↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/75

閉幕

 自信の出せる最高速度で私は走る。

 クレイさんと分かれた直後、涼太が戦っているであろうところまで《空間探知》を使うと敵の攻撃に串刺しにされる涼太が脳内に浮かんだ。

 限界を超えた肉体強化と背後で爆破させ無理やり加速を生む《ウィンドボム》で壊れる身体を回復魔法で強制的に動かす。

 別に涼太が死ぬなんて思ってない、ただ無理をするんじゃないか、その点だけが心配。


「戦ってるのはここら辺のはずなんだけど」


 血の糸で切られのだろう建物がごった返す戦地、空間探知を使うまでもなく戦場が分かった。

 大気が震え魔力の渦が巻き起こる。

 余りに異常な感覚、その揺れの震源に涼太がいた。

 複数の属性の魔力が、私の魔法が渦巻き、集まり、人間という余りに小さな器に圧縮されていく。

 人間の魔力の総量なんてちっぽけなもの、私のスキルはその器を大気に繋げ世界に元から存在し充満する魔力を利用する。

 なら巨大な魔力が小さな器に入れようとしたら溢れる、そもそも入らないのだ。

 それを涼太は己のスキルで混ぜっ返し圧縮して押し込んでる。

 少しでも押さえつける力が弱くなると魔力が暴発し身体が内側から破裂するだろう。

 そんなもの狂気の沙汰でしかない。

 私の心は悲鳴を上げる、それでも止まらない、この距離ではもう止める手立てすら無い。

 ただ、不思議なことに私は安堵を感じた。

  何故か勝てると感じた、それは魔力を押さえつけられると判断したからなのか。

 それとも希望の、英雄の片鱗を見たからか。

 大気の揺れがピタリと止み静寂が

訪れた直後、轟音が鳴る。

 七色の光が消え、生まれ、鮮血の攻撃と共に散る。

 それに気付いた時、すでに戦いは終わっていた。

 再び産まれた静寂の空間、そこに残されたのは魔力を使い切ったボロボロの涼太と己の肉体から鮮血を沸かせる魔族だけだった。

 視界が滲み何かが漏れ出して来そうになる。


「ほんとにもう、心配かけて」


 涼太の体勢がグラッと崩れ、落ちはじめる。

 それに気づきこれで最後だと痛む身体に鞭を入れ走り出す。

 瓦礫の山々を飛び越え落ちてくる涼太を見据える。

 意識はあるようだしステータス的には死なないだろうけど風魔法を使いふわりと受け止める。


「楓か、サンキュー助かったわ」


 横たわりながらも飄々と答えてくるのを見たら心配していた分ちょっと腹が立って来た。


「えっ、ちょっと、楓さん?この触手みたいなのってなんですか……ちょっと近づかないで、男の触手プレイって需要が……あっああぁぁぁ」


 水属性応用編、じっくり体感してもらいましょう。

 回復魔法との複合魔法だからそれもついでに体で学んでもらいましょうね。


 その後俺は宿に着くまでの間無数の触手に弄ばれながら体を治された。

 あっ、くすぐりでしたよ、笑い転げてただけで何もなかった……本当に。

 宿に着くと冒険者達の治療をしていたクレイさんが駆け寄って来て楓に話しかける。


「楓さんおかえりなさい、えっと涼太さんは」


「無事だったよ、怪我も治せる範囲だった。でも血は戻らないから安静にさせてる」


 さっきまで笑わせ続けさせたやつがよく言うよ。

 それにしても随分と仲良くなってんな、というより楓が尊敬されてる感じがする。


「私にも見せてもらって良いですか?」


 クレイさんの提案に別に断る理由もなく話が進んだ。


「これくらいなら……水の精よこの者に癒しと回帰を《ヒール》」


 ヒールでは血は戻らないんじゃ


「ん?調子が戻った気がするぞ」


 さっきまであった頭痛や気怠さがかなり薄くなった気がする。

 楓は何か理解してるようだが俺が首を傾げているとクレイさんの説明が入る。


「精霊魔法のヒールは精霊との契約や詠唱短縮、破棄が基本的には出来ない代わりに血なら戻るんですよ」


 そうなのか、そういえば俺も楓も精霊には余り関係がないからな。


「基本的に短縮、破棄が出来ないってのは?」


「精霊魔法の詠唱は魔力譲渡の契約書みたいなものなので魔力だけ渡されることを嫌うものが多いんです。」


 仲良くなったり力づくで協力を得れば話は別ですが、と続けた。

 魔法の上位互換って訳でも無いが便利な点もあると。


「じゃあ精霊との契約ってのはどうやってするんだ?」


 正直言って俺は無理だろうが楓が使えるようになるなら使えるようにしておきたい。


「まず精霊のことについて説明しましょう、精霊は下位、中位、上位に分けられます。まず下位ですが彼らは自然そのもの自然に宿るもの達です。そして上位の方達は天の使いです、最後に上位の方達の使いが中位となっています。」


 精霊……魔王がそれだとディルムは言っていたな、ってことは上位精霊ってことになるのか?

