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皇帝の護衛

 なんの説明もなく連れられしばらくすると開けた場所に出た。


「ここは…」


 王城にもあった駐兵所や訓練所と言った場所へ案内される。

 護衛はゴソゴソと端に置いてある箱へと向かい


「受け取れ」


 槍を持ったかと思うとこちらへ刃が潰された剣を放り投げてきた。


「試合でもしたいのか」


「あぁ、魔王軍幹部を倒したというその実力、護衛の為に知っておきたい」


「ハッ、嘘つけ目がギラついてんぞ」


 先程護衛が武器を取ってきた場所から様々は種類の武器を左下の手甲に収納していく。


「変わった防具を持っているようだな」


「どんなもんかは戦ってみてのお楽しみってな。」


 見れば分かる気の力、トレーニング後のシアンを凌駕する実力が。

 その肉体から放たれるであろう超上級レベルの槍術、あぁ気合入ってきた。

 『我道』発動






 魔王軍幹部を倒したという客人、という割には余りに覇気がない。

 実力はあるだろう、一つのものを尖らせたものとはまた違う強さが。

 それなのに底が見えるような、隙がどこかにありそうな、そんな感覚。

 それを確かめる為にこの場に来た。

 互いに武器を準備し構えた途端、質量を持ったかのような威圧感が俺を襲った。

 性格スキルもしくはスキルの類か……面白い。

 俺は槍を、相手は片手剣と大鎌を向け会う。

 合図も何もなかったがお互いが動くタイミングは同じだった。

 二人の間にあった距離は瞬時に詰まる。

 そうなると先に攻撃が届くのは俺の槍、心臓に向かって思いっきり突き出す。

 しかしそれは見抜かれていたように感じるほど正確に剣で流され左手側の脇を抜ける。

 お互いまだ止まっていない以上距離は近づき即大鎌の間合いに入る。

 俺は槍を引いて両手で掲げるとそこへ大鎌が叩き込まれる。

 かと思えば手に持つ武器は短剣に変わっており掲げた槍は虚しく通り過ぎて短剣が俺に振るわれる。

 恐怖を感じ後ろへと飛び退くもピッタリとマークされている。

 一先ず距離を置くために浅く3連突きを放つも躱される。

 だが当初の目的通り距離は置けた。

 数秒とおかず再び相手は槍の間合いへと躊躇なく入ってくる。

 槍を横なぎに払うも躱された。

 いくらなんでも避けるのが早すぎるだろ、俺が槍を振るい始めた瞬間には既にしゃがんでたぞ感か、それともスキルか、可能性はいくらでもあるか。

 槍をしゃがんで躱した相手はそのまま短剣を突き出してくる。

 届かない距離だった、短剣ならば。

 武器がまた変わる、今度はショートスピアになると同時に間合いも変わる。

 咄嗟に身体を捻りギリギリで躱すも右手の剣が体制を崩した俺を狙う。


「……《エンチャント》」


 そう呟くと身体能力が全て一段階上昇した様な感覚を覚えた。

 崩れた体制を無理やり戻す、突然変わった身体能力にコンマ一秒にも満たない時間で三度俺の距離まで離れる。

 槍一辺倒な俺が覚えた数少ない魔法の一つは戦局を振り出しへと戻す。






 王の護衛の槍捌きは身震いする程だ。

 ただの槍の一突きですら槍の向きを調整する事で槍そのものが点でしか見えず距離が測り辛い。

 更には無属性エンチャントによる身体能力の急激な変化にも振り回されず使いこなしている。

 才能か努力かは分からないがこの槍を使った駆け引きは知性持つ生き物を困惑させる。

 常に相手の距離で戦わされている。

 エンチャント勝負、乗ってやるよ。


「《エンチャント》」


 己の心臓《エンジン》に燃料をぶち込むような感覚を落ち着かせ制御する。

 槍の間合いを踏み抜くと即座に上から槍が迫ってくる。

