その実力とは
メルトリア家に誘われた翌日、俺達は国立図書館に来ている。
メルトリアさんはここ数日行われている、この街の守護者達との会議があり家を開けるとのことで俺たちも外出することにした。
図書館に俺はこの国の神話や英雄譚を、楓は歴史を、カノンは鍛治技術を調べに来ていた。
訪れて数時間、昼食どきに一度集まった。
「俺の方は見つからなかった、そっちどうだ?」
「こっちも全然なかったよ」
「私も見つからなかったナ、ここ最近の技術書ばっかりだ」
俺達が探してるのはこの国が誕生したあたりに書かれた本だ。
メルトリアさんの言った事が嘘とは限らないが100%信用は出来ない、調べておいて損もない筈だ。
という事で結構な時間調べて周ったが見つかるのは見つかるのはここ数十年の要約された話ばかりで原典のようなものは見つからない、古くても200年前が最古だ。
「流石にそこらに放置はしてないか」
「そうかもね、昔の重要な本は裏に保管されてるのかも」
「私の方はあまり興味湧かないんだよナ、昔の技術書に魔導遺物の作り方が乗ってるわけでもあるまいシ」
おいおい、と言いたくなるような事言ってるな。
「そんな事言わずに一回くらい読んでみろよ、世界観が変わるかもしれんぞ」
カノンなら一回ちゃんと読めば理解しててくれるだろ。
カノンはそんなもんなのカ?と言いながらだが一応読もうという気にはなっていた。
「何かお探しですか?」
そんなタイミングで1人の司書が話しかけてきた。
白を基調とした制服に同柄のローブを羽織った山羊の獣人だ。
「昔の本を探していてな、一番古いもので何年くらい前まである?」
「そうですね、出しているのですと——」
「出してないのも含めるなら何年だ?」
「そうですね、そうなるとこの国の建国期にまで遡りますが、読むには国からの許可証が要りますよ」
許可証か、メルトリアさんって発行できるんだろうか、無理でも掛け合ってもらうくらいは出来そうだし頼んでみても良いな。
「そうですか、じゃあ許可証なしで借りれる、古い鍛治系統の技術書を見せてください」
「はい、分かりました」
司書はそう言うと本を取りに裏へ引っ込んでいった。
「許可証か、まあ機密事項な訳だしそりゃそうか」
「私達って国に雇われたわけでも誘われたわけでもないからね、許可を貰うのは難しそう」
情報制限してる国が真っ当な歴史書を残しているかって疑問はあるし、見れないならそれはそれで良いんだがな。
流石に完全に抹消させにいったりはしてない筈……。
と、考えていると意外にも早く本は持ってこられた。
「こちらでよろしいでしょうか」
持ってこられた本の厚みは下手な辞書ほどもある。
軽く礼を言って受け取るとカノンに渡す。
「とりあえず一回目を通してみろ、興味が湧いたらまた後日に来るぞ」
「うん分かっタ、けどなァ、これでも技術書は結構読んでるんだゾ?」
カノンはその場で立ったままぶつくさと文句を言いつつパラパラと本をめくっていた。
「ンー、やっぱり大体知ってるんだよナ、知らない技術も今のものの劣化版ばっかりダ………これも知ってる……………これもあれの劣化………これも劣化」
知ってるような技術しか書いてないんだろう、他国の技術書だろうとなんだろうと職人が集まって出来た帝国ならその技術は伝わっているはずだ。
誰にでも分かる様に、伝わる様に、分かりやすく、単純に
「……これも劣化………これモ、これモ…これモ……これモ………あレ?ほんとに劣化カ?ン?あレ?」
だが、それじゃあ伝わらない、分からない、過去の天才達が、偉人達がわざわざその技術を回りくどい書き方で本にして残したかった本当の理由や、その応用の方法が。
カノンは一度パラパラと流し見ていた本を最初から開き食い入る様に見始める。
カノンが今見ているものこそが、凡人が何度みても分からない、どう説明されても見出せなかった、天才の考えであり、偉人の思考であり、英雄の領域だ。
「興味持ってくれたのは良いとして、また後日って訳にも行かなそうだな」
「確かに、すごい集中して読んでるもんね」
一度カノンがその本に興味を持ってからはその場に座り込んで鬼気迫る勢いで読んでいる。
無理矢理連れ出そうとしても意地でも本を話そうとはしないだろうな。
「有料でなら貸し出し可能ですよ、もし良ければ手続きしましょうか?」
「出来るんですか、じゃあお願いします」
保管してる様な重要な者でも貸し出しって出来るんだな。
「じゃあその本をそのままお持ちください、期日は1週間、あなた方3名への貸し出しとなります」
司書がそう言った瞬間、足元から魔法陣が広がり俺達の足元にも到達する。
楓の反応は特になしって事は危険性はないみたいだな、魔法陣や魔素の動きから魔術構造は分からないが台詞的には契約魔法的なものか?
「はい、これで貸し出し手続き完了ですね、お代は5000ライドになります」
5000って高、大事な本の貸し出しとなりゃそんなもんか、しかも司書の魔法みたいだしMP回復用のアイテムまで考えるとまあ相場か。
「俺たちみたいな子供によくその値段の手続きを何も言わずにやったな」
と言いつつ財布から金を取り出して渡す。
「普通の子供3人組なら、そもそもその玄人向けの本なんて紹介しませんよ」
そう朗らかに笑いながら返された。
「そうか、じゃあ俺たちは帰る、ほらカノン立て、その本は借りたからもう行くぞ」
「分かっタ、じゃあ行ク」
読みながらずっとぶつぶつ言っているカノンの背を押しながら図書館ので口へと向かう。
「ありがとうございました、また落ち着いたら色々読みに来ます」
「そうですか、お待ちしております、あとその本は返しにこなくても良いですよ」
「はい分かってます」
後ろで楓も所々意味不明な挨拶を済ませて此方へとかけてきた。
「なあ、返さなくて良いってどういう事なんだ?」
「え?あぁ、えっとそれはね、その本って魔力視で見れば分かると思うけど原本じゃないよ」
そう言われて本を見てみると確かに不自然なまでに籠った魔力が多い。
「魔力で作った偽物の本か、それに魔法って俺たちには影響はないから本が対象にされてたのか?」
「正確には本と私達だね、私達以外はあの本の内容を見れないように本を弄ったんだと思う」
「なるほどな…………想像以上って感じだな」
「うん、かなり信用できると思うよ。」
俺達が今日図書館へと足を運んだ理由は二つある。
歴史書、技術書等に書かれた知識の収集。
そしてもう一つが、対多数の魔物戦の為の戦力把握であり、実力者の探索だ。
「流石に守護者までは行かないが確実にそれに次ぐ実力者、下手すりゃそこらの冒険者より断然強い」
「うん、そして恐らくあの人と同レベルがまだ数人、今日中に周りきれるかな?」
「まあ焦ってもこの国が動かない限りはする事もないし、ゆっくり情報収集でもしながら戦力の把握でもしておこうぜ」




