新たなステージ
帝国から魔族の居る南ではなく北へと登って一週間、遂に共和国最南端の都市へと到着。
「意外と楽に着いたな」
馬車の中で背伸びを一つ、今まで寝てたから腰が痛い。
「前回が忙しかったじゃない?」
楓は帝国で買った本を座って読んで居る。
「確かにな、今回は弟子が居ないし御者も3人でローテしてりゃあ楽なのは当たり前か」
楓が運転(?)出来るようになるのは予想通りだったが、今御者をしてるカノンは意外だったな。
まさか操糸が手綱にも影響するとは思わなかった、糸や縄を操作、使用する事全般に補正が掛かるのか?
今回は街に入る事にそこまで困る事もなかった。
俺と楓は冒険者ギルドに、カノンは鍛冶ギルドに入って身分が証明出来るからってのが最もな原因だな。
共和国最南端の街『鳳凰』の街壁は大きさも高さもせいぜい防波堤の倍くらい、帝国のダムのようなあの街壁とは比べ物にならない。
とは言っても人類の最前線から離れたんだからそれも当然だろう。
この世界は魔族の街である最南端から北へと行くにつれて魔獣は弱くなりダンジョンも小型化する。
街壁を作ったところでAだのSだのが出張ってきたら崩されたりしてあったほうが邪魔な訳だが小型なモンスターなんかには十分効力がある。
それがこのサイズって事はこれで十分なレベルのモンスターしかいないって事だ。
そして遂に共和国へと足を踏み入れる。
「おお……おお!!」
二度驚いた。
一度目は首都でないにもかかわらず帝国首都に匹敵する人の多さ。
二度目はその人種の比率だ、ざっと見た感じ何らかの獣人が8割、その他が2割って感じだ。
「獣人の人たちが多いみたいだね」
楓はこともなげにそう呟いたがマジマジと獣人を見る機会に恵まれなかった俺にとって滅茶苦茶興味深い、仕方ないよな、元がオタクだし。
「あぁ、二人って異世界人だから知らないのカ、この国はある五種類の力を持った獣人の元に国が出来たんだゾ」
「へー、って、そんな事よく知ってるな」
「一族の秘宝ってのが武器じゃないカって疑った時に色々調べたんダ、それで覚えてるんだヨ」
「秘宝が何かは分かったのか?」
「多分どんな魔物由来のかって事だけはな」
「「あ〜、なるほど」」
楓も多分今ので秘宝の内容はともかくどんな魔物かは想像ついただろうな。
「何か分かったのか⁈」
「国名とか五種類の魔物ってのとかで分かるだろ」
「???」
もしかしたらこっちの世界では名前が知られて無かったりするのか。
「とりあえず宿屋取ろうよ、ゆっくりしたいしさ」
知られてないなら下手すりゃ国家機密になりかねないと考えたのか楓がそう促した、ただ単に勘違いって可能性もあるがな。
という訳で適当に宿を取ることにし、近くにあった宿屋の受付へ。
「えっと、二部屋にした方が良いか?」
楓とカノンは別れるんだろうか?3部屋でも良いがカノンは宿屋に来る機会も少ないらしいし一緒の方が良いとは思うけど。
「私も同じ部屋で良いゾ、今までそうしてたんだロ?」
え?二対一の分配を俺、楓とカノンって割り振りだと思ってらっしゃる?何故そうなるんだ。
「いや、俺が同じ部屋はまずいだろ。」
「私に手を出すことはないだロ?
……なんせ初対面で坊主って呼ばれたからナ」
凄いジト目で見られる。
いや、すまないとは思ってるけど汚れたオーバーオールに短髪で口調も女子っぽくなかったら間違えるだろ。
と言ってもろくな事にならないのは楓で知ってる、黙るが勝ちだ。
ここで俺はプレイングミスをかました、俺の敵はどうやら一人ではなかったみたいだ。
「じゃあ一部屋でお願いします」
なんでだよ⁉︎
とは思ったもののカノンのレベルは未だに高くは無い、魔族相手ならかなりギリギリだろう。
万全を期す為には護衛役と迎撃役が欲しいのは事実だ、けどさぁ……まあいいや、いい加減慣れてきてしまったし。
その後部屋に向った。
ベッドが三つあった事に当然だとは思うがそれでも安心したのは仕方ない事だと思う。
「えっと、魔物の話だったよな。普通に四神だろ」
5種類の力を持った獣人は多分それぞれがなんらかの恩恵を受けてるだろうから魔獣は恐らく5種、加えて主要都市も五つ。
さらにその一つの都市の名が『鳳凰』ときたらそりゃなぁ。
楓もうなづいてるし間違いって事はないだろう。
「ちなみに主要都市の名前は『応龍』『鳳凰』『霊亀』『豪虎』『麒麟』だね、大体は四神の別名、白虎だけは無いから創作みたいだけど」
へぇ、霊亀と応龍は初めて聴いたな。
力もその5体の魔物由来だろうし
「力持ってる獣人も鳥、亀、虎、後は…鹿と蛇あたりか?」
「た、確かそうだった筈だヨ」
カノンから尊敬の目線を向けられる。
このくらい向こうの世界じゃ割と常識に近いからね?
さてこの空気どうしようか、日が高いから寝ろとも言えんし
「とりあえずそこら辺は置いておいて観光でもして来たらどうだ?」
この提案に他国に行くことが無かったカノンは随分と乗り気に
「するすルー!」
と興奮気味に賛成して来た。
随分と子供っぽいがまあ初めての旅行……ではないけど物珍しい物もあるんだろう。
「楓はどうする?」
「私はカノンと一緒に行動しようかな」
女子会でもすんのか、久しぶりに年齢が近い相手と居るし俺は別行動するかな。
「明日には中央都市に、向けて出発するから準備はしとけよ」
「「はーい」」
て事で散会。
さて俺はどうしようか。
おっ、そういえばエンチャントの合成って『嫉妬』戦以外で使わなかったな。
という訳で冒険者ギルドに行きここら辺で一番敵の平均レベルが低いところに来た訳だが。
大丈夫そうだな、恐らく急所に攻撃受けても1すら減らないだろ。
それが分かったところで適当な丘の上へ胡座をかいて集中する。
そしてまず火と雷のエンチャントを合成する。
すると魔力視のスキルだろうか、自分の体内の魔力が以前より明確にキャッチ出来るお陰で完全に制御下に置くことが出来た。
その状態でアイテム袋から小石を取り出して近場の小動物型のウサギ魔物へと投げる。
途端、石は強大な熱量とスピードを持ってして魔物を貫通、その後貫通した穴から燃え広がり跡形もなく灰にした。
「化物染みてんな、これが俺以外に出来るやつが少なそうなのは良いことか……」
その後も何種類もの組み合わせを試したがここにいる魔物じゃカケラ一つ残らなかった。
遅くなりました、大体この章の構想も固まったのでペース戻ると思います。




