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一方その頃帝国では

 俺達は数日前にSランク魔物の討伐への招集が命じられた。

 鍛冶屋メルトの鍛冶士全員で来いってよ。

 俺達の工房は帝国では贔屓目なしで良い店だとは思ってるが、全員とはな。

 数日前から全員に辞めるなら今のうちだって言ってんのに誰も辞めやがらねえってどう言うことだよ。

 そのくせカノンを逃すのにはやけに協力的だったし、ほんとこいつらは、良い仲間を持ったもんだ。

 今は召集当日、街の南東外壁の外側、大手の鍛冶屋が作った柵や簡易櫓を設置し開戦に構える。

 恐らく魔物達の姿がそろそろ見えるだろうな。

 空気すら轟く魔物の咆哮、それが開戦の狼煙だった。

 銀色に光る体毛に太陽を反射させ大量にの魔獣達が現れる。

 数は百以上、これだけで普通の国家は崩壊するだろう。

 『アイアンベア』鉄で出来た体毛で己を守り強靭な爪や牙とその力を持って敵を駆逐する大熊

 強さはB〜Aランクと言われる上位の魔物、故に今回召集された冒険者はB以上が戦闘をそれ以下は補助を担当する。

 Bランク以上の冒険者が多く集まる対魔族の最前線だからこそ出来る作戦だ。

 冒険者達がついに魔物と衝突する、とりあえず今は落とし穴による妨害等有利に立ち回れている。

 俺達鍛冶屋の仕事はもう少し後だ。


 開戦の十数分、仕事がやってくる。

 鉄で覆われ更に己の魔力で強化されたその体毛は簡単に冒険者の武器を潰しちまう、だから今回の戦闘には武器の交換と修理の為に俺達が最前線に呼ばれた。

 鍛冶屋が作り武器屋が収集した武器はいくらでも予備がある、戦場は優勢に思えた。

 中でも『戦帝』は各々でアイアンベアを屠り、王の護衛という槍使いと次々と的確に体毛ない瞳を穿ち、そして皇帝が複数体を一撃の元に撃破する、皇帝が居ていいのかは聴くなそう言う人なんだ。

 このままいけば勝てる


筈だった。


「ゴアァァアアァアァアアア‼︎‼︎‼︎」


 開戦時の咆哮が再び上がる。

 負け犬の遠吠えかとも思った、事実戦場の優勢は変わらなかった。

 ただどこかで俺達は頭の中から存在を追い出していただろう、Sランク魔物存在を。

 次の瞬間重い破壊音と共に土煙が舞う。

 土煙が晴れる頃には複数人の冒険者が伏しているのが目に移った、その冒険者達はいずれもAランク間近と呼ばれるような者たちばかり。

 そしてその惨劇をおこしたナニカが煙の中から現れる。

 二メートルはあるであろうアイアンベアより一回りは大きい三メートル程の体躯、獰猛な瞳、響く重低音の鳴き声。

 そして遠目にも分かる、極彩色のその体毛、その爪、その牙は俺達鍛治屋が最も欲する鉱石の一つ非常に高い魔力伝導率とその硬さに定評のある鉱石『ミスリル』で構成されている一匹の熊《バケモノ》だった。

 近くにいた多数の冒険がそいつに飛びかかる。

 しかしそれも無駄に終わる。

 その体躯からは想像もつかないようなスピード、なんてものはないただ受ける。

 避けず、構えず、そもそも意識すら割かず、ただ近づいた子虫を払うかのように攻撃を受け、なぎ払う。

 手を振る、それだけの行動で上位冒険者が吹き飛んだその行動に補助に回り外壁近くで補助をしていた冒険者が呆然とする。

 いや、俺達も同じようになっていた。

 恐怖に囚われなかったのはたったの六人。


『皇帝』王生《いくるみ》 狂介《きょうすけ》

『皇の矛』エルバート・ケイネス

『戦斧』シアン

『要塞』ランクス

『俊獣』コロネ

『森精王《しんせいおう》』クレイ


 その六人のみが動いた。

 まず皇帝以外の五人がミスリルベアを止めに行くそしてその時間で皇帝がその威厳を放つ。


「お前らぁ!動け、びびんな!お前らを率いるのは誰だ、俺だ!お前らが選んでくれやがった俺だ!だから俺は諦めねぇ、殺させねぇ、お前らに死ぬのも許さねぇ、戦え!皇帝として俺がお前らを勝たせてやる!!!!!!」


 六十を超えてなお放たれるその威圧と威厳、実力主義のこの国において未だトップに立つその男は諦めていなかった。

 『不撓不屈』皇帝が持つとされる性格スキル、折れることも恐れることもないそのスキル、しかしそれだけでは出ない威厳がその言葉には乗せられていた。


 これが皇帝の威厳ってやつか、つくづく凄ぇな、俺達の皇帝ってやつは。


「お前ら、働け、仕事の時間だぁ!くれぐれも冒険者の武器と防具、切らすんじゃねぇぞ!!!!!」


 皇帝よりも勇気を与えられた数は少ないだろう、だが、鍛冶屋メルトは他のどの鍛冶屋よりも先に動き出した。

 今さっき皇帝が指示を出した、アイアンベアの数が減ったことにより上位冒険数人を対ミスリルベアの戦に使われる武器の交換役にすると。

 それによって大量の武器がミスリルベア戦で使われる事が予測される。

 だからこそ、俺達は動き出す、鍛冶屋としての仕事を全うする。


 戦況は今は拮抗している……と言えるのだろうか。

 シアンの戦斧が攻撃弾き、ランクスの大盾が流し、コロネの攻撃が膝を崩し、クレイの魔法がミスリルベアを縛る、ほんと、あいつらも強くなってるんだな。

 そしてエルバート・ケイネスが定期的に瞳を狙っているが、避けられる。

 そのどれもが傷つけることすら出来ない。

 しかし五人は徐々に削られており何度か武器も交換している。

 今の勝機は皇帝が行なっている『集約《チャージ》』のみ。

 いくつもの迷宮の主を一撃で屠ったという力を集約する攻撃。

 戦いが始まって二時間、初めのうちに普通の攻撃じゃ足りないと判断した六人はこの作戦へと切り替えた。

 そしてクレイの拘束魔法を最後に遂にそれは放たれた。

 その一撃に派手さは無い、ただの剣が一振りされただけ、光も音も、射程も、全てがその一撃に集約された一撃が穿たれる。

 そして俺達の戦いは終わった。






 皇帝の持つ大剣がミスリルベアに当たり砕ける音とともに。

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