会議解散後 涼太
光属性エンチャントをエンチャントライトからエンチャントグロウに変更しました。
仕方ないね、雷のライトニングと被るんだもん。
……すまんかったと思ってる
「おい、ちょっと良いか?」
会議後、楓達を見送ってから俺は例の少年の父親へと話しかけている。
「どうしました?」
「この件なんだが、なんで衛兵とかに相談しないんだ?」
緊急事態故に楓達はこの場で即決してしまったが誘拐事件は以前からあった筈だ。
「この国って実力主義で自分達の住む場所は自分達で守れって話になってるんですよ、その代わり税収は低いのでピンキリですけど」
……国としてどうなんだ、いや魔族との最前線からは離れてるし獣人は人間より五感や筋力が高い、必然…なのか?
「今まではどうしてたんだ、魔物の被害は無かったわけじゃないんだろ?」
「今までは農具とかで追い払えれたんですけどね、今回は規模がちょっと」
情けなさそうに笑う。
「じゃあなんで都市部に行かないんだ?」
「実力主義なんですよ、使える技術を持った人間は都市へ、無能は辺境へ、そうなると私たちみたいな獣人と人間のハーフは獣人に劣るんです。」
なるほどな、それは確かに理解できる話だ。
でもなんか、なあ、ちょっと違う気がするんだよな。
達観してる感じというか、なんかなぁ、逃げてると言うか。
自分の中に溜まってるモヤを捉えてきれずにいると少年の父親が意外そうに口を開く。
「ハーフって事に反応しないんですね」
あー、ハーフが嫌われる世界なのね、正直どうでも良いんだが。
多分このモヤはあれだな、苛立ちだ。
全体的に諦めてんだよ、ハーフだから、弱いから仕方ないって。
「戦う意志がある奴らを集めてくれ」
「何をいきなり言ってるんですか?」
「別にそっちが良いなら現状維持でも良い、強制はしない」
そういうとやっぱり諦めたみたいに笑う。
「無理だよ、皆んなが君たちみたいに戦える訳じゃない、無駄死にするだけだ」
その目は多分異質な目で、別種を見てるようで、憧れでも嫉妬でもない差別的な瞳だ。
ほう、俺に戦う才があると、それ相応の力があると、へぇ
「少なくとも5回は死にかけた、死んだ魔物の自爆に晒されて、見たことない武器術を初見で対応させられて、よく分からん部屋で麻痺らされて、全身を血で貫かれて、限界まで体を酷使して、確かに楽じゃなかったけどな、それでも守りたいものってあんたにはないのか?」
泣き言を言うつもりじゃないが決して楽な道のりじゃなかった、それでも死なせたくない人間がいた。
男は手を握りしめ、爪を肌に食い込ませて、歯を食いしばって、それでも彼は、こいつは
「君はこの世界の事を、弱者の事を、何も知らない」
まだ諦めようとする。
直後、俺たちよりも低い位置から声が聞こえた。
「僕、やるよ」
その声はどこからか話を聞いてやってきたのであろうレイアからだ。
「僕は戦いたい、アリサちゃんをもう2度と失いたくない!」
その少年は小さな瞳に覚悟を宿して訴えかけてくる。
一度息を吐いて落ち着く。
「今度は死ぬかも知れないぞ」
一度死にかけて、また同じ状況になった時に怯むようじゃ戦えない。
「僕は死にたくない、けどさ、横にアリサちゃんが居ないなんてもっと嫌だ」
広角が上がるのを感じる。
「そうか、なら付いてこい」
レイアを連れて郊外へ行こうとしたところでレイアの父が肩に手を置く。
「おい!ちょっと待ってくれ」
「安心しろ、死なない為の戦い方を教えるだけだ、無理はさせない」
その手を払いレイアに行くぞ、と声をかけて一応フル装備で郊外の適当な場所へ行く。
そこら辺の木の影に移動してから指導を開始する。
「とりあえずはお前の最終目標を見せてやる」
そう言って落ちている15センチ程度の木の棒を拾う。
「《エンチャントグロウ》」
光属性エンチャントを施すと木の棒から光の刃が伸びて一振りの剣が出来上がった。
これは主に木の先端と大気に光をエンチャントしたもの。
「光属性のエンチャントは対象を物理属性を与えるんだ」
「…………?」
レイアは頭にハテナマークを浮かべる。
「簡単に言えば好きな形の武器を作れる。」
「なるほど」
刀身に纏わせると威力あげたり色々と光属性は何故か知らんがややこしいから略しておく。
「発動方法は全身に魔力を巡らせて魔法陣を頭に思い浮かべる、そのために魔力コントロールを学ぶ必要があるんだが、とりあえず魔法陣も見とけ」
