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会議解散後 カノン

 私とカノンは会議の直後、ダンジョンへと向かった。

 往復で2時間程の距離をエンチャントと付与魔法で速度を上げてカノンを抱え、片道半時間で踏破する。


「来る途中でゴブリンを見つけられれば良かったんだけどね」


 今はダンジョンの目の前、軽く装備を確認して入る準備をする。


「まあそう簡単にはいかないよナ」


「じゃあ手遅れになる前に行こっか」


「了解ダ」


 私達はダンジョン内へと入り込んだ。

 ダンジョンの形状は遺跡のような石で出来た迷路、といっても私は記憶力が良いし迷う事はないだろうな。


「そういえばサ、今日の涼太って冷たくなかったカ?」


 辺りに蔓延するゴブリンを締め上げ、吊し上げ、切り刻みながら世間話をする様に喋る。

 肝が座ってきてるなぁ。


「そう?私は特に思わなかったけど」


「私の時は積極的に助けてくれたようナ?」


 冷たいねえ、別に変わってないと思うけど、あっ


「もしかして涼太を誰でも助ける勇者とでも思ってるの?」


「え?あぁ、そんなイメージかモ。なんだかんだで親方も私も、街のみんなまで助けてくれたしナ」


「成る程ね、それでか。カノンの街が助けられたのはもっと違う理由だよ?」


「違う理由っテ?」


 小首をかしげるその様は年相応のあどけなさがある。


「そう、一つ目は良い鍛冶屋が欲しかった事」


「うンうン、それは分かル」


「で、2つ目はカノンの事だよ?」


「私?なんで私が理由で街を助けたんダ?」


「気に入ったからだよ、だからカノンにトラウマ一つ残す事すら嫌だったんだと思う」


 涼太はカノンに才能を見たって言ってたしね、それは多分好きだとか愛してるだとかとは違う憧憬の類なんだろうけど……ちょっと妬けちゃう。


「へぇ、そうなのカ。ヘヘヘッ」


 少し恥ずかしそうにしながら頬を染める姿はとても可愛く見えたんだろう。

 周囲に死屍累々としたゴブリンの死体がなければ、の話だろうけど。


「にしても、既に5層目なのにまだゴブリンがいるんだね」


「私は詳しくないガおかしい事なのカ?」


「そうだね、そろそろゴブリンでもメイジとなソードマンが出てきても良い頃合いなんだけど」


 さっきから一向に出てくる気配がない、レイアくんは切られてたから棍棒しか持たないただのゴブリンじゃ不可能なはずなのに。






 あれ?死屍累々とした死体?なんでダンジョンなのにゴブリンの死体が残ってるの?






 通常ダンジョンでは魔物は倒されると魔石と偶にドロップと言って体の一部を残すだけのはずなのに何故?

 もしかして、このゴブリン達はこのダンジョンで産まれたんじゃないって事?

 確か王国や帝国の本に外部の魔物がダンジョンを占領した事例はあったらしい。

 けど、ゴブリンごときがダンジョンを5層まで、違う、さらに下の層の魔物までも殲滅したっていうの?


「どうしたんダ?急に深刻な顔して」


「カノン、此処からは気を引き締めるよ。想定外の自体が起こってるみたい」


 よく考えればダンジョン産の魔物が外部に子供を、それも遠出して捕まえて帰っていく事がそもそもおかしいかったのに。

 20層まで来てまだイレギュラーは続いてる。

 出現するのは右を見ても左を見てもゴブリンばかり、たまに剣を持ったゴブリンを見つけても剣術スキルがないようでソードマンには至ってない個体ばかり。

 20層代の魔物が再び出現すればそいつに全滅させられるような個体しかいないのに何故?

 ダンジョンのコアが破壊されて復活しないって可能性もありえない。

 ダンジョンは魔力の龍脈によって生み出されたコアから作られる異空間でしか無い。

 だからダンジョンの下を掘って、いきなり最深部にも行けないし、コアが無くなると維持できなくなる筈なのに……


「なア、楓?あれっテ宝箱、だよナ……」


「え?あっ、宝箱ね、うーん、罠があるかもだし今回は諦めよ……」


 カノンが指差す方向を見てみると。

 一匹のゴブリンが眉間に矢を刺されて死んでいた。

 宝箱は閉じているがダンジョン産の宝箱は開封後閉じる修正がある、それよりも


「ゴブリンが、宝箱を開けた?」


 魔物が宝箱の存在に気付いて利用しようとしてるのね。


「罠が分かった事だし開けてみるゾ」


「あっ、他にも罠があるかも」


「分かってるっテ」


 そう言うとカノンは宝箱に耳を当ててコンコンと手で叩いた。

 機械仕掛けのエキスパート、とはいえあれだけでわかるものなのかな?


