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鍛冶師の別れ

 カノンが旅に付き合うと言い出してから数日、俺達は今日街を出ることにした。

 予め決めていた事だ、多少遅くなった気はするがその遅れている間に王生が馬車を用意してくれたから良しとしよう。

 馬車のサイズは18フィート×11フィートらしい、およそ18平方メートルで畳10枚分とのことだ。byカエペディアさん

 それに追加して馬二頭って安くはない筈だがまあ国ごと滅ぶより断然安いだろ、ありがたく貰っとこう。

 本来馬二頭で動かす様なものではないらしいが魔素がある世界で進化した馬だから可能だって事らしい。byカエペディアさんagain

 ほんとなんでも知ってんな。

 なんでもは知らな(ry。byカ(ry


 俺と楓は既に準備を終えて街壁近く、あの日と同じ場所で同じ時間の早朝に馬車に乗っている。

 旅に必要なものは以前にアイテム袋に詰め込んでるから馬車には金床だったり大きめの鍛冶道具だったり袋に詰めれない親方からカノンへの選別が積まれている。

 特に準備する事もないから俺達は馬車の上でダラっとしながらカノンを待つ。

 程なくしてカノンが自分と同じくらいの重さはありそうな袋を抱えて走ってきた。


「あいつあんなに筋力あるんだな、アイアンベアを倒したからか?」


「涼太ってカノンから腕輪返してもらってないよね」


 あっ、よくわからん依頼されたり強敵と戦ったりぶっ倒れてたせいで忘れてた。


「い、いや、あれはあげたものだから」


 自分でも噛んだように感じるが所詮は200しか上がらない装備だし、あげる気だったし。


「お〜イ」


 目が合うと楓は手を振って此方に駆け寄ってくる。

 目の前に来るとゼーゼーと息を切らしている。


「なんだその大荷物は」


 ちょっト待てヨ⁉︎とか言ったがそれ言えるなら喋れるだろ。


「えっト、今までの木彫りの作品とか鉱石だゾ」


「鉱石なら親方から貰ってアイテム袋に入れてるし木彫りの作品もサイズ的に全部入れられるぞ」


 そういうとカノンは急にあんぐりと口を開ける。


「そういう事は先に言ってくれヨ」


「私言ったよね、この袋に入れられそうなものは言ってって」


「いヤアイテム袋にそこまで入るとは思わないだロ⁉︎」


「は?幾らでも入るんだから思うも思わないも無いだろ?」


「知らないのか?アイテム袋は一番最初に素肌で触ったやつの魔力量に比例して内容量が増えるんだゾ?」


 最初に素肌で触った、えっと確か

————涼太はまず鑑定盤で調べることを覚えようよ危ないかもしれないでしょ、えーっと『アイテム袋』だって————


「楓じゃん……そりゃあいくらでも入るわ」


「えっ、でもいくらでも入るって鑑定板に書いてたような」


「楓の魔力量は知らないけドそれは楓が触った後に調べたからだロ?」


 結論:楓はチート


「そう、なんだ」


 はははっと乾いた笑みを浮かべている楓。

 おかげで楽な生活をさせて頂いてます、と心中で拝んでおく。


「とりあえず街を出ようぜ、ステータスの話とかもしたいしな。」


 とりあえず俺が御者席に乗って二人に馬車に乗るよう促す。

 前の御者さんが操作してるのを見てある程度覚えたしあとは感覚で出来るはず。

 そういえばあの人はちゃんと次の街に付けただろうか、死んでたらどうって話でもないがな。

 気付いた時には二人は既に乗り込んでおりカノンは意気揚々に


「そうだナ、じゃあしゅっぱーツ!」


 と叫んでいた。

 なんとなーく、寂しそうにも聞こえた。

 俺がそれに気付いたんだから楓が気付かない訳もなく。


「カノンはちゃんとお別れ言ってきたの?」


 楓がそう聞くとカノンが俯く気配を感じた。

 言ってないのかよ、この年の女子って素直じゃないのな。

 って、お?


「カノン見てみろ、お見通しだったみたいだぞ」


 街壁の門のすぐ横に腕を組んで親方が仁王立ちをしている。

 そしてその後ろには鍛冶屋メルトの鍛冶師達も控えていた。


「親方?なんで居るんダ?だって家で寝てたはずジャ」


 驚きや感激が混じったような声が聞こえた。


「親方さんはカノンのことカノンが思っている以上に大事に思ってるんだよ。」


 楓はそう言うとカノンに寄り添うように移動した。

 こういう事は女子同士に任せるのが良いんだろうな。

 と思ったら親方がやべえことをやり始めやがった。

 具体的に言うと腰に吊るした槌を手に持ち振りかぶりやがった。


「え?あっ、ちょっ待て」


 ビュンッ、そうやって唸りを上げて俺に向かって飛ばされてきた。

 確かに俺はこれに当たっても死なない、ぶっちゃけエンチャントすれば薄皮一枚も傷つかないがビジュアル的に焦る。

 流石にそれを分解する訳にもいかないって事で片手で受け取る。

 その槌はなんとなく重く感じた。

 娘を頼むぞってか?