とりあえず光剣は解除してアイテム袋から取り出した紙にササっと魔法陣を描いていく。
と言っても数日も指導できないから本来のものと簡略化したものを描いておく。
「こっちのややこしい方が武器に纏わせたり武器作ったりイメージ次第で色々出来る、簡単な方は光の剣を棒につけるだけだ」
「どっちを覚えれば良いの?」
「今は簡単な方だけで良い、ややこしい方は俺が居なくなってからでも覚えれば良いだけだからな、今はエンチャントを使った戦い方を覚えろ」
「分かった」
そう言った所で俺の感知に複数の生き物が引っかかる。
「邪魔でもしに来たのか」
来たのは少年の父親だった。
「いや、集めてきた」
30程度、あの村の成人男性、それもそれなりに動けるものが来たんだろう。
「戦わないんじゃ無かったのか」
そういうと黙った、しかし直ぐに
「子に守られる足手まといな親にはなりたくないんだ」
「父さん……」
「……そうか、なら何も言わねえよ」
にしてもそうなると人数が随分と増えるな、紙じゃ小さいか。
えっと、適当な岩は何処かに……っとあったあった。
それに近づいて大人たちの前へと持ってくる。
するとレイアが不思議そうに見てくる。
「どうしたの?」
「まあ見てろ」
《エンチャントグロウ》
己の拳へとエンチャントを施す。
そして岩を粉々に砕く。
そして簡易的は方の光属性エンチャントの魔法陣の形へと岩を再構築し直した。
なんか、変なモニュメントみたいになったな。
「今の岩を破壊したのがエンチャントだ、レイアに渡したややこしい方の魔法陣を覚えればこんな事もできる。ま、とりあえず最初はこっちを覚えてもらうけどな。」
岩で作られた魔法陣を木に立てかけながら軽く説明する。
するとザワザワと畑仕事が楽になるとか不必要な岩を壊せるとかやっぱり農業関係の話が多い。
このままでもやる気は十分だが更にやる気を出させとこう。
という訳でそこら辺の適当な石を砕いて掌サイズの魔法陣を作り出す。
《エンチャントグロウ》
木の棒を持ち作った魔法陣をイメージして魔法を発動させると。
「おお!それはクワじゃないか?」
さっき以上のざわめきが広がる。
「その通りだ、この村を旅立つ時に最低限の事を覚えていればクワ、カマ、スコップを作れる魔法陣を渡してやるよ」
そう言うと一気にやる気が湧き起こった気がする。
どうせ教えるならやる気があったほうがこっちも楽で助かる。
声が少し鎮まってきた頃にレイアの父親が質問を投げかけてくる。
「で、何をすれば良いんだ?」
「そうだな、とりあえず全員手を繋いでくれ」
じっくりやってたら時間が足りない、多少雑ではあるが仕方ない。
村人達はすぐ手を繋いだ。
俺はその端、父親と手を繋ぐレイアの手を取る。
そして魔力を流す。
武器に魔力を流すように、手を繋いだ人々の体内を循環し、魔力が駆け巡る。
「体の中に何か感じるだろ、それに意識を向けてみろ、余裕があるなら隣の奴に魔力が流れていく感覚もだ」
それから5分間にかけて魔力を流した。
全員がなんとなく感覚が分かった事を確認してから次の段階に移る。
「次はさっきと同じ感覚を自分の中から探し出してみてくれ」
ここではかなりの時間を要した、開始して直後に見つけるものもいれば30分近く掛かるものもいた。
レイアと父親は俺と手を繋いでたところが近かったからか、はたまた本人のやる気のせいかかなり早い部類だった。
「出来てない奴はとりあえず放置でも良いんだが……やる気がある奴はちょっと来てくれ。」
その時点で出来てなかった全員が来た。
「子供が頑張ってるのに大人が諦められないだろ」
「俺達にも一応意地ってもんがあるからな」
「これからの子供達の為にも頑張らねえと」
思った以上にやる気に満ち溢れてる、戦えなかった事は今まで悔しくはあったんだろうな。
「多少痛いだろうが、耐えろよ」
10人前後、その全員の心臓の逆側、人の魔力が溜まってると思われる器官に拳に魔力を込めてほぼ同時に殴りつけた。
恐怖を与えぬ為にスピードを重視して威力も制限したが、低レベルの人達にはかなりのダメージが入ったのか全員が膝をついて苦しんでいる。
今頃俺の魔力に共鳴して自分の魔力が嫌と言う程体内で存在を主張しているだろう。
「がっ…あ……」
「おいあんた!流石に!
