↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/75

作戦会議

 風呂から上がると部屋の雰囲気が少し変わっていた。

 警戒のような空気のピリつきとはまた別の緊張感、カノンも楓も見た感じ何もない。


「なんかあったのか?」


 自然に、まあ自然とかいってもリア充じゃないし自然かは分からんが切り出してみる。


「霊亀で何があったか教えてくれるんだって」


 口を開いた楓は少女の正面に座りさっきまで喋っていたであろうことが分かる。

 俺はその隣に腰を落とし少女へと向き合う。


「いきなり、ではないんだろうな、だがどうしてだ?」


 楓がなんとか説得してくれたんだろうってのはわかるが。


「気、つかって、くれるんだ」


 正直の口調も表情もやはり今までと何も変わらない。


「バカ言え、ただの善意ってのが信じられないだけだ」


 良い思い出でもなければ自国の警備の穴を教えるような行為だ。

 魔族を潰すと言ったがそれだけで信用に足るわけがない。


「善意じゃ、ない、強いて言うなら、魔族、倒してほしい」


「それを善意って言うんじゃないのか?」


「違う、知ったら、逃がさない」


 一瞬思案する。

 なるほどな、確かに知っちまったらそれは国にとってかなりの情報、成果をあげずに情報持って国外に高跳びってわけにはいかなくなる。

 聞いた直後に屋敷の人間を皆殺しにすれば情報だけ貰えるだろうが俺達を家に招くのは事前に誰かには言ってるはず、そうなると指名手配も免れない。


「あー、なるほどな、意外だが腹芸とかできるタイプなんだな」


 そう思うと一切変わらない表情のポーカーフェイスに見えないでもないような気もする。


「何の事か、分からないけど、手伝って、くれるの?」


 キョトンと首を傾げる。

 ……やっぱ何も考えてないのか?


