けじめ
俺は今回、山籠りしていた異世界人の子孫として帝国に表彰される。
場所は王座、複数の目の様な浮遊する魔道具によって国内へと発信される。
身バレは避けたいから噂に合うよう黒髪きしているがメイクで変えている。
王生が言うには日本人顔は少ないらしく有名にならない限りメイクすると判別はし辛いらしい。
楓は流石にクラスメイトには無事を知らせたいらしくどうにか伝えようとした結果
「冒険者カゼキ、ヒイラギよ面をあげよ。此度は帝国の危機に駆けつけてくれた事、まずはこの国の皇帝として感謝する。」
風木が楓に、柊が冬木になる、まあちょっと捻った考えではあるけど伝わらなかったらその時だな。
この世界は言葉自体は日本語として伝わるが漢字自体はそこまで伝わってないから一回漢字を経由したわけだ。
ちなみに俺がカゼキ、楓がヒイラギと名乗っている、名前さえ伝われば良いから響きで決めただけだけどな。
顔を上げ立ち上がる、それでも王生は他より一段高いところにある玉座に居るから少し見上げるのには変わりない。
ただその事に関係なく皇帝としての王生は大きく見えるもんだな。
さぞ色んなもん背負ってんだろうけど数十年で高校生がこうなる世界で戦わなければダメって考えると何度目か分からんが腹括らないとな。
「我が国からは貴殿達に武具と名誉騎士の称号を進呈する。」
名誉騎士……聞いてないんですけど⁉︎
「身に余る光栄です、これからも帝国の為、己を磨き名誉騎士の称号に恥じのないよう精進いたします」
と楓が淡々と受け答えしている。
あっ、あなたは聞いてたんですね、ホウレンソウのホの字すらなかったんですけど。
とはいえここでどれだけゴネても悪い方向に進むイメージしか湧かないし諦めるが吉だろう。
すると皇帝の近くに控えていた豪華な服をきた大臣?的な役割であろう人が二人の荷物を持った人間を連れて前に出た。
「これが貴殿達の名誉騎士の証となる、受け取ってくれ。」
それを受け取ると周囲から拍手が送られた。
この場に集まった貴族は多くない—そもそも貴族が少ないと言うのもあるが—短期間で頼んだ故にそうなるのも仕方ないが少人数とはいえ俺達が名誉爵をもらう事に不満があるやつが居ないのは意外だったな。
って、皇帝が辞めたいって言ってるような国じゃ人気がないのも当然か。
貴族になって数字と向き合うより熱した鉄とか魔物と向き合う方が性に合う人しかいないんだよな。
それからは何事もなく式典は終了した。
他に何かあったかと言われたら俺と楓に与えられた武具が紹介されたくらいだ、流石に客人が王の前で剣を抜くわけにもいかないから俺は持ち手と鍔、あとは鞘だけではあるが。
俺の剣には鍔に、楓のローブには胸元に帝国の盾に槌と剣が交わった紋章が飾られていた。
そして現在、俺はその剣の刀身を鍛冶屋メルトで眺めていた。
『刺殺涙剣ラクリマ』
とある龍がドロップした武器と全身を鉱石の毛が覆う魔物の骨を用いて造られた剣。
限界まで薄く、鋭く造られていた刀身に硬さが加わった事でガラスの様な脆さと引き換えに限界を超えた鋭さ得た。
この剣での傷は魔法的要素では決して言える事なく常に激痛を与え続ける。
Sランク魔獣と恐らくそれに匹敵する龍を素材にしただけあってかなりチートじみてる性能だな。
武器の特殊能力としてある魔法で癒えない傷をこれをドロップしたって言う涙龍が繰り出してくるならかなりの強さだろうな。
恐らく攻撃に特化してるからダメージは入るだろうけどよく勝ったよな。
そして超特殊な刀身、ガラス状の突き刺す事以外ではすぐ壊れそうな刀身は日本刀のように光を反射する。
ナイフの刃よりガラスの方が硬度が高いのは知ってるだろうか、硬い=壊れない訳じゃない故に硬質化しすぎて刺突に特化している。