 流石に中位ってことはないだろうが。


「それを踏まえて話をして行きますが私が結んだ契約は上位精霊様と、契約内容はどの下位精霊にも力を貸していただけるというものです。」


「じゃあ代償に何を持っていかれるんだ、ただって訳でもないだろう?」


「魔族の殱滅です、精霊が魔族を敵視しているのはご存知でしょう?私も個人的な因縁がありまして、利害の一致で契約させて貰いました。」


 個人的な因縁、まあそこら辺は触れない方が良いだろう、対して興味もないしな。

 そういえば精霊が魔族を敵視しているのは知っているが何故自分達で滅ぼさないんだ?

 下位も含めると数も相当なはずだが何か理由が?


「ではこちらからも質問を良いですか?」


 真剣な眼差しを向けられ思考を断ち切る。

 いや視線を向けられたのは正確には楓か。


「楓さんの正体のことです」


「あっ」


 楓ぇ『あっ』ってなんだよ『あっ』って。


「勇者様……ですよね」


 バレたか。

 だが大罪が1人で来る訳が無いか。

 大罪の部下を1人で、血糸の殱滅をした上で倒したならバレるだろうな。


「いえ、別に言いふらそうとかそういうのでは無いんです……ただ、私はおそらくシアン達も今回の戦いで己の実力不足を実感したと思うんです。ですからもしよければ稽古をつけていただきたいんです。」


「そうか、それは良い。どうせまだ護衛依頼は続くんだその間だけでも面倒みてやれよ、まあ頑張れ俺は疲れたから寝るわ」


 そそくさと武器、防具を持ち部屋へと戻

グエッ

れませんよねぇ

 襟を掴まれ引き止められる。


「涼太も勇者の1人なんですよぉ。近接戦闘のシアンさん達3人は涼太に任るよ。やってくれるよね、あんなに賛成してたんだから。」


「楓ちょっとまて彼女達は俺の実力を対して知らないだろう、なら楓のほうが安心だ。それに本人の許可もなくそういうことは決めない方が良い」


 色々と俺が楓に正当なまったくもって正しい事を言っていると


「俺は涼太に頼むわ。」


 2階から降りて来たシアンが言う。


「シアン起きたの?体は大丈夫そう?」


 クレイさんが心配そうに声をかける。

 あんな反応を楓もしてくれないものだろうか。


「あぁ、大丈夫だ。涼太の件だが最初にやりあった時から実力が確かなのは分かったてたしな、何より俺達が負けた奴の主を倒したって言うじゃねぇか断る理由が無い。」


 あと2人も同じ意見だと思うぜ、と言って俺の前にくる。


「頼む、俺達に稽古をつけてくれないか」


「俺に頭を下げられたところで教えられることも少ないと思うぞ」


「あぁ分かってる、それでも」


「《先読み》と《体術》この2つの技術級スキル、教えられるのはその2つくらいだ、あとは努力次第それで良いなら」


 そう言うと俺の手を掴んでくる、


「ありがとう、何かしらの形で礼はさせてもらう。」


 その会話を温かい目で見守ってた楓が口を開ける。


「じゃあそろそろ寝ましょうか、この夜が明けたら昼には移動を始めるんですからしっかり疲れを取らないと」


「それもそうだな、じゃあ俺は外で待機して貰ってる協力者の冒険者に礼を言ってくる、これでも作戦の立ち上げ人だからな。」


 シアンが宿の外に出るのをみてクレイさんが付き添い俺と楓は先に寝るようにと言われた。






「ふぅ、終わったな」


「うん、ねぇ魔王軍の大罪って強かった?」


 宿で互いのベッドに座り込んで今日の情報をすり合わせておく。


「あぁ、あいつらは俺達と同じように強力なスキルを与えられてる、それにもともと人間より強力な種族だ裏ダンジョン(あそこ)に行ってなけりゃステータス差でゴリ押されてる。」


「そこまで……そのスキルが今や魔王に戻ってるんだよね、やっぱり大罪は倒さず魔王だけの方が良いんじゃない?」


「魔王を狙ってる間に大罪も相手にするのはきつい、少なくとも敵意があるやつは倒す、魔王討伐後にまた集結されたら何も変わらない」


「そう、だね。私の方は正直言ってそこまでって感じだった。確かにこの世界の基準だと強いんだけど動きは単調で短気、裏ダンジョンのボスと比べたら実力がなさ過ぎる。」


「そうか、なら戦帝の稽古は最低でも次はそいつには勝てるようにしとかないとな。」


「うん、それで良いと思う。私の方はグロニアさんの魔法体系を叩き込めば良いかな。」


「そうだな、そのあと出来れば近接戦闘で最低限死なない方法を教えておいてくれ。」


「それはそっちの専門じゃない、わかった魔法を使った距離の取り方くらいは教えておく。」


「じゃあ、おやすみ」


「うん、おやすみ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。