 右手に持った剣で右に流し左手に槍を持って突き出す。

 少し驚かれながらも流されるのを見越して槍を引き戻していたのかその槍を甘いと言わんばかりに弾く。

 今のはこの男の槍術を模倣し放った一撃、点にしか見えないその槍は距離感が掴めない感覚破壊の一撃になる筈が所詮は模倣か。

 弾くついでと左からなぎ払われる一撃に左手に大剣を逆手に出して地面に突き刺し盾代わりとする。

 手に重い衝撃を受けて左の大剣を離す。

 これで終わりだ。

 離した左手で右の武器を両手で持つ。

 全力の踏み込みに地面が沈み腰で肩で腕で手首で全てを稼働させその一撃に乗せる。

 驚きながら槍を引き戻し両手で構えた、このスピードにも対応してくるか。

 だが無駄だ、振るわれた一撃は歯が潰れた筈の剣が槍の持ち手を火花をあげて切り裂き護衛男の目前で止まった。

 ふぅ………あっぶねぇぇええ‼︎熱くなってマジで切りかけた。


「凄いな、すまん実力を疑ってしまっていた」


 え?あっ、いや、切り掛けた男にそんなこと言うか?まぁマジで切り掛けたのは分かってないだろうけど。

 でもそんなにふーやったぜ、みたいな感じでサラッと握手求めんなよ。

 正直言って冷や汗でダラダラだった、別に良いですよ、あっそろそろ時間なんで失礼します的な事を言ったと思う。

 多分武器も返した筈だ。

 え?なんで過去形かって?冷静になって落ち着いたら何故か部屋にいたからだよ。

 冷静になって落ち着いたってなんだよ頭痛が痛いって言ってるみたいじゃねぇか。

 落ち着こう。

 あれ?楓がいる。

 楓の髪はすでにしっとりと濡れており少し蒸気した身体からは風呂に行ってきた事を物語ってる。


「あ、やっと気付いた。お風呂行ってきたら?凄い汗かいてるよ。」


 そう言われてやっと気付きそそくさと風呂に向かった。

 正直言って馬鹿な事をしたなと思う、だって。


「あんたも風呂か、あれだけ動いたんだから当然か」


 槍使いの護衛さんもいるに決まってるよな。

 すでに湯船に浸かっていた護衛はこちらを向きよっ、と手を振ってきた。

 はぁ、戦闘前とかのアドレナリンとかが出てる状況なら普通に喋れるんだがしらふじゃなぁ。


「俺はエルバート・ケイネス、この国の皇帝専門の護衛だおもに客人との謁見や外出時に同伴してる。」


「俺は冬木涼太、勇者とか言うのになったらしい転移者だ、ここの皇帝と同じだな」


 そう言うと少し目を向いたが魔王が復活したし当然かと百年周期だった筈のイレギュラーに順応して見せた。


「俺の槍捌きはどうだった、何か直せそうな部分はあったか?」


 軽く髪と身体を洗って湯船に浸かるとそう問われた。


「槍捌きに関して言える事はねぇよ、だが少しエンチャントの使い方が気になったな」


「エンチャント?」


「あぁ、お前がどの属性が使えるのかは知らんがエンチャントってのは属性ごとに使い分ける必要がある、それぞれ強化されるステータスに差があるからな」


「それは分かる、なら無属性はどうなるんだ」


「無属性は少し特殊でな、他の属性と違って武器や装備にエンチャントされず己のみを強化する。だからこそ身体に負担も大きくなるわけだ、だから無属性の場合常用するなら魔力は抑えてここぞという時に魔力を増やすべきだ。あんたの場合は常に他のエンチャントと同じ量の魔力を流すから疲れるんだ。」


 その証拠に最後の瞬間に身体が追いつかず受けざるおえなくなってしまった。


「そうか、少し練習してみる良かったらまた手合わせをしてくれ」


 それだけ言うと他に何も言わずに風呂から上がっていった。

 あんまり考えてることが分からない人だな。

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