複数の武器を使う前提でなければ受けることも流すことも出来ずかなり扱い辛いだろう。
そして何よりも恐ろしいのが光を反射する刀身で、もしエルバートが使う槍撃を再現できたなら初見で一体何人が対処できるだろうか。
「ほんと、どこまで運が良いんだか……」
相性が良い武器が二本も手に入った。
「坊主、武器眺めてばっかいないでそこの机を片付けてくれ、武器を持ってきたぞ」
俺が来る前に片付けておけよ、って思うのは俺が間違っているからなんだろうか。
仕方ないので片付ける(そこら辺に放り投げる)と俺が預けていた武器達が机の上に並べられていく。
そしてその全てがまるで新品であるかのような輝きを纏っていた。
その中でも驚きなのが氷騎士団の聖剣とクラックだ。
たった数日でここまで直しきるってのは俺には真似できん、分かってはいたつもりだが本当に凄いおっさんなんだな。
「今日もカノンが話がある、行ってやってくれ」
へえ、なんだろうな。
「後でいく、で幾らだ?」
と言おうとすると
「私が払っとくから直ぐに行って来なよ」
「いや自分の武器の手入れ代くらい」
「は・や・く」
俺に反論の余地は無かった。
楓も親方も知ってそうだし教えてくれれば良いと思うんだが、本人が言うべき事なのか?
という事で何度目かの来訪である。
いつも通りノックをして入ると神妙な顔をしたカノンが部屋の中心あたりに座っていた。
「あっ、えっとその、とりあえず座ってくレ」
促されるままとりあえず適当に椅子を引っ張ってきて座る。
周りを見たら以前来た時よりもかなり物が減った気がする。
と言っても女子の部屋をじっくり観察する趣味なんてないから気のせいかも知れんが。
「それで俺に話があるんだろ、何のようだ?」
「えっと、そのナ、お願いがあるんダ」
「とりあえず言って貰わないとどうにも言えないんだが」
「そうだよナ、まずこの事に関しては親方にも楓にも許可は貰ってル」
「随分と勿体ぶるな、でもまあお前の頼みならある程度は叶えてやるよ」
なんか、自分で言ったことではあるがあの俺がここまで肩入れするとはなぁ。
「ほんとカ⁉︎分かった、そノ、だナ」
カノンは改めて椅子に座り直すと姿勢を正してこう言った
「一緒について行っても良いカ?」
「……意味が分からんぞ、お前はこの街に居るために命懸けで帰って来たんじゃ無いのか?」
一先ずは冷静に返せたと思う、ような気がするようなしないような。
「私は親方にもこの街の人達にも死んで欲しく無かったからだゾ」
「俺達は魔王討伐を目標にしてる、親方が本当に許可を出したのか?」
「世界を見てくることはクリエイターとしての成長に繋がるってサ」
「……子供を命がけの戦場に連れて行くわけには」
「今更だゾ」
だよなぁ、それに楓も許可出してるっぽいし。
ここで足手まといだって言えばどうにかなるんだろうけど、腕輪でSTRが上がった今なら武器の手入れも出来る、レベル上げをすればあの鉄線で十分以上に強くもなるだろう。
「断る理由がないんだよな」
「ほんとカ⁉︎良いんだナ⁉︎」
「はっ?口に出てt
「やっタぁぁああ!!!!!!」
あっ、もうダメな奴だ。
気付いた時には既に俺の横を通り過ぎて伝えに行ってるし今の大声で多分親方と楓に聞かれてるんだろうな。
どうしてこうなった。
ため息を一つその場に溢してその部屋を見渡すと物がなくなったように見えた部屋には私物が消えているのに気づいた。
ここまで計算通りかよ。
となんだかんだ言いつつ心の隅で少し嬉しく思ってる自分も居たり居なかったり
テストだ試合だで随分と遅くなりました反省してます




