隠し事
テストが重なって遅れましたすみません。
<(_ _)>
俺が村の住民に魔法を教えて1,2時間後に楓達が帰ってくるのを感知して村外へと迎えに行くと8人の子供を連れていた。
あんまりその魔法見せないでくれ、当時の水触手に巻かれた男の絵面を思い出すから。
「おかえり、ってカノンどうした⁉︎」
楓に着いて帰ってきたカノンは所謂レイプ目ってやつになってた。
「よウ、楓のヤバさに改めて気付いてナ……」
楓は理由を今聞いたのか首をコテンと傾けて不思議そうにする。
「あれ?何か変なことしちゃったっけ?」
お、おう、異世界テンプレを生で聴ける日が来るとは。
「だから言ったろ。今後もこういう事増えるだろうから慣れとけ」
今ですらチートじみてるが、さらにステータスに表示されない《覚醒》って奥の手すら残してるんだから考えてたらキリが無い。
「そうだナ、多分今なら神の生まれ変わりとか言われても信じれるヨ」
カノンがとりあえず吹っ切れたし、さっさと事件の事後処理を終わらせないとな。
「とまあ、楓の事は置いといてその子達は?」
「ゴブリン達に誘拐されてた子達、多分アリサちゃんって娘もいると思う」
「了解、村の人達に判断してもらった方が良いな」
見た感じ服が切られてたり血が付着してたりするが、傷は見えないし全員楓に直されてるみたいだな。
一安心していると楓がレベルで強化された聴覚にギリギリ届くか届かないかの声で
「……それと、二人で話があるの」
めでたしめでたしって訳にはいかないのか。
「カノン、とりあえず村の人達に帰ったって伝えてくれるか?」
「了解ダ、服とかも用意してもらってるゾ」
カノンが村の中に消えていき、彼女に聞こえないくらいの距離が出来てからとりあえず俺が村人に魔法を教えた場所に移動する。
「で、何があった」
「うん、幾つか話したい事があるけど本題から……治療の途中で気付いたんだけどね、その、何人かが変な所を怪我してたの、骨盤がずれてたり全身に強く掴まれた跡があったり…それにダンジョンにゴブリンも異常に多くて……だから」
「言いたい事は分かった、任せてくれ」
まあ、そういう事だろう。
楓が水に浮かべて治療していた8人中4人を地面にそっと並べる。
「お願い、傷の具合からして右から三週間、二週間、一週間、三日のはずだから」
此処で俺が何を出来るのか疑問に思う人は多いだろうな。
確かに俺は楓と違って使える魔法の種類は多くない、回復魔法なんて論外、けど俺は楓に使えない魔法がある。
答えは闇属性魔法だ。
本来魔物や魔族限定の魔法を何故使えるのか、答えは簡単で光属性エンチャントに《反転》を使うだけだ。
そしてその闇属性魔法のデバフの一つが記憶の消去、レベル次第では弾かれるがこの少女達と俺のレベルなら余裕だろう。
右腕に闇を纏わせ集中する、発生するデバフを記憶消去だけに使いそれぞれのトラウマだけを消すんだ。
右腕で最短の三日の少女の頭を掴む。
「うっ…あっ……ぁぁ」
弱々しく少女が呻く。
小さく体を震わせ息が乱れる。
楓は痛々しそうに少女を見つめその手を握る。
「……ふぅ、多分これで大丈夫だとは思う」
あとはこれと同じ行為を三度、消す記憶が長くなるたびにより慎重に、ここ数日に起こった地獄だけを消した。
「これで終わりだな」
「うん」
その少女達を村へ連れ帰りここ数日の記憶を消したと村人に伝えた。
後日、共和国の兵に引き渡される事が決まり、その時にこの子達それぞれの保護者に記憶を消した旨を書いた手紙を書いた。
それまで少女達は楓が土属性魔法で作った簡易的は家の中で布団を被って寝かされている。
記憶を消す以前と比べてその顔は幾分か穏やかに見える。
「あんな記憶無くして良かったんだよね」
楓がそう呟いた、この少女達の安心はモラルという面でみると正解とは言い難いかもしれない。
「さあな、あの子達にとってどうかは分からないが俺は自分が間違ってるとは思わねぇよ」
ただ、嫌な記憶を乗り越える事が必ずしも正解だとは思わない。
幾らなんでもこの年でゴブリンに、なんて子供には重すぎる。
「やっぱりそれが良いよね、覚えてなくて良いよ、トラウマなんてさ」
あの娘達は世界に絶望したり憎しみを持つには若すぎる。
「知らない方が幸せな事だってあるだろ」
「だね、よし!じゃこれからの話をしよっか、ダンジョンで不思議なところもあったし」
俺達はそこを後にし、カノンの待つ村長宅へと向かった。
時刻は既に昼を過ぎて辺りが暗いオレンジに染まり夕日がほとんど沈んでいた。
そして泊まることになった俺達は村長宅の一室、敷布団を三つひいてそれぞれの布団に座っている。
「おっ、終わったカ?あの娘達はどうなったんダ?」
「おう、今は気持ちよさそうに眠ってるよ。」
そう伝えるとカノンは安心半分心配半分という顔をする。
「そうカ、元気になってくれると良いナ」
この世界で生きている以上はゴブリンに連れ去られた女性がどうなるか、薄らとは分かっていたんだろうな。
楓はカノンのまだ少し震えてる手を取って言った。
「なれるよ、きっと。
それより今はアリサちゃんの方が心配かな」
「えっ?アリサちゃんもどうにかなったんじゃないのカ?」
「俺が対処した娘達は起きた後に自害を選びかねない娘だけだ、それ以外の娘が過去と向き合うかどうかは本人次第だろ」
そこが俺の線引きだ。
生きてればいい事があるかどうかなんて知らない。
なんせ助かった娘を死なせたくないってだけだからな、わざわざ時間かけて少女を数人自殺に追い込もうもんならマジで誰得だよ。
「うーン、あんまりよく分からないけドそれが涼太なりの配慮なんだナ」
難しい顔して何を言うかと思ったら随分と的外れな事を、
「な訳あるか、今回の治療の面倒さをお前は知らんのか」
人の不都合な記憶だけを消すってことにどれだけ神経使うと思ってんだよ、そんな面倒な事好き好んでしないだろ。
カノンはそれを聞いて再び難しそうな顔をしている。
「うーン、面倒カァ、違うと思うんだけド……」
頭を捻ってるカノンを見て今度は楓が悪戯っぽい笑みを浮かべて肘でつついてきながら口を開いた。
「自害しかねないって判断したら何人でも直す癖にぃ〜」
「それダ!」
「それダ!じゃねえよ。時間無駄にしたくないだけだっつの、見ず知らずの子供助けるお前らの方がよっぽどお人好しだろ」
……こいつに悪戯物って付けたやつはよく分かってるよ。
「そんなの頼まれたからだゾ?あっ!そういえばサ、涼太って何で今回は村に残ったんダ?」
「え?あぁ、それこそあれだ、面倒だったからだ。そろそろ寝ろ、明日からまた馬車だぞ」
「はーイ、じゃあおやすミ」
カノンは以外にもスッと布団に入って寝る体制を取る。
へー、ほー、そうなんだー、とか言ってる理由は分からないが、まあ良いか。
そして楓も一旦立ち上がり自分の布団に戻る。
その前に、俺の肩にそっと手を置いて呟いた。
「村の男の人達が石製の魔法陣持ってたの、私もカノンも気付いてるよ。」
この日、顔が熱くて俺はまた寝不足になった。