 まあ、


「既に決めてた事だ、逃げる気なんてはなからない。あ、楓とカノンは抜けてもいいぞ」


「私は乗るよ、街の住民全員が、って聞いてて気持ちの良い話じゃ無かったから」


「そうか、えっとカノンは」


 そう言ってカノンのいる方向を見ると。


「寝てる」


 静かに涎を垂らしながら気持ちよさそうに眠っていた。


「もう時間だしね、慣れない旅がひと段落着いて気が抜けたんじゃない?」


「……まあ、参加でもいいだろ、起きてどうしてもいやって言うなら、話の内容教えなきゃ良いか。」


「ん、分かった、じゃあ話す。」


 少女はそういうと遠い過去の話をるように話し始めた。

 話が始まるとその場に流れていた抜けた空気がギリギリと音を立てるかのように急速に引き締まっていく。


 始まりは早朝、家族はいつもよりも騒がしい様子で、それを理解し少女は目覚める。

 しかしそれ事態は守護者の家では至極日常的、とまでは言わないがありふれたものだった。

 起きてしばらくして、家に使えるメイドが緊急の招集で呼びに来た時、少女の日常の歯車は狂い出した。

 招集されたのは18を超えた血族20名ばかり、彼らを前に彼女の父は地図を広げ事情を話し始めた。

 内容は超大規模な魔物の襲撃、以前からちらほらと被害が増えていたが今回はその比じゃない。

 数は数万、街全体を囲むようにし、街の内外を分かつ壁の扉には厚く魔物が配置されていた。

 そして何より異常なのはその行動、多種多様な魔物が足並みを揃えて着実に進行してきているとのこと。

 所々には私たちでさえ一対一では負けはしないが、というレベルの魔物も相当数混じっている。

 敵の数は数万、守護者は20、だがここは獣人の街、子供と老人を除いたとして少なくとも5万は戦力がある、守護者や一部の住民は一騎当千の実力者戦えないことはない。

 父は即座に戦えないものは内部へ、戦えるものは外壁近くへと配置するように伝令を飛ばした。

 私と兄、そして霊亀の守護者で2番目の実力を持つ叔父を緊急事の民の守護として中央に残りあとは戦地へと向かう。

 開戦後、鳥系の獣人による報告で戦況は有利である事が確認出来た。

 何匹かいる強い個体は守護者が複数受け持ち時間稼ぎに徹し、残りの魔物を民が複数人で狩る。

 たとえ緊急時であったとして獣人の血は烏合の衆を軍隊へと変える。

 戦況は有利いや、勝勢と言って良いくらいだ。




 その筈だった。

 戦場は盤石、追加の魔物も見えない、元々防御に特化した亀人族、その守護者が防御に徹してるから強い魔物が民を襲うこともない。

 だけどつい、目の前の魔物に、数に、恐怖に思考を鈍らせてしまっていた、この状況を人為的に起こした(・・・・・・・・)者への警戒を怠った。

 気付いた時には全てが終わっていた。

 私達が秘宝を祀っている場所から轟音が上がり土煙が舞う。

 街の民に帰ってくると誓い3人は即座にそこへと向かう。

 そして土煙が晴れて現れたのは1人の魔族、筋骨隆々な身体に赤い肌、そして2本の角を持った魔族はゆっくりと此方へ向かってくる。

 その片手には魔石を持ち口が釣り上がるように笑みを作り出す、魔石を持った手を見せつけるように胸へ持っていく。

 私達は秘宝を奪われ、更にそれに何かしようとする魔族を見た途端、叔父は地面を爆散させて走り出す。

 魔族はそれを満足気に見ると、魔石をその肉体へと取り込んだ。

 それから叔父が戦い始めると同時に魔族は黒い鎧に身を包む。

 そこまで見ると少女は兄に腕を掴まれ、人1人入れる程度の隠し部屋へと神器と共に押し込まれた。

 何故少女だけなのか、何故神器を渡したのか、何故共に戦わせてくれな いのか、色んな事を叫び、喚くが隠し小部屋はそんな声を外界に届けることは無かった。

 閉まったら最後、込められた魔力を全て消費するまで開くことがないその扉の中で何も分からず、空いた時には全てが終わっていた。



「私には、分からない、なんで私?なんで1人?なんで……なんで一緒に死なせてくれなかったの?」


 俺達はその話を黙って最後まで聞き遂げた。

 最後のその問いには初めて少女が感情を露わにしていたように感じた。


「……これで、話は終わり、何か、分かった事は、あった?」


「あぁ、幾らか得るものはあった」


「そう」


 少なくとも実力は守護者が即座に敵わないと分かるレベル、それはその場にいた妹だけでも助けようとした兄の行動から分かる。

 能力は魔石を吸収したものか、というか秘宝ってモンスターの魔石だったんだな。

 少女は暫く俺達の顔を見て


「質問がないなら、少し、席外して、良い?」


 と言ってきた、感情が死んでるってわけではないのかね。

 楓が優しい声で彼女を送り出す。


「うん良いよ、ごめんね辛い事思い出させちゃって」


 それを聞くと少女は席を立って部屋から退出した


「どこ行くんだろうな、想像出来ん」


 そもそも女の気持ちが分からん俺があの少女の心境が分かるはずもないから疑問に持つだけ無駄か。


「女の子には落ち着ける場所ってあるの」


「……そんなもんか」


 楓がそんな事を言ってるのを聞くとふと、楓にとっては家族の元がそこなんだろうか、なんて事を思ってしまった。

 そう考えると早急に帰還用の魔法を見つけないとな。


「なあ楓、魔族の目的ってなんだと思う」


 聞くまでもない事かもしれないが話の内容のすり合わせのために軽く話を振る。

 話が急旋回した気がする。すみませんね、会話苦手で。


「目的かぁ、秘宝の魔石っぽいかな?」


「だよなぁ、取り込んだって言ってたよな、魔族の特徴って線はないか?」


 魔族の特徴、と言っても多種多様だ。

 そもそも魔族は獣人と同じで種族上は同名で呼ばれても吸血鬼だったり悪魔だったりで色々と種類がある、俺はその全てを暗記できてはいないが。


「そんな種族はない筈だよ、いるとすれば特殊なスキルを持ってるか、与えられたか」


 スキルを与えられた、ようは大罪共の事か。

 全身を血の糸で貫かれ、たった一瞬で貧血気味になった感覚は今でもゾッとするものがある。


「やっぱ大罪、と過程して動く必要はあるよな、種族はやっぱ」


 幸いと言って良いのがどんな魔族なのかは割れてるってことくらいか。


「うん、さっきの魔族の話じゃ赤い肌に2本の角だから鬼の大罪だろうね」


 更には筋骨隆々って話で、一瞬で鎧に包まれるのを見たとも言ってる所から近距離特化と断定。

 むしろ筋骨隆々で鎧装備して、近距離戦を霊亀の守護者と繰り広げた鬼が杖持ってゴリゴリに詠唱してる姿見たら多分笑う。


「どう考えても近距離系だと思うが問題はスキルの内容だよな」


 魔石を取り込み、魔物を使役、更には鎧の顕現か。

 複数のスキルだとは思うんだが街一つ襲ってまで手に入れたかった理由ってなんだ?


「取り込む範囲がどこまでなのか、それによっては涼太はやめたほうが良いかも」


「そうだな、流石に武器を吸収されるなら切れるカードが一気に減る。武器も取られたくないし初撃は安物にしとくべきだな」


 そりゃゼロになるわけでは無いがそんな事するくらいなら楓のフォローなり他の仕事なりやることはある。

 そう考えると今回の最善は楓が大罪と戦うという事、それ相応の危険がある。


「元は俺が勝手に受けたものだ、だが、任せて良いか?」


「うん、任せて。その代わりまた、私の我儘にも付き合ってもらうから」


 楓はあっさりとそう答えた。


「お前に我儘言われた覚えないんだが、ありがとうな。」


 ……命懸けのこの世界で共に旅するなら必須だろうが、正直ありがとうって言うたびにむず痒くて死にそうだ。


「前の村の人達の件、凄く助かった」


 命に掛かる危険が違うだろ、とそういう思いが直ぐそこまで出かかる。

 いや、互いに死ぬ気なんてゼロだから実際変わらんのか?


「恐らく俺はこれから楓に頼りまくるからな、あの程度なら幾らでも手くらい貸す」


「そう、じゃあこれからも頼りにさせてもらうね」


 そうやってはにかむ彼女を見るとなんとも言えない感覚に蝕まれるもひとまずそれは無視、目の前の問題に向き合う。


「頼りにするのは良いがあんま期待すんなよ」


 なんせ俺は英雄でも何でもない一般人なんだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。