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鍛冶屋の本気

 朝のルーティン、と言ってもただ飯食って身体解した位だが、を終えて現在昼。

 もう一組の対談相手の鍛冶屋メルトに一人で訪れている。

 楓曰くけじめはつけてきなさいよ、とのこと。

 俺は存外親方の怒りを買っているらしい。

 なので今は宥める、というよりなんとか理解してもらおうとしてる最中だ。


「落ち着けって、俺は依頼を遂行しただろう依頼通りこの国から南下してから昼頃に手紙を渡したじゃないか」


「そのあと戻ってきたら意味がないことくらいわかるじゃろうが!!!!!!」


 と、このようにお怒りである訳だが


「おっさんの意思より幼気な少女の願いのどっちを優先するかなんて明らかだろ」


「その幼気な少女を戦場に連れてくる奴があるか!!」


「死ななかったから良いだろ」


「全員死んだらどうする気じゃった」


「誰にも文句は言われねえよ、全員死んでんだから」


 ……………………なんか言えよ


「文句を言いたいなら精々生きてろ、勝手に死んで後は任せたなんて事を俺が許す訳ないだろ。

 自分勝手な願いがあるなら自分自身で叶えることだ。」


 他人の人生を左右させる自分勝手も誰の願いよりも自分の願いを叶える傲慢も、本人あって初めて成り立つってもんだ、だから俺は死なねえし殺される気もねえ。


「今回は全部救って自分も生きるつもりだったカノンのわがままの勝ちだ。」


 ぬぐぐぐぐっと何やら言いたい事があり気だが、全員助かったんだからこれ以上言うのは野暮ってもんで、大人しく引き下がってくれるらしい。


「まあそれはもう良い、礼をさせろ、武器を出せ」


 そう言うと自分の工房へ行こうとする。


「別に良い、カノンの借りを返しただけだ」


 そう言うと、おっさん顔を歪めて悪戯っぽくして


「小僧に損はないだろうこれくらいの勝手はさせろ、ちなみにオーキスってのは既に楓の嬢ちゃんに貰ってるぞ。」


 ったく、職人ってのはどうも負けず嫌いが多いらしい。


「分かった、くれぐれも失敗してくれるなよ」


 するとは思ってないが、まあ負け惜しみみたいなもんか、と思いつつ親方の工房へと着いていく。

 今回の戦闘で仕事をしてくれた武器達全てをそこら辺の机に置く、あいつの硬さのせいでグロニア以外は刃こぼれでボロボロだ。

 氷騎士団の聖剣と防御用に使った大剣のクラックは損傷が酷い。

 慣れてなかったせいもあるが氷騎士団の聖剣は前折れた時は再構築で直すのに丸一週間かかった位だ。


「ミスリルランスはちと手も加えるがそれでも良いか?」


「任せる、弱くはならないだろ?」


 当然だ、と言葉が返ってくるとミスリルランスを火のついた炉に入れる。


「カノンを呼んで来てくれ、」


 その一言と同時に火力を調節したり槍の様子を見たり窓を開けたり

と動き出した。

 不甲斐なさでも払拭したいのか、とりあえず呼んでくるか。

 という訳でカノンの部屋前へと赴いた。


「カノン俺だ、涼太だ、親方が工房で呼んでるぞ」


 ノックをして扉に手を掛ける。


「涼太⁉︎ちょっとまってくレ、直ぐ行くからそのまま待機ダ!」


 バタバタと音を立てて十数秒、カノンは出てきた。

 慌てていたようだがカノンに変化がある訳でもなく多少汗をかいていた位だ。

 どうせ服脱いでだらけてたんだろうな。


「じゃあ行くか。」


「おっおう」


 それだけの会話にぎこちなさがあった。

 俺なんかやらかしたっけ……って俺の死にかけた現場をこいつは見てんのか。


「心配かけたな、もう身体は完治したぞ」


 工房への廊下を歩きながら話しかける。


「こっちこそすまないナ、私の無茶のせいであんな…あんなことに…」