「あー、既に取られてるみたいだな、音が軽い、せいぜい弓矢の罠がある程度だろうな」


「そこまで分かるのね、流石としか言えないや」


 機械やカラクリ、鍛治更には裁縫や料理まで、『作る』のエキスパートだけあってその感覚まで超一流なわけね。


「まぁ宝箱はまた今度だナ、それよりもこの下っテ」


「そうだね、25層はかなり魔力が濃いみたい」


 さっきから漂ってくる濃い魔力、25層に似合わない凶悪な魔物達がいる。


「じゃあ行こっか」


 そして私達はそこへと足を踏み入れる。






ゴウ!!!!!!






「アイギス!!!!!!」


 業火と杖に仕込んだ絶壁の魔法が競り合う。

 大丈夫、この程度なら防ぎ切れる!


「な、なにガ……?」


「落ち着いて!ダンジョンでは焦らず、冷静に、何も見落とさないで!」


「わ、分かっタ」


 カノンが覚悟するのと同時に業火が薄くなる。

 あれは……


「また……ゴブリン?」


 四つの影を発見し、即座に鑑定板を出して相手を見る。



『ゴブリンエリートウィザード』

 ゴブリンの魔法使い

 魔法を極めたゴブリン同士が戦い勝利した個体のみがなれる。


『ゴブリンエリートソードマン』

 ゴブリンの剣士。

 剣術を極めたゴブリン同士が戦い勝利した個体のみがなれる。



 そして、その二体の後ろ、不出来な椅子にかけた一匹のゴブリンとそれに使えるように横につくゴブリン。



『ゴブリンキング』

 ゴブリンの王。

 集団を支配するスキルを持ったゴブリンの変異体、支配したゴブリンの数だけ力を得る。


『ゴブリンワイズマン』

 ゴブリンの賢者。

 スキルや突然変異など、なにかしらの理由で膨大な魔力を得たゴブリンエリートウィザードであり、ゴブリンという種の到達点の一つ。



 その光景は本来なら何もおかしくはない。

 だけど私は断言出来る、これはイレギュラーだと。

 一匹の王の下に集い、殺し合い、そして上位化した集団。

 けどそれは、椅子に腰掛けたのがゴブリンキングであればの話だ。


 そう、椅子に座ってるのはゴブリンワイズマンであり、それに執事の如く控えているのがゴブリンキング。

 もしこれがキングが私達を騙すために影武者を立てただけなら良かったんだけど、格好を変えてない事からキングもワイズマンも自分の種族を偽る気がないのが分かる。


「さっきの魔法はワイズマンの方ね、エリートウィザード程度に出せる火力じゃない」


「そうなのカ、で、どうすル?」


「……私がワイズマンとキングを相手するからカノンは残り二体をお願い」


「任せロ」


 それを聞いて私は自分の足元にウィンドボム、足に防御力上昇と土属性エンチャントをかけてワイズマンとキングへと飛ぶ。

 するとソードマンとウィザードは動かずに私を通した。


「へぇ、二対一で戦おうって言うんだ」


 ゴブリン達はダンジョン産の装備で武装を固めてるとはいえ、その程度ならカノンの相手にもなるかどうか。


「そんな事より、今は君の方が重要か、ワイズマン君」





 さて、楓からソードマンとウィザードを任されたけど、どれくらいの実力かナ?