 言われなくても分かってるよ。


「カノン、親方からの最後の選別だぞ」


 カノンが受け取れるよう優しく放り投げる。

 それは一目でわかる、ここ数日で作れるようなレベルじゃない、いつかのために作っていたであろうそれ。

 頭、つまり撃つ部分が銀色で持ち手がカノンの目と髪の赤と金で装飾されたカノンの槌だった。

 それを受け取ると槌と親方を交互に見る。


「親…方……」


 声が震え方が揺れ、その目には涙が溜まる。

 そして俺達は鍛冶屋メルト達の横を通過する。

 お互い何も言葉を交わす事なく通り過ぎた。

 俺から言う事はもう何もない。

 誰かいう事があるとすれば


「ありがとウ。親方、みんナ!」


 前を向いていた俺には気配だけで表情までは読み取れないがきっとカノンは笑顔で礼を言えたんだろう。

 ちょうどカノンが通り過ぎる頃、親方の声が後ろから聴こえてきた。


「今生の別れじゃあるめえし、大袈裟なんだよ……元気でやれよ」


 そんなことを言いつつも声が震えてるのは触れない方が良さそうだな。


「うン、うン!」


 カノンも釣られるように再び涙を流す。

 彼女は多分、この別れも選択も自分の成長の糧とするんだろうな。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 あれから数時間後、馬を休憩させるついでに俺達はステータスの確認を行なっていた。


「楓も涼太もレベル高すぎるだロ⁉︎」


「ダンジョンで幾度となく死にかけたんだよ」


「そうなんだよねぇ、安全に攻略しようとしたらいつの間にか上がっちゃってたんだよ」


 俺のステータスはついこの間確認した時とほぼ変わっていない、魔力視とかいうのが追加されたくらいだな。

 俺達のステータスが高すぎるだけで多数のアイアンベアを緊縛して討伐の補助をしただけあってカノンも一般人離れしたレベルになっている。

 カノンがあっさり倒したり他の冒険者もなんだかんだで良くやってたけどアイアンベアは相当強力な魔物だ。

 少なくともアイアンベアの下にロックベアが存在し、そいつでさえ村一つ崩壊させうる可能性を持つ化け物だ。

 対魔族最前線の国の首都だけの事がある。


「それにしてモ、まさか私のレベルもここまで上がるなんテ……」


 そんな化け物を複数体、カノンのレベルは今や100超えとなっている。

 虫や魚を殺すくらいしかしない一般男性が10程度らしいから100ってのはかなり高い。

 ちなみに冒険者のまず目指すラインが100らしいな。



ステータス

カノン 女 13歳

Lv.103

HP 5230/5230

MP 4320/4320

STR 153

DEX 10549

VIT 4610

AGI 5080

INT 8650


(スキル)

・メイカー(固有級)

パッシブスキルで何かを作り上げる事に補正、STRにマイナス補正

・造形(希少級)

創作に補正

・彫刻(技術級)

彫刻に補正

・操糸(技術級)

糸を操作する事に補正



 初めて見るからスキルの内容も全部表示したがメイカーのスキル、多分DEXとINTにも補正かけてるな。

 その上に造形とかいうスキルも相まってあの糸で複雑な結界じみたものを作り上げてんのか。

 流石にステータスの数値はかなり違うがそれは100レベルごとにある壁を超えたら大きく上がるからそのうち追いつくだろう、にしても。


「お前……異世界人の血とか流れてないの?えげつないスキル内容してるな」


「いやいや、ついこの間まではSTRは1とかだったシ、DEXも200くらいの常識的な数字だったんだゾ?」


「操糸はこの前の戦闘で覚えたのかな?本来は服飾業の人が覚えるみたいだね。」


byカエペディアreturns


 服飾業って、カノンには戦闘用スキル0であそこまでやってたのか。


「ステータスで言ったら楓の方が変だロ⁉︎」


「それは俺も同意だ」



ステータス

白波 楓 女 17歳

Lv.358

HP 32497/32497

MP ∞/∞

STR 15360

DEX 27520

VIT 21850

AGI 43670

INT 73270


(性格スキル)

・悪戯者《トリックスター》

魔法を罠として設置出来る。


(スキル)

・無限の魔力(幻想級)

魔力が∞になる

・全属性攻撃魔法(究極)

攻撃魔法にプラス補正

・全属性魔法適性(究極)

火、水、風、土、氷、雷、光属性の魔法にプラス補正

・常時回復(究極)

常に回復し続ける

・魔力視(技術級)

魔力の流れを可視化する

・魔力操作(技術級)

魔力を操作する際プラス補正



 これをふざけてると言わずに何と言うのか。

 究極スキルとは常人が努力の果てに入手できる『かもしれない』スキルだぞ。

 こっちに来て数ヶ月の人間がそう二つも三つもぽんぽん入手出来るものじゃないんだけど。


「楓はチート、これ覚えてないと今後心労で死ぬ」


「そうだナ、覚えておくヨ。」


 はぁ、と二人揃ってため息を吐く。

 なんだかんだで多分二人の心が一番深く繋がった瞬間だと思う。


「二人揃って何言ってるの、ちょっと人より得なだけだよ」


 こうして俺達の共和国への旅は始まる。

 次に相見える魔族は大罪なのか、そうだとしたらどの大罪なのか。

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