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そういえば……

 さてと、そろそろ昼なんだが何処で飯を済まそうか。

 楓には今日は一人で過ごすって言ってるし簡単に済ませたいんだが。


 一時的に避難した人員は多く、順当に帰ってきているとはいえ未だ全員が戻った訳では無い。

 しかし食材を卸す仕事をしてる者達と宿屋関係者だけは冒険者等の関係上一足先に戻ってきているんだが…。


 そういえば宿屋に顔出しとくか、火鉢亭だったな、結局行く機会も無くなったし飯だけでもそこで済ませよう。

 そうと決まればさっさと行くか。

 帰還にごった返す人並みをすり抜け火鉢亭へと向かう。

 職人集まる場所からは多少遠いとはいえ十分程度で到着した。


「すんませーん、飯だけって出来ますか?」


「いらっしゃ……黒髪単発、細身、漆黒の武装、空色の手甲……」


 以前と同じ感じで挨拶をされるのかと思ったら固まったかと思ったら急にぶつぶつと言い出した。


「もしかしてあんたが救国の英雄さんかい⁉︎」


「……は?」


「あんたじゃ無いのかい?Sランク魔獣を一刀で切り捨てたとか言うやつは」


「え?あっ、いや、まぁそう……かな?」


 色々脚色されてね?

 あんな化け物熊を刀一振りで殺せる奴なんていねえよ。


「いやぁ、ありがとうねえ、おかげで祖国を捨てずに済んでるよ」


 その声が響くと共に宿屋カウンターより奥にある飯用のテーブルで話してた何人かが騒ついた。

 宿屋にいるならあんたらも戦地にいた冒険者だろ、今更驚くなよ…。


「いや、国を救おうなんて大層な者じゃないっすよ、ただカノンに頼まれただけで」


 俺は性格上国を救う事を自分の為とは思えんからな、それじゃあスキルは発動しないんだよ。


「カノンってメルトの所の娘さんかい?童女の頼み一つで国一つ救ったのかい」


 目を見張り分かりやすく驚くと豪胆な人だね、と豪快に笑い飛ばした。

 あぁ、誤解が加速する。

 いや、間違ってはないのか?

 カノン>帝国なだけだっただけなんだけどなあ。

 やっぱ言ってる事変わらない?いや、ほら、あるじゃんなんとなくニュアンスの違い的な。

 何にしろこれが知られれば化け物を一刀で切り捨てた奴から幼女の頼みで化け物を一刀で切り捨てた奴へランクアップしてしまう。


「やっぱ今の無しで、俺は帝国民の為に街をすくったんだぞ、あぁ帝国民の為だ」


 とりあえず後ろで更に騒いでた冒険者にも視線をやり釘を刺しておく。


「はいはい、そういうことにしとくよ、で飯だけで良いんだね?」


 なんか意味ありげにまるで思春期の息子を見るような目で見られた。

 仕方ない、隠してくれるなら甘んじて受け入れるしかないか……はぁ。

 飯は日替わりしかないらしく飯用テーブルに座り待っていると直ぐに出てきた。

 俺より先に座ってた人より後だったし繰り上げた訳でもなくいつもこれくらいのスピードなんだろう。

 味も文句の付けようもなかった、高級感という面で見れば帝国城に劣るが庶民的な味の最高峰と言っても良いだろう。

 出てきたのはシチューの様なものに塩漬けの野菜、トーストされた硬めのパンだった。

 シチューはデミグラスシチューとクリームシチューの中間みたいなものでこの世界特有のものなんだろう。

 硬めのパン自体もそれに漬けて食べる事を想定してるんだろうフランスパン的なものだ。

 個人的には帝国城の食事より庶民的でこっちの方が舌にあってたりする。

 大変美味しく頂いて代金が幾らか聴くと、


「国を救ってくれた英雄様に金なんて貰えないよ、非国民なんて呼ばれちまうさ」


 ずっとじゃないがね、と注釈も付いたがやっぱこの国の人らは良い人が多いな、今更ではあるが救ったのは正解だったな。


「じゃあご馳走さん、また来ることがあったらその時はよろしく」


 良い気分のまま送り出された。

 さて、次はどうするか。

 そうだな、冒険者ギルドにでも行くか。

 鍛冶屋に比べれば直ぐについた、火鉢亭がギルドに紹介されたから当たり前と言えばそうなんだが。

 行ってみて自分で感じた結果、冒険者ギルドの中の空気感は重くなっていた。

 しかしそれは魔獣の被害を悲観する重さではなく冒険者そのものの練度、威圧感が強くなった事が原因だ。

 この街にいる冒険者は生粋の戦闘狂、対魔王の最前線の国、その中でも魔王国領の国境ともう一つの脅威魔獣の森に面する対魔獣の最前線。

 そんなところにわざわざ冒険者としてくる連中は強大な暴力に折れず、自分を絶望させた生命にトラウマをカケラも持たず、あの化け物に勝たんと発起していた。

 そしてその者達に与えられたのは己達が倒したAランク魔獣アイアンベアの経験値という名の後押しだった。

 気配だけで感じる別格の四人、シアン達な訳だがあいつらは初めてSランク魔獣と相対した経験から多くのものを学んだんだろう。

 今戦うなら四対一なら無傷ではいられないだろう。

 これならこの国を出ても安心そうだな、ちゃんとカノンの安全は保証されそうだ。

 まだまだ夜には遠いが満足いったし帰るとしよう。
















 そういえば最初に冒険者ギルドにいたシアン以上の実力者って誰だ?

 ギルド長は結局楓の掌でコロコロされてたおっさんだったしなぁ。

次幕間入るんで今回は短めで

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