「さア、やろうカ」


 ゴブリンの片方、濃い紫色の禍々しい剣を持ち、くすんだ鉄の鎧を着た方が駆けてくる。

 どうしようかな、部屋は骨を使ってそうな幾つかの悪趣味な飾りと出っ張った光る結晶が壁際に並び等間隔で気が植えられてる。

 部屋の大きさは45m×30mくらいで割と広めか、結晶は壁に2m感覚で、木も5m間隔で植えられてる。

 うん、これならなんでも作れる。

 部屋の確認をしてたらゴブリンが割と近くに来ていた。

 剣には火属性エンチャントが施されてエリートウィザードからの補助魔法まで受けている。


「おっとト、もうそんな距離カ……ま、十分かナ」


 腕をしならせ指を動かし魔力を糸に乗せて操作する。

 ほんのわずか数秒で、私の眼前に剣が迫った。


「グギャギャギャァァア」


「速い剣だネ、でも届かないゾ」


 剣に糸が絡まり、極細の糸が数十本がかりで剣を止めた。

 そして私の顔前数センチ先にある剣に目を通す。


「う〜ン、この程度のナマクラ相手にこんなにいらなかったカ、私の作る糸の結界の中でまともに剣を触れると思わないほうが良いゾ」


「グギィ」


 ナマクラを見てると上空に向かってエリートウィザードが《フレイムアロー》を放ち、それは放物線上に飛ぶ。

 このままじゃ私だけに当たるな。


「じゃあこれでどうだ?」


 糸を操り剣に絡め、木に通した糸と絡めて木をしならせる、これで巨大な弓矢の完成ダ。


「あとハ、ホイ」


 そのしなりで生まれる負荷にエリートソードマンに請け負わせると堪らず手を離す。

 剣が唸りを上げて魔法を迎撃して天井に突き刺さった。


「やっぱり魔剣カ、ダンジョン産の癖に弱すぎると思ったヨ」


 魔剣が刺さった部分から火を放つ。

 すると天井相手に行き場をなくした火は逆流して剣を天井から抜け落ちさせる。


「グギャァ⁉︎」


 防がれた事に驚きエリートウィザードは驚く。

 一方エリートソードマンは跳躍して自分の剣を取りエリートウィザードの前へ。


「そうカ、あんまり良い経験にはなりそうにないナ……もう良いヨ、ゴブリンエリートソードマン」


 此方へのダッシュ、剣撃、更には跳躍まで、私の結界内でそこまで動いたんだもう終わりだよ。

 指をちょっと動かすと全身に密かに絡まった糸が張り、剣の弓を作った時の糸に首にかけた糸を繋いで首を切り飛ばした。

 ゴブリンエリートウィザードは待ってました、と言いたげな表情をした後にまさかの行動を起こした。


「ナっ⁉︎」


 剣を取り、それでゴブリンエリートソードマンの魔石を体内から抉り取り、喰らった。

 ドクンッ、そんな音がしたかと思うほどに体を震わせ体内で暴れるナニかを押さえつけようと自分の魔石がある心臓部を手で押さえつける。


「グギャッ……グッ………ガッ………ガァァァァアアァァアァアアアア!!!」


 そして、耳が壊れるほどの奇声を上げると、姿が変わった。


「融合しタ、のカ?」


 融合と表現するしかなかった、魔法杖と剣は一体化し剣に変な模様が浮き上がる。

 着ていた濃い青のローブはマントへと変わりその下に白銀の鎧を装着する。

 私は即座に鑑定板で相手を確認する。



『ゴブリンソードメイジ』

 ゴブリンの魔法剣士。

 なんらかの方法で生まれる変異体。

 魔法と剣術の両方を高練度で操る。



 名前も詳細も出るって事は既存のモンスターではある、けど詳細に謎が多いって事はかなりの起床個体って事か。


「グギャァ……グギャァァア!」


 ゴブリンは剣に火のエンチャントを混ぜてそれを斬撃にして飛ばしてくる。


「でモ、自分に補助魔法は普通使えないんだロ、二体の時の方が強そうだったナ」


 糸を駆使し、複数のワイヤーで自分を切らない様に避ける。

 するとゴブリンはそれを待ちわびたかの様に笑い、剣を地面に触れさせる


「グギィ」


 魔力の流れからするとウィンドボムか、楓が初手でやった事をしたいのか?

 確かに高速で移動できる、それに剣を使えるなら更に剣撃にその速さを乗せられる。


「バカだナ」


グチャッ!


「ギャァァァァアアァァアァ!!!!!!」


「そんな事して足を吹っ飛ばさない様な制御なんテ、お前ごときに出来るわけないだロ、仲間を喰らった罰だナ」


 空中で糸を操り全身に絡める。


「細切れになレ」


 ゴブリンは悲鳴すら上げる暇なく惨殺された。

 はぁ、得たのは経験値だけか。

次のタイトルは会議解散後 楓ですかね

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