感謝と旅立ち
「なんで俺はこんなところにいるんだよ」
ため息をつきながら周囲を見渡す。
シャンデリアにカーペット、壁にある絵画に置物まで高そうなもので埋まっている。
王城程ではないとはいえ素人目に見ても普通の家庭では手の届きそうにないものばかりだ。
俺は、正確に言えば俺、楓、戦帝の計6人は朝起きてしばらくすると例の派手甲冑の衛兵さんに呼ばれて王城へ連れてこられた。
「あの時私が吸血鬼の情報を流したのもこうなると踏んだからだ」と軽快に笑っていた派手甲冑さんは城門で別れ今は領主の秘書みたいな立場の女性に案内されている。
「この部屋に領主様がおられます、お入りください。」
秘書がノックの後に扉を開けると応接室には机が一つ、そしてそれを挟むようにソファが二つあり、部屋に入った俺たちから見てちょうど対面側に1人の男が座っていた。
整えられた金髪、鍛えられたからだ、引き締まった顔、年齢は恐らく50はいっているだろうがそれを感じさせない、人の上に立つ者、領主としての風格がある。
「ようこそ町の英雄達よ、ネオン下がっていいぞ。」
仰々しい態度で迎え秘書を下がらせるとソファへ座るよう促される。
するとすぐにメイドが飲み物を持ってきて俺たちと領主の分を注ぐ。
目の前で注ぐのは毒なんかが無いことを見せようとしてるのだろうか。
一礼をしてメイドが帰るとやっと領主が口を開く。
「まずは帝国領『ウェスト』の領主ウェスト・スカリアとしてこの街を救ってくれたことを感謝する、この通りだ」
メイカー帝国の西の街ウェストすげぇ適当な名前だがどうやら国の初代皇帝が日本人らしい。
そしてその帝国の東西南北を囲う大都市の領主が頭を下げて礼を言ってくる。
「いえ、頭を上げてください当然のことをしたまでですから!」
楓が慌てた様子でそれを止める。
「確かに立場上あまり良いことではないだろう、だがこの礼は英雄達への最低限の礼節であるた民達も理解してくれるだろう」
その言葉に楓は「なら」と礼を受け取る。それに俺も同意見であると答え話は別題へ。
「今回の件に関しては昨日のうちに戦帝のシアンから話を聴いている、大将の首を取ったのは黒髪の2人で良いのだな」
シアンから?昨日のうちにってそんなこと説明する時間は……そういえば俺達が寝る時に冒険者に解散を伝えてたな、その時か。
否定の声が上がらないことを肯定と捉えて話が進む。
「今回の報酬だが魔王の国である魔国と隣接する帝国にとって大罪の一角を倒したということに対する報酬は一領主が決めて良いことではない、皇帝へと手紙をしたためる報酬はそちらで受け取ってはくれぬか。」
特に異論もなくもともと帝国首都へ向かう予定だったので話はそこで終わり次は交渉へと移る。
とはいえ俺にはわからないので楓が請け負った。
どうやら魔族の遺体の取引で状態がとても綺麗だったらしく研究資料として買い取りたいってことみたいだ。
そういや細かい攻撃とか全部血で弾かれてあんまり攻撃が当たってなかった気がする、今思い出しても割と危なかったな。
最終的に2億ライドで楓は売り付けていた。
1ライド1円換算なので実に2億円だ。
世界に7つ現状一つしかない遺体ということで値段を釣り上げていた。
遺体の売買に思う所はあるが旅をするなら資金は必須、まあ仕方ないか。
金は冒険者ギルドに預ける形で俺と楓に1億ずつ与えられステータスプレートを見せると引き出せるらしい。
そのついでに冒険者のCランクとして登録もされるとか、実力は申し分ないが流石にまだ信用がないってことでCからとのこと。
「では仕事の話は終わりでいいかな?」
楓が同意すると領主のウェスト・スカリアさんは金の髪を撫であげ力を抜く。
「いやぁ、ありがたい正直こういう態度には慣れてたくてね、立場上誰も見ていなくても一応しっかりしとかないといけないからな。」
疲れた疲れた、と先ほどまでの風格がどこえやらいい歳の元気そうなおっさんがそこへいた。
それに釣られるようにシアン達も破顔させ配られた紅茶の残りをグイッと飲み干す。
「ほんとスカリアのおっさんの仕事モードにはいつまで経っても慣れねぇよ」
未だついていけてない俺達にクレイさんが解説をいれる。
「ここの領主のウェスト・スカリアはいつもはこんな感じでね、シアン達と朝まで呑んだくれてるようなやつなのよ、仕事以外ではロクでもないから適当な態度でいいわよ」
呆れた様子で説明する様子から全て事実であることが察せられる。
せっかくなのでと昼飯もご馳走になりこの街を出発する時間になる。
「涼太さん達に戦帝の皆さんこの街を守ってくれたことを感謝します、ではいきましょうか」
商人のおっさん、クダルマ・キンニさんに改めて礼を言われてから出発する。