「はぁ、気にすんないつものことだ。お前が居なくても楓が助けようとしてたよ。」


「でも……」


「お前を助けようと決めたのは俺だよ、泣かれたら困る」


「そっか、分かっタ。私決めたゾ」


 そう言うと少し前に出てこちらを見ながら笑顔を顔に浮かべた。


「何を決めたのかは知らんがそれは良かった、けど後ろ歩きは止めような、こけるぞ」


 と言うと同時にわわわワっと手をブンブン振り回しながらこけた。

 思わず少し笑ってしまいそれに釣られてカノンも笑っていた。


 そんなこんなで一応けじめは付けたって事で良いのか?などと思いながら親方の工房へ到着。

 すると中では鬼のような形相で槍を槌で打つ親方がいた。

 その様子につい目を奪われる、素人の俺でさえそえ見えたんだ自分の師匠の本気はカノンにどう映ったのか。

 汚名返上を果たした事は間違いないだろう、果たして評価がそもそも落ちてたのかは謎だが。

 それから数時間、槍と真剣に向き合う親方の姿を目に焼き付けた。

 そしてある時、槍が光をあげる。

 そのものの存在感が増し格が上がる。

 武器が進化した、そう錯覚させるかの様な光、果たしてそれは錯覚なのか無機物が進化したと断言しても良いのではないか。

 その光が鎮まった頃、槍は完成した。

 そして親方はその武器を手にこちらへ振り向くと


「どうだカノン、お前の親な凄いだろう。世代交代はまだまだ先だな」


 そう勝ち誇った。

 大人気ねえな、そう思わないでもないがその姿がまるで悪戯っ子よ様で妙に様になる。


「どうだ坊主、俺の最高傑作だ。」


 渡された瞬間に錯覚した、まるで自分の腕が槍の長さ分伸びたかの様だ。


『聖鉱熊槍《せいこうゆうそう》』

 ミスリル鉱石とミスリルベアの体毛を用いて作られた槍。

 周囲の魔素を吸収し使用者へ還元する。

 魔力を通すだけで硬度が増す。


 化け物性能じゃねえか、世の魔法使い全員(楓を除く)が欲しがる槍、ダンジョン産なら八十階層より下でしか手に入らない様な高レベル。

 ってかあの熊、魔素吸収なんて持ってやがったのか、硬化を高い効果でより長く発動出来たのはそれが原因か。


「とんでもないもん作りやがったな」


 さらにやばいのがこの槍と俺の相性の良さだ、俺が魔法を魔素に変えてこの槍で吸収する。

 魔法使い絶対殺すマンの完成である。

 対魔王の為に準備はどれだけしても良い、何しろ大罪一人相手に毎回死にかけてんだ。

 そのスキル全てと戦いの内容が魔王には還元される、常に強くなり続けないと相対した時即死だろうな。


「残りの整備もやっておく、そうだな二日後って所か」


 皇帝に武器が貰える日と同じか。


「ちょうど良い、その日までに頼む」


「おう、俺からの用事は以上だ。」


 作業の邪魔になるとダメだ、さっさと部屋から出ることにする。


「カノンそろそろ出るぞ」


「え……あっ分かっタ」


 そう言って俺について部屋から出る。

 すると再び扉を開けて工房に顔だけ覗かせた。


「……親方、いつか追い越してみせるゾ、それまで死ぬなヨ」


 その言葉に親方はおう、と返したきた。

 俺には扉が邪魔で見えなかったがなんとなく、安心してるように聞こえた。

 言い終わったカノンは顔を引っ込めてバタンと勢いよく扉を閉める。


「行くゾ」


 照れ隠しか、随分と藪から棒だな。

 まだまだ子供って所だな、まあ年齢的には人の事は言えないが。

 カノンが部屋へ帰るのを見届けて俺は帰路に着いた。


「ほんと、今回は良い武器が手に入ったな。」


 やりたい事やって各種耐性、金、そして武器、まだ貰えて、これだけで死にかけた甲斐があるってもんだ。

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