戦う為の
曜日感覚が無くなって随分時間がかかりました。
次話は月曜日までには出します
俺が完全勝利をした後に今度は戦帝を起こす。
流石に叩き起こさないと時間が無いからな。
結果今回は魔法耐性のあるクレイが最初に起きて盾で受けようとしたランクスが最後だった。
それから質問を募ることにするとランクスが手を挙げた。
「じゃあまずは俺から言わせてもらいます、クレイのフレイムウェーブは俺は受け切れた筈なのだが何故だ?」
「えっと、受けきれなかった理由だよな」
ランクスだけでなくクレイもうなづく、自分の魔法制御への自信からだろう。
「俺のスキルは魔法を反射するわけじゃ無い、一度壊して再形成してるんだ。だから再形成するまでに手を加えて範囲を絞って威力をあげたり、方向を変えたりしてるんだ」
それを聴くと戦帝は口元をひくつかせたり呆れたりした。
「まあ勇者の一員にゃんでしょ?そっかぁ随分と遠いんだニャァ」
気の抜けたような、諦めたような、火の灯らない目で呟いた。
「言っとくが俺はスキルだけなら中の中が良いところだ」
4人がこちらに目を向けているのを感じる。
「せいぜい魔法に対抗出来るだけ、使われなけりゃただレベルが上がりやすいだけの一般人だ」
「慰めならいらないぞ、なら俺達から逃げ切った体術はどうなるんだ」
シアンすらも仕方ないとそう言ってるように感じた。
「死ぬ気で学んだよ、地の底に幽閉されて出来なきゃ死ぬ状況になった。敵の攻撃に掠っただけで死にかけた時は笑ったよ」
俺は特別じゃない、強くもない、弱い自分を知ってる……けど
「それでも出来なくて良いなんて思ったことは一度もない。天才《楓》に追いつけなくて良いなんて思った事がない」
静まり返る中で息を飲む音が聞こえた。
「自分を信じてるのかって言われたら否定する、だがな自分を疑ったかってのはそれ以上に有り得ない。」
きっとそれが俺の傲慢の一つだ。
それでも俺は俺が欲しいものを全部拾って生きていく。
「お前達にも叶えたい事があるだろう、教えてやるよ望みを叶える為の力を」
言い切った頃には戦帝はいつもの野心と夢に満ちた顔に戻っていた。
「すまん、俺から教えを望んでおいてこんなことになって」
「俺も強くなるためについていきます」
「そうだにゃ、勇者くらいに勝てるようににゃらにゃいとだめだよにゃ」
「私も魔法使いとして楓さんに勝てないんじゃないかって、でも私も……」
これから訓練をしようとする戦帝を俺と楓は止めてまた明日からにしようと話をつけた。
なんかカッとなってすげぇ恥ずかしい事を言った気がする……まぁ良いや。
結局また楓と同じテントに押し込められてしまった。
「それのしても涼太は私のこと天才って思ってたんだぁ、へぇ〜」
ニヤニヤと詰め寄ってきながら傷口に塩を塗り込んでくる。
「えっと、あれだ言葉の綾ってやつだよ多分」
使い方を間違ってる気がする。
「言葉の綾ねぇ、何をどう言う言い回しにしたのかなぁ」
……これだから頭のいいやつは
「知らん、もう寝るわ」
楓に口で勝てないのはもう重々承知だからさっさと白旗を上げる。
さて明日から何を教えるかな。
そんな事を考えながら毛布にくるまっていると次第に意識が薄くなっていった。
天才か、ふふふっ涼太って私のことをそんなに評価してたんだ。
普段なら絶対言わないもんなぁ、しばらくはこれで弄ろっと。
涼太が寝た後にまだ寝れてなかった私は高まった気持ちを鎮めるために夜風を浴びに外へ出た。
「あれ、クレイ?今日が当番だっけ?」
「そうですよ、楓は?」
旅中は夜に警戒する必要がある、最近では信頼も得られて私や涼太も一人ですることになった。
前半後半で分けているが私はそのどちらでもなくただ夜風を浴びに来たと伝えクレイの隣に腰を下ろす。
「明日から頑張れそう?」
就寝前の話し合いで戦帝の中で1人だけ少し歯切れが悪かったクレイを私は心のどこかで気にしてたのかも。
「そうね、私も頑張りたいんだけど」
少し話し辛そうにしながらもポツポツと話し出してくれた。
「ハイエルフはね王家の特殊な血を受け継いだ貴族みたいな物なの、それぞれに森の管理を任される。」
懐かしむように星空を見上げながら言葉を漏らす。
「私の両親の管理場にある日魔族がやってきたの、一晩のうちに森は焼き払われた。私はその時は子供で戦えなくて1人逃された、家族を置いて、領民を置いて、同世代の子供たちを置いて、貴族の権限と力を使って無理矢理逃された。」
多分それは彼女にとって呪いのような物なんだろう、後悔と悲痛が顔に浮かんでいる。
「もう150年も前のことよ、私の領地を襲った魔族も過去の勇者に討伐された。でもね家族も何もかもを失った私は生きる気力もなくて、死ぬなんて無責任なことも出来なくて、だから復讐に生きることにしたの……でも自分の目標を持って私達エルフに比べて短い生の中で生きるシアンたちを見てたら何が正しいか分からなくなっちゃった。」
乾いた笑い声が夜に沈んでいく気がした。
多分シアン達の覚悟と自分のそれを比べ肩を並べて戦うことに疑問を持ったんだろうな。
「これからどうするかなんて私だって分からないよ」
こちらを覗き込んでくる。
「こっちの人達は分からないけど私達人間ってさ、色々考えてるようでそこまで深くは考えてないものだよ」
人間が技術を進歩させるその根本はいつだって欲だよ、何かが欲しくて、成し遂げたくて、なりたくて、だから頑張れる。
「クレイが今やりたい事をやってみれば良いんじゃない?貴方の両親も自分の復讐の為に貴方を生かした訳じゃない筈だよ。」
「やりたいこと…」
「したいことでも欲しいものでもなんでも良いの。もしそれが無いなら、無くしたくないものは?」
「私は、今の仲間達を守りたい。もう二度と誰も失いたくない」
「なら強くならないと、シアンもランクスもコロネもみんな自分の望みを叶える強さを手に入れる。それを守れるくらい強くならないとね」
それからしばらく2人で夜番の交代が来るまで星空を眺めていた。
「クレイそろそろ交代だ、あれ?楓もいたんですか」
ランクスと夜番を交代してそれぞれのテントへと戻ろうとすると。
「楓ありがと、まさか自分より若い娘に元気付けられるとは思わなかったよ。」
「そういえばエルフって長寿だったね、何歳なの?」
「ひ・み・つ」
このノリとかもシアン達に染まってるって事なのかな、元気ならいっか。
と思いつつも気になってテントに戻ってもなかなか眠れなかった。




