。
フォーグは片刃の大剣を出し肩に担ぐ。
「さぁ行くぜ!!!飛び入り戦開始ぃ!!!!!」
司会者の言葉と共に鐘の音が鳴る。
直後2人の行動は同じ、俺は下段にフォーグは上段に得物を構えて相手に向かって全力で駆け出す。
5秒とかからず互いの間合いに入り両者は全力で武器を振るう。
さっきの鐘の音なんて比べ物にならない爆音からこの戦闘は始まった。