「まて!大……丈夫…だ」
そ、そうか」
「時間に余裕がある訳じゃないんだ、ある程度の無理は我慢してもらうことになる」
「分かっ…てる……!」
これで全員が体内にある魔力を知覚出来た。
「次に行くぞ、さっき感じた魔力を手を繋いだ時みたいに体を巡らせてみろ」
この段階は意外にも全員スムーズに突破する事が出来た。
半分や4分の1とはいえ戦闘民族とも言えるような獣人の血を引くだけあってセンスはあるみたいだな。
「……まさか1時間やそこらで魔力を扱えるようになるとはな、正直予想外だ。」
そう言うとレイアの覚悟を決めた顔を見ながら、父親はやっと父親らしい顔をしてこう言った。
「それぞれ最低限守りたい人が居るからな」
ふーん、成る程な、親ってもんはどこの世界でも強いもんなんだな。
「おっさんの顔の良し悪しなんて分かりたくもないが、今のあんたは嫌いじゃない。あとは体に流した魔力を木の棒に注ぎ込んで魔法陣を思い浮かべるだけだ、くれぐれもイメージする魔法陣を間違えんなよ。」
全員が木の棒を持つとそれぞれの体格に合った光の剣を携えた。
本当にここまで良くやったと思う、最悪使わない武器を手甲から出す事も考えてたんだがな。
だがこれは前座だ、俺はそこら辺から木の棒を拾ってエンチャントを施し光の棒を作る。
「1人ずつかかってこい、他の奴の戦闘を見てちゃんと動きを見て奪えよ」
全員いっぺんに相手したいが戦帝とは違う、素人の集団に連携しろなんて酷だろうからな。
俺は全く構える事なく切りかかってくるのを待った。
〜2時間後〜
彼らは異常な速度で成長した。
最初は俺が棒を振る必要すら無く勝手に転けていたような村人達は、俺と一合は打ちあえるようになっていた。
「まさかここまで成長するとはな」
「ハハッ、皮肉ですか?」
そう言いつつ息を切らしながら意外にも一番強くなったレイアの父がこちらを見てきた。
「まさか、信じられないだろうがこれでも一国を救った人間なんだぞ」
「信じますよ、これでも獣人の血は混じってるんですがね、自覚できる程に成長してもこれですよ?」
お?強くなった自覚がある、か、そろそろあれをやっとくべきか。
「そろそろ体力も限界だろ、全員で来い」
「連携なんて出来ませんよ」
「安心しろ、多分一歩も動けねえから」
ここでこいつらの強くなったっていう慢心、自身を粉々に打ち砕く。
策を練り集団で挑み、必死にならなければ死ぬ事を思い知らせる。
「来い」
村人全員がそう言うと同時に構えて、誰一人、一歩たりとも、指先一つ動けなかった。
「「「「………………」」」」
俺は構えた棒を下ろして、殺気も抑えた。
「「「「っっっ!!!はぁ、はぁ、はぁ」」」」
全員が腰を抜かして倒れ伏し息の仕方を忘れていたかのように再開した。
……いや、全員じゃなかったな。
「まさかお前が立ってるとは思わなかったぞ、坊主」
「僕は……戦うんだ…!!」
そう言うと剣を構えて飛びかかってきた。
「そうか、頑張れよ」
俺はその一撃を完全に流して首筋を軽く叩いて気絶させた。
その後息を整えている村人達の前へと行く。
「上には上がいる事を忘れんなよ。お疲れ様、ほらこの魔法陣がクワ、カマスコップ形状の光エンチャだ。」
「あ、あぁ、わかった」
その分かったは何に対してか、両方に対してだろうと判断して納得した俺は全員の回復を待って村へと帰還した。
ちなみにレイアは父親が背負っていた、ちゃんと父親なんだな。




